この記事では、youtube上にアップロードされた動画内で、個人名の名指しで誹謗中傷を受けた場合に「名誉毀損」として対処する方法をお伝えしていきます。
動画投稿者は企画の面白さを競って非常識なことに手を染めるケースが少なくなりません。
そういった環境であるため、誹謗中傷を受ける可能性も十分に考えられます。
そこで今回はyoutube上にアップロードされた動画で誹謗中傷された場合に、 「名誉毀損」として動画を削除する方法をお伝えしていきます。
また、動画を削除するだけでは気が済まないという方に向けて、動画投稿者を特定する方法までご紹介します。
動画の削除依頼方法をわかりやすく解説していくので、読み進めながら削除依頼を提出しましょう。
誹謗中傷動画を「名誉毀損」として削除依頼を出す
単なる誹謗中傷だと、削除を依頼する理由としては弱いです。
しかし、「動画内で名誉毀損が起きた」とすれば、深刻な問題が発生している状況を伝えることができます。
YouTubeの誹謗中傷動画を削除する際の流れは以下の通りです。
- ステップ1:動画内の誹謗中傷内容の確認
- ステップ2:YouTubeの利用規約を確認
- ステップ3:利用規約と内容を照らし合わせながら、名誉毀損に該当しないか確認
- ステップ4:名誉毀損に該当する場合、動画の削除依頼を提出
これから紹介する内容は以上4つのステップが基本となります。
ここを意識しておくことで、軸をぶらさずに削除依頼を提出することが可能です。
また、企業に対する名誉毀損と思しき内容がある場合は、その対処方法を別記事で紹介します。
「名誉毀損」とみなせるYouTube動画
どんな内容であっても「名誉毀損」とみなせるわけではありません。
名誉毀損とみなすためには、条件を満たす必要があるのです。
例えば、YouTubeヘルプには以下のような条件があります。
名誉毀損に関する法律は国によって異なりますが、他の人物や会社の評判を傷つけるようなコンテンツは通常これに該当します。名誉毀損の定義は世界中で異なりますが、一般的には誰かの評判を傷つけるような、事実とは異なる言動や、誰かが孤立したり、避けられたりするよう仕向けることが名誉毀損とされます。
引用元:YouTubeヘルプ「名誉毀損」
YouTubeヘルプの名誉毀損の定義を整理してみましょう。
- 他人の評判を傷つけるようなコンテンツ
- 事実と異なる言動
- 孤立
- 孤立するように仕向ける行為
以上のようなものを名誉毀損としています。
また、YouTubeは以下のようにも述べています。
YouTube では名誉毀損を理由とするブロックの手続きをする際に、その地域の法律的な側面も考慮します。場合によっては、裁判所命令を要求することもあります。
名誉毀損を理由とするブロックのリクエストの手続きを進めるには、申し立てに具体性と確固とした根拠が必要です。
たとえば、その言動がなぜ事実ではないと考えるのか、その言動によってどのように自分の評判が傷つくのかを説明する必要があります。
引用元:YouTubeヘルプ「名誉毀損」
動画を名誉毀損として申し立てる際は 根拠が必要と定めています。
その根拠として裁判所命令や法律の知識、ロジックが必要になるわけです。
つまり、動画を「名誉毀損だ」として削除するためには、 法律を考慮しなければいけません。
名誉毀損の根拠となる「刑法230条」
YouTubeの規約では、「その地域の法律的な側面を考慮します」として現地の法律に従う姿勢を見せています。
日本の法律の場合であれば「名誉毀損」、刑法230条に該当する違反行為です。
つまり、 YouTube上の動画の内容が、この名誉毀損に該当するということを証明する必要があるということになります。
それでは実際にどのような法律なのか見ていきましょう。
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法「名誉毀損」
このままでは分かりづらいので、成立の条件を次の3つに分けてみました。
- 公然と:誰でもアクセスできる場所で= YouTubeの動画内で
- 事実を摘示(てきし)し:何らかの情報を示して= 何らかの発言、テキストなどで
- 人の名誉を毀損した者: 他人の社会的評価(名誉)を傷つけた者
このように、YouTubeの動画内でも名誉毀損は成立する可能性があります。
この名誉毀損が発生しているかどうか、動画の内容と照らし合わせましょう。
- 「〇〇は犯罪者だ」
- 「〇〇は嘘つきだ」
- 「〇〇は不倫している」
このように 何らかの情報を示して、人の名誉を傷つければ名誉毀損に該当します。
また、情報を示さなくても、名誉毀損と扱われる可能性があります。
それが罵倒でも成立する「侮辱」です。
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
