この記事ではSNSの誹謗中傷対処方法について説明していきます。
気軽に利用できるSNSですが、「愚痴」「悪口」などが他人の心を傷つけるケースが非常に多いです。
そのような投稿に対処するためには、法的な措置や利用規約に沿った通報が最適です。
まずは感情的にならずに冷静な対処を心がけてみてください。
今回はその対処方法や対処に必要となる基礎知識も紹介していますので、「通報なんてしたことない」という方でも読み進めることが可能です。
それでは早速対処方法から確認していきましょう。
SNS上で誹謗中傷された!まずはこの対処方法から
SNSは「バズる」「炎上」という単語があるように、非常に拡散性の高いツールです。
そのため、SNS上で誹謗中傷されたら、話題性を高めてしまう前に投稿を「削除」し、情報の拡散を食い止めるという方法がベストとなります。
そこで、以下の対処方法を試しましょう。
- 方法その1:自力でSNS上の誹謗中傷投稿に削除を依頼する
- 方法その2:弁護士に削除を依頼する
- 方法その3:警察に通報・相談する
上記3つの方法で誹謗中傷に対処していきます。
読み進めながら、実践していきましょう。
方法その1:自力でSNS上の誹謗中傷投稿に削除を依頼する
SNSにもよりますが、自力での対処方法は以下の3つの手段が用意できます。
- 手段その1:「通報」システムを利用する
- 手段その2:「お問い合わせフォーム」から運営に通報する
- 手段その3:投稿者に直接削除を依頼する
いずれの手段でも、 利用規約の読解が必要になります。
なぜなら、そもそも「通報」とは「利用規約違反」を通報するシステムであるためです。
どのような手段を講じればいいのか、それぞれ見ていきましょう。
手段その1:「通報」システムを利用する
自力で対処する方法として簡単なのが「通報(報告)」です。
大半のSNSでは、投稿を選び、簡単に通報できるシステムがあります。
「嫌がらせを受けている」「誹謗中傷だ」「名誉毀損の可能性がある」として、投稿を通報しましょう。
手段その2:「お問い合わせフォーム」から運営に通報する
SNSによっては悪質なアカウント・投稿を通報するためのお問い合わせフォームを設けている場合もあります。
そのような場合は以下のような「削除依頼文」を記入した後、運営に送付しましょう。
お世話になります。
〇〇 と申します。
この度は私への誹謗中傷が含まれる「〇〇(問題の投稿の全文とURL)」 という投稿の削除を依頼したく、ご連絡申し上げました。
特にこの「〇〇(個人を特定した誹謗中傷の表現・内容)」 という部分は私への明確な誹謗中傷行為です。
〇〇(SNSの名前)上 での誹謗中傷行為は利用規約の「〇〇(禁止事項)」 に該当します。
明らかな利用規約違反となっております。
また、「〇〇(個人を特定した誹謗中傷の表現・内容)」 という部分は、根も葉もない情報であり、このままこの記事の公開を続けるのであれば「名誉毀損」に該当する可能性が高いです(権利侵害・刑法違反の可能性について説明※次章「SNS上での誹謗中傷は犯罪なのか(訴えることが可能か)」参考のこと)。
実際に精神的な苦痛を被るなど、被害が出ています(説得力を持たせるために実際に被った被害の内容を記載)。
こちらについては弁護士と協力し、場合によっては訴訟、慰謝料請求など適切な法的措置を求める予定です。
早急に該当投稿の削除をよろしくお願い申し上げます。
赤字部分は状況によって変更してください。
なぜ通報したのか、どこに違反しているのか、どんな被害が発生しているのか、 読んだ相手が納得のいく説明を心がけましょう。
手段その3:投稿者に直接削除を依頼する
投稿者に直接連絡をとり、削除を依頼することも可能です。
SNSには、一対一で話すことができる「DM(ダイレクトメール)機能」があります。
このような機能を利用して、 直接的に投稿の削除を交渉します。
この手段は誹謗中傷してきた相手に直接削除を促すため、勇気が必要になるかもしれませんね。しかし、この手段で削除が成功すれば「運営に報告」「弁護士に相談」「警察に通報」など波風を立てずに済むのでおすすめです。
方法その2:弁護士に削除を依頼する
弁護士に削除を依頼する方法は、最も確実かつ迅速な削除が可能な対処方法です。
弁護士はクライアントの「削除」という行為を代行できる唯一の職業となります。
また、弁護士に依頼することで、法的な手続きはもちろんのこと、面倒な利用規約の読解も行ってくれます。
削除を依頼するためには、当然ですが、弁護士を探す必要がありますよね。
以下のようなステップで弁護士を探していきましょう。
