この記事では自己破産者リストマップ「自己破産・特別清算・再生データベース」について解説しています。
- 破産者情報を掲載する『自己破産・特別清算・再生データベース』ではないか。
過去には「破産者マップ事件」もあり、官報ソースの破産者情報の再掲載が問題視されてきました。
破産者マップ事件に関してはネット上で「炎上」も起きています。
しかしながら、破産者情報を掲載するサイトはいまだに存在します。
その一つがこの「自己破産・特別清算・再生データベース」です。
今回はこの「自己破産・特別清算・再生データベース」の概要と問題点、そして掲載されている情報への対処方法について解説していきます。
「自己破産・特別清算・再生データベース」とは
スクリーンショット出典 「自己破産・特別清算・再生 データベース」
「自己破産・特別清算・再生データベース」とは、「自己破産」「特別清算」「個人民事再生」の各種手続きを行った方の氏名・住所などの情報を公開しているWebサイトです。
他にも類似のサイトがありますが、「自己破産」「特別清算」「個人民事再生」といったカテゴリ分けをしている点がこのサイトの特徴となっています。
掲載形式などから情報源は「官報」と推測可能で、不正に破産者などの情報を公開していると考えられます。
自己破産、特別清算、個人民事再生した方の情報が掲載されている
2020年1月現時点では、2019年8月1日分から12月10日分までで更新が途絶えていますが、現在でも自己破産、特別清算、個人民事再生の手続きを行った方の氏名、住所、会社名、決定年月日、債務者などの情報が閲覧可能な状態です。
さらに、各破産者情報の「(地図を確認する)」からYahoo!地図にリンクされ、検索フォームに住所が自動でコピー&ペーストされる仕組みとなっており、容易に住所検索できてしまう状態となっています。
つまり、ページの目的で考えれば破産者マップ事件で問題となったサイトと同様のサイトであると見なすことが可能です。
サイトの開設と更新について
ドメイン取得日は「2019年9月19日(WHOIS検索より)」であり、破産者情報は2019年8月1日のものから掲載されています。
なぜドメイン取得日よりも破産者情報の方が古いんですか?
ドメイン取得後に過去数ヶ月間の破産者情報を「官報」を元に取得した可能性があります。
更新は2019年12月10日分で途絶えており、今後更新されるかは不明です。
運営者について
運営者情報などは一切開示されておらず、メニュー項目にあるページも
- 自己破産について
- このサイトについて
- お問い合わせ・削除依頼
の3つだけです。
「このサイトについて」にも運営者情報とみられる情報は一切存在せず、誰が管理・運営しているか実態を推し量ることはできません。
唯一「お問い合わせ・削除依頼」がコンタクトの手段と考えられますが、後述するとおり注意しましょう。
安易なお問い合わせ・削除依頼は避けるべき
「破産者マップ事件」は破産者情報の公開以外に「破産者情報の削除依頼時に過度な個人情報提供を要求したこと」についても問題視されていました。
実際に、破産者マップへの削除依頼フォームには、
- 氏名
- 住所
- 身分証明書の写し
- 破産に至った事情(200文字以上)
- 破産後の生活(200文字以上)
などといった情報を記入するうえに削除の「審査」も必要でその用途は不明というものでした。
「自己破産・特別清算・再生データベース」の場合は「お問い合わせ・削除依頼)」には、
- お名前
- Eメールアドレス
- タイトル
- メッセージ
といった記入項目があります。
仮にこの「自己破産・特別清算・再生データベース」の管理人が破産者マップと同一である場合、不用意に記入した個人情報が悪用されるリスクがあります。
削除申請時にプライバシー情報を記入する際は慎重に記載すべきです。
削除依頼の方法は当記事の「自己破産・特別清算・再生データベースへの適切な対処方法」にて解説しておりますので、そちらをご参照ください。
自己破産・特別清算・再生データベースの法的問題点
「自己破産・特別清算・再生データベース」の特徴は「破産者マップ」とほぼ同一です。
同様の法的な問題が浮上しています。
『破産』周知させる行為は「名誉毀損」
そもそも官報の自己破産・特別清算・個人民事再生といった情報(以降、便宜上「破産情報」とします)は、一部機関の関係者が主に閲覧する情報とされてきました。
さらにインターネット版官報には30日間の無料公開期間があり、それ以降は有料となります。
つまり、公開される範囲・期間は極めて限定的であり、閲覧する方が少ない情報となっています。
そのような情報を一般のWebサイトで整理・保存・公開する行為は「周知させる行為」にほかなりません。