引用元:刑法「侮辱」
このように、侮辱の場合は情報を伴う必要はありません。
例えば「馬鹿」「うざい」「ダサい」「死ね」といったものでも、特定の個人を辱めるものであれば、名誉毀損とみなされます。
つまり、 罵倒でも名誉毀損が成立するのです。
条件を照らし合わせた結果「誹謗中傷が名誉毀損の条件をすべて満たしている」というのであれば、「違反動画は発見次第、削除依頼」にお進みください。
不安な場合は弁護士に相談してみましょう。
「個人情報流出・肖像権侵害」とみなせる動画
誹謗中傷と同時に 「個人情報流出・肖像権侵害」が発生している恐れもあります。
例えば、次のような状況です。
- 動画内に私生活を勝手に盗撮したカットが存在する→プライバシー侵害の可能性
- 動画内で自分の顔写真を勝手に利用された→肖像権侵害の可能姓
このような問題が発覚した場合、YouTubeに削除を依頼することで削除できる可能性があります
以下の記事で紹介する3つの方法で削除を依頼しましょう。
「脅迫」とみなせるYouTube動画
YouTube動画の誹謗中傷では、「脅迫」のように相手に危害を及ぼすことを予告するものも存在します。
例えば、次のような発言です。
- 「〇〇を殺すぞ」
- 「〇〇の金を盗むぞ」
- 「〇〇の家を燃やすぞ」
このような発言は「脅迫」とみなされます。
YouTubeのコミュニティガイドライン(利用規約)では、このような脅迫を違反行為として定めています。
YouTube 内外で個人に対して嫌がらせや脅迫をするように扇動するコンテンツ
(中略)
身体的危害または所有物の破壊によって特定の個人を脅すコンテンツ
未成年者に対する虐待的または脅迫的行為を含むコンテンツ
このような脅迫の事実が発覚した場合、「違反動画は発見次第、削除依頼」に進んで削除を依頼しましょう。
「差別」とみなせるYouTube動画
YouTube動画の誹謗中傷の中には、差別的な内容を含む場合もあります。
このような行為も当然認められていません。
悪意のある表現は、YouTube では許可されていません。次のいずれかの特性に基づいて個人や集団に対する暴力や差別を助長するコンテンツは削除されます。
- 年齢
- カースト
- 障がい
- 民族
- 性同一性
- 国籍
- 人種
- 在留資格
- 宗教
- 性別 / ジェンダー
- 性的指向
- 深刻な暴力的出来事の被害者とその親族
- 従軍経験
このポリシーに違反するコンテンツを見つけた場合はご報告ください。
引用元:YouTubeヘルプ「悪意のある表現に関するポリシー」
人種差別、年齢差別、性別差別などに関する内容もまずは違反報告をしましょう。
違反動画は発見次第、削除依頼する【簡単】
ここまで規約違反の種類について説明してきました。
YouTubeの規約に違反している動画は、通報(報告)することで削除可能です。
ここからは「名誉毀損」の削除方法を中心に紹介していきます。
名誉毀損は次の2つの方法で削除を依頼(報告)することが可能です。
- 方法1:動画ページから「報告」
- 方法2:「名誉毀損の申し立て」フォームを利用
- 方法3:弁護士にYouTube動画削除を依頼
詳しくはYouTubeの「問題の報告と処置」についてもご覧ください。
2つの方法の具体的な流れについて、解説していきます。
方法1:動画ページから「報告」
問題の動画のページを開き、「保存」の横にある設定アイコンをクリック・タップしましょう。
フラグマークの横に「報告」と表示されるのでこれをクリック・タップします。
すると、「動画を報告」として報告理由の一覧が表示されます。
この中から名誉毀損と近しいものを選びます。
最も近い選択肢が「差別的または攻撃的な内容」となりますので、こちらを選択しましょう。
選択するとプルダウンでさらに4つほど選択肢が表示されます。
名誉毀損であれば「いじめ」あるいは「弱者に対する攻撃」を選択して「次へ」をタップしましょう。
選択すると「上で選択した項目は、動画の説明内のリンクに該当している」というチェックボックスが表示されますが、関係はないのでチェックは入れなくても良いです。
「選択したタイムスタンプ」には名誉毀損と思しき内容が触れられたタイミング(再生時間)を記入します。
「詳細を入力」の入力ボックスには、この動画を報告する理由「削除依頼文」を記入しましょう。
以下のような依頼文を記入できると良いです。
お世話になります。〇〇と申します。
今回ご連絡した理由は、この動画にて私への名誉毀損ととれる部分が確認できるためです。
実際に動画内では「〇〇」と個人(私)を特定し、「〇〇(問題の発言を書き出し)」という内容で名誉を毀損しています。
YouTube動画上でこのような内容を公開した時点で、日本の刑法230条「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」に該当する違反行為となります。