- ステップ1:弁護士を探す
- ステップ2:SNSトラブル解決に最適な弁護士を選ぶ
- ステップ3:法律相談する
- ステップ4:弁護士に投稿の削除を依頼する
- ステップ5:弁護士がSNSの運営会社や投稿者に対して交渉・訴訟を行う
- ステップ6:投稿の削除に成功する
関連記事「【ネット上の悪質な書き込み】弁護士への相談から解決までの流れ」https://sakujo.or.jp/lawyer-flow-solution/
方法その3:警察に通報・相談する
「嫌がらせを受けたら、とりあえず警察に通報する」と思う方もいるかもしれませんね。
実際にSNSのトラブルで被害届を出す方もいます。
しかし、警察はネットトラブルに対して消極的であり、おそらく通報しても実際に捜査が行われる可能性は低いです。
ただ、都道府県警察本部には「サイバー犯罪相談窓口」としてネットトラブルに対応してくれる窓口も存在しています。
ネット上の誹謗中傷は「知人や友人には相談しにくく、誰にも相談できないこと」という傾向があるため、 誰かに悩みを打ち明けられるという点では重宝できます。
【具体例】Twitter、Facebookなどでの誹謗中傷の対処方法
3つの対処方法の基本を踏まえたところで、SNSでの誹謗中傷の具体的な対処方法を紹介します。
今回紹介するのは以下のようなSNSでの対処方法です。
- インスタ(Instagram)
- Youtube
いずれのサイトも利用者が多く、中には平気で誹謗中傷発言を行うユーザーも存在します。
対処方法を押さえて、冷静に対応していきましょう。
Twitterの場合
問題の誹謗中傷ツイートから簡単に報告(通報)できます。
- ステップ1:報告したいツイートを表示
- ステップ2:アイコンをクリックまたはタップ
- ステップ3:「報告」を選択
- ステップ4:「不適切または攻撃的な内容を含んでいる」を選択
- ステップ5:指示通り「追加情報」を入力
- ステップ6:報告の送信が完了
また、Twitter上では誹謗中傷だけではなく、個人情報の流出、まとめサイトへの無断掲載も問題となっています。
下記の記事を参考に包括的に対処していきましょう。
Facebookの場合
Facebookの場合は下記の方法で投稿を通報できます。
- ステップ1:投稿の左上にあるメニューを開く
- ステップ2:「この投稿に関するフィードバック」をクリック
- ステップ3:違反している規約を選択(以下の画像を参考)
- ステップ4:「送信」をクリック
- ステップ5:報告後はサポート受信箱を確認して、審議の状況・結果を確認
下記の記事ではより詳しく誹謗中傷の対処方法を解説していきます。
「Facebookで嫌がらせを受けている」という方は下記の記事を参考にFacebookに削除依頼を出しましょう。
インスタ(Instagram)の場合
インスタの場合は「誹謗中傷コメント」や「嫌がらせDM」が問題となっています。
この問題に対処するための方法は「報告」や「拒否」です。
具体的な対処方法は便宜上割愛しますが、下記の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしていただければと思います。
Youtubeの場合
Youtubeも動画配信系のSNSという側面があり、「動画・コメント欄で誹謗中傷を受けた」という方も非常に多いです。
誹謗中傷コメントの場合は以下の流れで対処します。
- ステップ1:Youtubeで通報・削除できるコメントを見分ける(ガイドラインは要確認)
- ステップ2:「動画ページからの報告」「プライバシー侵害の申し立て手続き」「YouTubeからコンテンツを削除する」のいずれかの方法でコメントを通報して削除依頼
また、動画が問題となっている場合は、以下の方法で通報します。
- 削除方法1:プライバシー侵害・肖像権侵害
- 削除方法2:特定の個人への誹謗中傷・名誉毀損
- 削除方法3:企業への誹謗中傷・名誉毀損
コメント・動画共に下記の記事で具体的な削除方法を解説しているので、徹底的に対処していきましょう。
SNS上での誹謗中傷は犯罪なのか(訴えることが可能か)
結論から言えば、SNS上での誹謗中傷は「犯罪行為」とみなせる可能性が高いです。
つまり、「場合によっては投稿者を訴えることができる」というわけですね。
実際に、SNS上での誹謗中傷行為は以下のような違法行為とみなされるケースが多いです。
- 名誉毀損罪:「刑法230条」に該当
- 侮辱罪:「刑法231条」に該当
- プライバシー侵害:「民法709条」に該当
- 業務妨害罪・信用毀損罪:主に「刑法233条」に該当
