「誹謗中傷投稿を削除したいけど、お金がかかりそうで泣き寝入りしそう」
「誹謗中傷投稿の犯人を特定した場合、どのくらいの慰謝料が請求できるのか」
慰謝料には投稿の 削除にかかった費用や犯人の特定にかかった費用なども請求することもできるため、費用の負担を減らせますよ。
2ちゃんねるや爆サイの誹謗中傷投稿を削除して犯人を特定する際は、弁護士に依頼したいところですが、弁護士費用の高さが気になるかもしれませんね。
しかし、仮に弁護士費用が高額になったとしても、投稿削除、犯人特定など慰謝料の請求までにかかった費用をすべて犯人の負担にできます。ゆえに、 個人の負担を減らすことができるのです。
そこでこの記事では、慰謝料の請求について、次の2点を紹介していきます。
- 慰謝料の相場
- 慰謝料の請求までにかかる費用
以上2点を押さえて、犯人に慰謝料を請求しましょう。
名誉毀損が認められる際に請求できる慰謝料の相場
まずはネット上での誹謗中傷のうち、名誉毀損の相場について、次の2点を紹介しながら説明します。
- 名誉毀損の慰謝料相場
- 名誉毀損の詳細
それでは解説していきます。
名誉毀損の慰謝料相場
名誉毀損の場合の慰謝料相場は次の表の通りです。
名誉毀損のケース | 慰謝料相場 |
一般人に対する名誉毀損 | 100,000円~500,000円 |
事業者、芸能人に対する名誉毀損 | 500,000円~2,000,000円 |
このように一般人よりも、事業者や芸能人に対する名誉毀損は慰謝料請求額が高くなっています。
また、テレビや雑誌などのメディアが名誉棄損にあたる行為を行った場合、そのメディアに対して請求する慰謝料相場は高額になる傾向が強いです。
名誉毀損の慰謝料請求例
2017年には大阪府内に住む内科医の男性が、自身を名指しして「車についてはド素人」「自分のことしか興味がない」「将来は孤独死」などと、名誉毀損を行ったとして元交際相手の女性に約320万円の損害賠償を請求した例があります。
裁判の結果、裁判所は女性に対して約100万円の支払いを命じています。
名誉毀損の詳細

名誉棄損は以下の刑法230条で定められている犯罪行為となっています。
第230条
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にか かわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした 場合でなければ、罰しない。
引用:刑法第230条

ネット上の名誉棄損は以下の3つの条件を満たしている行為です。
- 社会的な評価(名誉)を下げる投稿内容
- 嘘or真実を含む内容
- 誰でもアクセスして閲覧できる状態
単に「名誉毀損」といっても以上3つのようにわけることができます。
条件を1項目理解していきましょう。
名誉毀損の条件1:社会的な評価(名誉)を下げる投稿内容
社会的な評価はさまざまな社会集団で築かれた自分への評価のことです。
例えば、世間には次のような社会的評価がありますよね。
- スポーツ界でのスポーツ選手として評価
- 企業間での代表取締役社長としての評価
- 政界での政治家としての評価
- 漫画作家、クリエイターとしての評価
ネットでの名誉毀損はこのような社会的な評価をネット上での投稿によって傷つけることを指します。
例えば、掲示板での「Aは犯罪者だ」「Bは風俗店で働いていた」などの投稿内容がネット上の名誉棄損に該当します。
これらの投稿によって社会的な評価が低下した場合、その投稿は名誉棄損の条件を1つ満たすのです。
名誉毀損の条件2:嘘or真実を含む内容
名誉毀損は嘘or真実を含む内容でなければいけません。
この嘘or真実を含む内容は「出来事」や「経歴」として考えるとわかりやすいでしょう。
例えば、「Aは犯罪者だ」という投稿であれば、「犯罪者」という経歴が「嘘or真実を含む内容」です。
この「犯罪者」という経歴は嘘でも本当でもどちらでもよいです。