この動画によって精神的な苦痛を感じておりますので、動画削除のご検討の程何卒よろしくお願い申し上げます。
ポイントは以下の3つです。
- 個人が特定できる理由、名誉毀損にあたる内容の書き写し
- 日本のどのような法律に抵触しているか提示
- 実際にどのような被害を受けているか提示
これらは削除依頼文を執筆する上の基本です。
上記の削除依頼文を確認して、もれなく記載しましょう。
スクリーンショット出典:YouTube
方法2:「名誉毀損の申し立て」フォームを利用
名誉毀損の事実をより詳細に伝えたい場合は、「名誉毀損の申し立て」フォームを利用しましょう。
まずは「名誉毀損の申し立て」に移動します。
「不正使用した場合、YouTube のアカウントが削除される可能性があります」とありますが、名誉毀損を受けているという正当な理由があるため、不正使用ではありません。
「異議申し立てを行う国」を「日本」に設定したら、以下の表に沿って内容を記入していきましょう。
記入項目 | 記入内容について |
ご自身の氏名 | みなさんご自身の実名 (チャンネル名、ニックネーム、偽名などは認められない) |
依頼人 | 「ご自身」を選択 |
動画の URL | 動画のURLをコピペ |
どのような情報から 誹謗中傷の対象を特定しましたか |
誹謗中傷(名誉毀損)の対象が「自分だ」 |
動画またはメタデータ内の名誉毀損に該当する 文言を正確に入力してください |
名誉毀損に該当する発言を書き起こして記入 |
場所を選択してください | 「動画内」を選択 |
この文言がお住まいの国で 名誉棄損に該当する理由をご記入ください |
ここには法的な根拠を記入
というフレーズを混ぜて、名誉毀損とみなせる理由を説明 |
次の声明に同意します&デジタル署名 | 内容を確認後、同意 |
記入が完了したら、「送信」しましょう。
いくら正確に記入しても、不正使用とみなされればアカウントを削除されてしまうリスクがあります。
不安な場合は方法3で弁護士に相談・依頼する方法を試してください。
方法3:弁護士にYouTube動画削除を依頼
弁護士に削除するためには、当然ですが弁護士を探す必要があります。
一定期間「パートナー」となる存在ですので、相性の良い弁護士を選びましょう。
弁護士に以下の流れでYouTube動画の削除を依頼します。
- ステップ1:弁護士を探し、選ぶ
- ステップ2:弁護士にYouTubeの誹謗中傷動画の削除について相談
- ステップ3:(削除できる動画ならば)弁護士に動画の削除を依頼
- ステップ4:弁護士がYouTubeに対して任意で動画削除を交渉
- ステップ5:(ステップ4が失敗したら)裁判所で手続きを行い、名誉毀損として動画の削除を命令
ここまでで半年~1年程度、費用にして10~30万円程度がかかります。
他の削除方法よりも確実な方法ではありますが、費用がかかる方法ですので、慎重に検討する必要があります。
次章「投稿者を特定すれば損害賠償の請求も可能」で詳しく説明します。
投稿者を特定すれば損害賠償の請求も可能
犯人の特定は、YouTubeの動画削除と同時並行で弁護士に依頼することができます。
方法3で削除を弁護士に依頼している場合は、「動画投稿者に慰謝料を請求したい」と相談しましょう。
特定~慰謝料請求までの流れは以下の通りとなります。
- ステップ1:YouTubeに対して交渉・訴訟して、IPアドレスなどの情報を開示させる
- ステップ2:開示されたIPアドレスなどの情報を元に動画投稿者のプロバイダを特定する
- ステップ3:プロバイダに交渉・訴訟して、投稿者に関する記録を保存させる
- ステップ4:プロバイダに交渉・訴訟して、犯人の名前、住所、メールアドレスを開示させる
- ステップ5:開示された犯人の個人情報を元に弁護士と協力して損害賠償の請求書を作成し、犯人に請求
犯人を特定して慰謝料を請求するだけではなく、その情報を元に犯人を通報・逮捕させることも可能です。
まとめ
ここまでYouTubeの誹謗中傷的な内容を「名誉毀損」として報告するノウハウを紹介してきました。
様々な方法を紹介しましたが、基本的な流れは変わりません。
- ステップ1:誹謗中傷内容の確認
- ステップ2:利用規約を確認
- ステップ3:利用規約と照らし合わせながら、名誉毀損に該当しないか確認
- ステップ4:動画の削除依頼を提出
これを自力でこなすか、弁護士に依頼するかの違いです。
不安な場合は弁護士に依頼するのがベストですが、自力で削除を依頼する場合は法的な知識を身につけておくとより円滑に削除を依頼することができます。
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