- 脅迫罪:「刑法222条」に該当
SNS上の誹謗中傷は、場合によっては人権を侵害する「権利侵害」や「刑法」に違反する犯罪行為となります。
ただ、上記のような犯罪行為が成立するためには、 ある条件 があります。
どのような条件があるのか、みなさんが問題とする誹謗中傷がどの違法行為に該当するのかを確認していきましょう。
名誉毀損
みなさんは生まれながらに「名誉(権)」という人権を持っており、これが侵害されれば 「名誉毀損」として権利侵害となります。
また、権利侵害であると同時に「 名誉毀損罪」という刑法違反です。
誹謗中傷が「名誉毀損」とみなされるためには、以下の条文に当てはまる必要があります。
その成立の条件は以下の通りです。
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:e-gov 刑法「第二百三十条」
名誉毀損が成立する条件を条文を分解して考えていきましょう。
- 「公然と」:不特定多数が誰でも閲覧できる場所(SNS上)で
- 「事実を摘示(てきし)し」:ウワサ・デマ・ガセなど何らかの情報を示して
- 「人の名誉を毀損した者」:他人(みなさん)の社会的な名声・信用といった人としての価値を傷つけた人物
整理すると、「SNS上の投稿でウワサ・デマ・ガセなどを流し、他人(みなさん)の名声・信用といった人としての価値を傷つけた人物」 となります。
言い換えれば、SNSにあらぬウワサを流して人の評価・評判を傷つけた投稿者です。
「鍵アカ」などの形をとっていたとしても、不特定多数のフォロワーがいる場合は名誉毀損が成立します。
上記の条件に当てはまるようであれば、「名誉毀損」として誹謗中傷投稿に対処しましょう。
侮辱
また、投稿内容が「〇〇はバカ」「〇〇はゴミ」といった特定の人物への罵詈雑言といったレベルの内容でも「名誉毀損」に問えます。
それが「侮辱」です。
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
ウワサやデマ、ガセネタを流さずとも、SNS上で不特定多数に見える形で人を侮辱すれば、「名誉毀損」となります。
上記の条件に当てはまるようであれば、「侮辱」として誹謗中傷投稿を対処しましょう。
名誉毀損と侮辱の違いで混乱する方は下記の記事が参考になります。
プライバシー侵害
プライバシー侵害とは、憲法第13条から導かれる「プライバシーの権利」をみだりに侵害される行為となります。
「SNSで個人情報を書き込まれた」という場合は「プライバシー侵害」でみだりに権利を侵害する民法709条「不法行為」に該当する可能性が高いです。
プライバシーの権利で保護される個人情報は、以下の3つの条件を満たしている情報です。
- 条件1:私生活情報や私生活情報と勘違いされる情報
- 条件2:公開されると不快感や不安感を感じる情報
- 条件3:未公表の情報
つまり、(ネットなどで)未公表であり、公表されると不快である個人情報となります。
「電話番号」「住所」などがわかりやすいですね。
ただし、意外と3つ目の条件「未公表の情報」を満たしていないケースが多いです。
過去にネット上で公開している個人情報だと、条件3は満たされませんので注意しましょう。
もし上記の条件を満たしているならば、「プライバシー侵害」として誹謗中傷投稿に対処していきます。
業務妨害・信用毀損
信用毀損・業務妨害は、 企業がSNS上での誹謗中傷の対象となった場合の権利侵害や刑法違反となります。
成立条件は以下の通りです。
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
このように刑法233条に該当する行為となります。
条文を分解して、SNS上での成立条件を考えていきます。
- 虚偽の風説を流布し:SNS上で嘘のウワサ・デマ・ガセネタを流して
- 又は偽計を用いて:または、意図的に勘違いを誘発させて
- 人の信用を毀損し:人の経済的な信用を傷つけた者
- 又はその業務を妨害した者:または業務(社会活動の自由)を妨害した者
つまり、 SNS上の投稿でウワサ・デマ・ガセネタを流すか、意図的に勘違いを誘発させて、企業の信用や業務を妨害した投稿者となります。
例えば「SNS上に事実と異なる商品レビューの投稿で信頼を傷つける」「イタズラ電話先として企業の電話番号を投稿し、勘違いを誘発させて電話させようとした」などが該当します。
SNS上の誹謗中傷が上記に該当したら、「業務妨害・信用毀損」として投稿を対処しましょう。
脅迫
SNS上には脅迫のようなニュアンスを含む誹謗中傷も存在します。