このように、嘘or真実を含む内容が公開されることで名誉を傷つけられた場合、名誉棄損の条件を1つ満たすことになります。
誰でもアクセスして閲覧できる状態
名誉毀損は不特定多数がアクセスして閲覧できる場所に「公開」されていなければいけません。
例えば、掲示板やレビューサイトでの投稿、動画投稿サイトやブログのコメントです。
メールや電話などで逆に1対1で相手を罵るような行為は名誉毀損に該当しません。
嘘or真実を含む内容がネット上に公開されることで、社会的な評価を傷つける場合にのみ、名誉毀損とみなされるのです。
侮辱が認められる際に請求できる慰謝料の相場
続いて誹謗中傷のうち、侮辱の相場について、次の2点を紹介しながら説明します。
- 侮辱の慰謝料相場
- 侮辱についての詳細
それでは解説していきます。
侮辱の慰謝料相場
侮辱の慰謝料相場は以下の通りです。
侮辱による慰謝料相場 |
100,000円~500,000円 |
名誉毀損と比べると安価となっています。
侮辱の慰謝料請求例
プロ野球横浜DeNAベイスターズの井納投手が匿名掲示板に「嫁がブス」という投稿した女性会社員に約200万円の慰謝料を請求した例があります。
この例は名誉感情が侵害されている可能性があるとして、話題を集めました。
名誉感情は本人のプライドや自尊心などの主観的な価値であり、侵害された場合は侮辱罪に問われると考えられています。
ゆえに、井納投手の例も侮辱罪に該当して慰謝料を請求した例と捉えることができるのです。
侮辱についての詳細

侮辱は刑法第231条で犯罪行為と定められています。
第231条
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
引用:刑法第231条
条文にもある通り、侮辱が成立する条件は以下の3つです。
- 侮辱行為
- 誰でもアクセスして閲覧できる状態(公然)
- 事実を示さなくてもいい
それぞれの項目について、説明していきます。
侮辱行為
問題の投稿が他人をはずかしめるような表現を含み、他人の名誉を傷つけるならば、侮辱行為です。
例えば、ネット上の投稿で特定の人物を指して、「馬鹿」「死ね」「ハゲ」といった度を越えた批判的な発言は侮辱行為に該当します。
ただし、なんでもかんでも侮辱行為に該当するわけではありません。ほかの2つの条件も見ていきましょう
誰でもアクセスして閲覧できる状態(公然)
不特定多数がアクセスできる匿名掲示板やSNS上に、特定の人物への侮辱が認められる投稿をした場合、刑法での侮辱が成立します。
公の場で他人の攻撃するような発言をする点は、名誉棄損の場合と同様です。
事実を示さなくてもいい
名誉毀損では「嘘or真実を含む内容」として出来事や経歴などを示す必要がありましたね。
しかし、侮辱の場合はそのような事実を示す必要はありません。
上記の侮辱行為をするだけですでに犯罪行為です。
このように事実を示さなくても侮辱を行った時点で犯罪行為に当たります。


プライバシーの侵害が認められる際に請求できる慰謝料の相場
ここからはプライバシーの侵害について説明していきます。
- プライバシーの侵害の慰謝料相場
- プライバシーの侵害の詳細
上記2点を押さえましょう。
プライバシーの侵害の慰謝料相場
プライバシーの侵害の慰謝料相場は以下の表の通りです。
ケース | 慰謝料相場 |
プライバシーの侵害を受けた一般人 | 50,000円~100,000円 |
プライバシーの侵害を受けた事業者、芸能人 | 500,000円~1,000,000円 |
一般人の慰謝料相場よりも社会的に影響力の大きい事業者や芸能人などの慰謝料相場の方が高くなる傾向があります。
プライバシーの侵害の慰謝料請求例
プライバシーの侵害の慰謝料請求例は、歌手・ASKAの乗ったタクシーの運営会社が社内映像をテレビ局に無断提供したとして、慰謝料の支払いを求めて、訴訟を起こした例です。
判決ではタクシー会社に220万円の支払いを命じています。
プライバシーの侵害の詳細