問題の投稿が刑法の「脅迫」に該当していないか確認していきましょう。
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
「脅迫」が成立するためには、以下のように条文のいずれかの項目に対する「害悪(危害)の告知」が必要です。
- 生命:「殺すぞ」といった殺害を予告
- 身体:「怪我させてやる」「殴るぞ」といった暴行を予告
- 自由:「監禁するぞ」「誘拐するぞ」などとみなさんの自由を奪う行為を予告
- 名誉:「2ちゃんでデマを流すぞ」などと名誉を傷つける行為を予告
- 財産:「金を盗むぞ」「家を壊してやる」などといった財産を奪う行為を予告
SNS上の投稿が上記の条件に当てはまるようであれば「脅迫」として対処しましょう。
投稿者を訴える!SNSで誹謗中傷してきた相手の特定方法
「投稿を削除しただけでは気が済まない」という方は、投稿者に対してしかるべき法的責任を負ってもらいましょう。
そのためには、まず投稿者の身元を特定する必要があります。
投稿者を訴えるまで順を追って確認していきましょう。
投稿者の特定方法
投稿者の特定を進めるためには、弁護士への依頼が基本となります。
まずは弁護士を探し、犯人を特定しましょう。
- ステップ1:問題の表現・内容が「権利侵害」に該当するか確認
(前章「SNS上での誹謗中傷は犯罪なのか(訴えることが可能か)」も参考にしてみてください) - ステップ2:SNS運営会社に交渉・訴訟を起こし、IPアドレスなどの情報を開示させる
- ステップ3:IPアドレスなどの情報から投稿者のプロバイダを特定する
- ステップ4:プロバイダに対して交渉・訴訟を起こし、投稿者に関する記録を保存させる
- ステップ5:プロバイダに訴訟を起こし、投稿者の名前、住所、メールアドレスを開示させる(特定完了)
下記の記事で具体的な特定方法を解説しますので、参考にしていただきながら、投稿者特定の手続きを進めていきましょう。
慰謝料の請求と慰謝料相場
投稿者の身元が分かっていれば、民法709条に基づき、損害賠償(慰謝料)を請求することができます。
こちらは投稿者を特定を依頼した弁護士とともに請求の手続きを行いましょう。
また、下記の記事で気になる「 慰謝料相場」を紹介しております。
「誹謗中傷投稿者にいくら請求できるの?」と疑問に思う方は、ぜひ参考にしていただければと思います。
告訴状を作成し、警察に投稿者を逮捕・起訴させる
投稿者の身元が特定され、さらに「有罪」となる見込み(証拠が揃っている)があれば、被害届よりも強制力が強い「告訴状」を作成可能です。
「告訴」とは、被害に遭ったみなさんが警察・検察に対して、犯罪の事実を申告、処罰を求める手続きです。
この告訴状を警察に提出すれば、捜査義務が発生するため、 警察・検察は積極的に捜査を行い、必要であれば投稿者の逮捕・起訴を行います。
告訴状は弁護士に作成を依頼すると受理される可能性が高くなるとされています。
「投稿者を逮捕させたい」という方は、特定を依頼した弁護士に告訴状の作成を依頼しましょう。
SNS誹謗中傷の事例
Twitterの「リツイート」機能に関する名誉毀損の損害賠償訴訟で慰謝料の支払い命令を出した例があります。
ツイッターで他人の投稿を転載し、発信する「リツイート」で名誉を傷つけられたとして、元大阪府知事の橋下徹氏がジャーナリストの岩上安身氏に慰謝料など110万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、大阪地裁であった。末永雅之裁判長は名誉毀損(きそん)を認め、岩上氏に33万円の支払いを命じた。
引用元:米田優人「橋下氏批判の投稿、リツイートは名誉毀損 大阪地裁判決」朝日新聞デジタル
SNS上の利用トラブルで慰謝料請求という可能性も考えられるというわけです。
まとめ
SNS上で誹謗中傷された時の対処方法として、冒頭で以下のような方法を紹介しました。
- 方法その1:自力でSNS上の誹謗中傷投稿に削除を依頼する
- 方法その2:弁護士に削除を依頼する
- 方法その3:警察に通報・相談する
基本はこの3つの方法となりますので、ここさえ押さえておけば問題はありません。
また、ネットトラブルは弁護士・警察に相談することが解決の糸口となることもあります。
その際は今回紹介した内容をふまえて、誹謗中傷の件を報告していただければと思います。
みなさんのSNSトラブルが無事解決することをお祈り申し上げます。
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