プライバシーの侵害についてより深く理解するために、次の2点を説明します。
- プライバシーの権利
- プライバシーの侵害が成立する条件
以上2点を押さえて、プライバシーの侵害について理解していきましょう。
プライバシ―の権利
実はプライバシーの権利は法律で明確に定められているわけではありません。
ただし、憲法で定められている人格権の1つに、プライバシ―の権利があると考えられています。
人格権とは、憲法第13条の「 幸福追求に対する国民の権利」で定められている人権で、個人の人格を守る権利です。
その憲法第13条の条文はこちらです。
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
引用:日本国憲法第13条
このように人格権は法律で定められています。
人格権の1つとされるプライバシーの権利は、自分の情報を他人に勝手に使用されないことで個人の幸福追求を保障する権利です。
このことは、プライバシーの権利が「 放っておいてもらう権利」と呼ばれ、誰にも邪魔されない権利であることからもわかります。
また、プライバシーの権利は「 自己情報管理支配権」とも呼ばれ、自分の情報は自分で管理する自由を保障する権利といえるのです。
このように、プライバシーの権利は憲法第13条(人格権)から導かれる人権であり、幸福追求のためには守られるべき権利とされています。
プライバシ-の侵害が成立する条件
プライバシーの侵害はプライバシー権が法的に侵害されたケースを指します。次の3条件はプライバシー侵害が成立するためのものです。
- 自分に関する個人情報(プライバシー情報)
- 公開されることで不快感や不安感を感じる情報
- 本人以外にはまだ知られていない未公開の情報
以上の3条件をすべて満たす必要があります。
プライバシーの侵害の3条件を満たす例は、ヌード写真や芸能人の自宅の住所・電話番号、などです。
ただ、電話帳やSNSで公開されており、誰でも閲覧できる情報はプライバシーの侵害の対象外となります。
プライバシーの侵害で慰謝料を請求する場合は、まず最初に上記の3条件をすべて満たすか確認しておきましょう。
慰謝料の請求にかかる費用
慰謝料の請求にかかる費用は費用の合計は100,000円~300,000円 です。その費用の内訳を見ていきましょう。
投稿削除や犯人特定の際にかかる費用として、以下のような費用があります。
- 法律相談料:弁護士に相談する際にかかる費用
- 着手金:弁護士が法的手続きを始めるにあたり支払う費用
- 成功報酬/報酬金:投稿が削除し、依頼が成功した際に支払う費用
- 裁判所費用:弁護士ではなく、裁判所に支払う費用、印紙代や切手代
- 日当:弁護士が出張する際の交通費、宿泊費など
それぞれの費用相場は、以下の表に整理します。
法律相談料 | 初回は無料の法律事務所が多い/2回目以降は30分で5,000円程度 | ||||||
着手金 | 投稿削除(交渉):50,000円 | 投稿削除(仮処分):100,000円 | 投稿者特定(交渉):50,000円 | 投稿者特定(訴訟):200,000円 | 損害賠償請求(交渉):100,000円 | 損害賠償請求(訴訟):200,000円 | |
成功報酬/報酬金 | 50,000円~200,000円 | ||||||
裁判所費用 | 10,000円~20,000円 | ||||||
日当 | 出張の有無によって異なる |
以上の表を参考にすると、慰謝料の請求にかかる費用の合計は100,000円~300,000円 です。


まとめ
もう一度誹謗中傷の慰謝料相場を以下の表で確認しておきましょう。
ケース | 慰謝料相場 | |
名誉毀損 | 一般人に対する名誉毀損 | 100,000円~500,000円 |
事業者、芸能人に対する名誉毀損 | 500,000円~2,000,000円 | |
侮辱 | 100,000円~500,000円 | |
プライバシーの侵害 | プライバシーの侵害を受けた一般人 | 50,000円~100,000円 |
プライバシーの侵害を受けた事業者、芸能人 | 500,000円~1,000,000円 |
慰謝料相場に対して、慰謝料の請求にかかる費用の合計は100,000円~300,000円となります。
事業者や芸能人の場合は、費用を全額を回収して、むしろプラスになりますが、一般人の場合は費用の一部しか回収できないことが多いです。
それでも慰謝料を請求すれば慰謝料の請求までにかかった費用の半額程度を回収できます。
誹謗中傷の犯人に慰謝料を請求して、精神的苦痛に対する対価を支払ってもらいましょう。
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