ましてや破産情報をさらに周知させる行為は、名誉毀損に該当する可能性が高いです。
名誉毀損が成立する条件は以下の通りとなっています。
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
引用 刑法「第二百三十条」
つまり、
- 「公然と(公然性)」:誰でも閲覧できる場所で
- 「事実を摘示(てきし)し」:事実・ウワサ・デマ・ガセなど「何らかの情報」を示して
- 「人の名誉を毀損した者」:個人・企業の名声・信用といった価値を傷つけた人物
- 「その事実の有無にかかわらず」:示された情報は真実・虚偽に関わらない
となり、誰でも閲覧できるネット上で、何らかの事実(嘘か本当かは関係ない)を提示して、個人企業の名声・信用といった価値を傷つけた人物となります。
この「名誉」とは、「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価」とされ、社会的な評価を下げる言動が名誉毀損に当たります。
例えば、Webサイト上に投稿された
- 「〇〇は犯罪者」
- 「〇〇は低学歴」
などといった発言でも名誉毀損が成立します。
ネット上に何らかの事実(嘘か本当かは関係ない)が掲載されているだけで成立するので、破産情報の掲載が名誉毀損に問われる可能性は十分にあります。
この破産情報の掲載が名誉毀損に該当するかついては、破産者マップ被害対策弁護団でも以下のように述べています。
まず、掲載されること自体が、その人たちの名誉やプライバシーを侵害します。本件サイトの情報が広まることにより、勤務先を解雇される、ご本人やご家族が偏見やいじめにさらされるなど、生活への悪影響が生じるおそれもあります。
(中略)
一般に、破産等の経験があることは、経済的信用が低いこと、金銭管理が不得手であるなど、社会的評価を下げる事実であり、これを公表することはその人の名誉を毀損する行為であり、プライバシーを侵害する行為です。
引用 リーガルファインディング 破産者等の情報を大量にインターネットで公開するサイト「破産者マップ」をなくしましょう。「【声明文】「破産者マップ」の閉鎖を受けて、今後の弁護団活動について」
破産情報のネット上への公開行為は「破産を招くような経済的スキルの低さ」を示唆し、社会的評価を下げる事実として「名誉毀損」に該当するとしています。
このように、破産情報のWebサイトへの掲載は「名誉毀損」の法的問題点があるとされています。
自己破産・特別清算・再生データベースでも同様の形式でWebサイトへの再掲載が行われていますので、同様の法的問題があると考えられます。
名誉毀損の例外「公共性・公益性」は成立しない
中には名誉毀損が成立しない「例外」があります。
それが「公共性・公益性」の観点です。
公共性・公益性とは、社会的な利益に配慮した度合いのことです。
「汚職の摘発」「企業犯罪」など公共の利益を図るために投稿された内容は名誉毀損に問われないというものとされています。
こちらは刑法で「名誉毀損」を定める条文の次の条約で定められています。
前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
引用 刑法「第二百三十条の二」
このように、公共性・公益性がある場合は名誉毀損が成立しません。
しかしながら、破産情報の公開は手続きの債権者に不服申立の機会を与えるために知らせる程度で良く、インターネット版官報での開示で十分に事足りています。
簡単にアクセスできるWeb上で保存・公開されるべきではなく、公共性・公益性のある情報とは考えにくいとされています。
ゆえに、破産情報の公開行為は名誉毀損の例外は適用されないというのが見解です。
個人情報の不正使用と「プライバシーの侵害」が成立
破産情報は「個人情報」であり、これを勝手に公開すれば個人情報保護法に抵触します。
破産者マップ事件時に発足した「破産者マップ被害対策弁護団」や国の「個人情報保護委員会」が官報情報の再掲載について
- 個人情報保護法第18条「個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。」
- 同法第23条「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」
に違反していると警告を発しています。
その後、個人情報保護委員会は「サイト閉鎖」の行政指導を行っており、実際にその後破産者マップは閉鎖されています。
また、破産情報は氏名や住所を伴う情報であり、再掲載によってプライバシー権が侵害される可能性が高いです。
プライバシー権の侵害は以下の3つの条件をすべて満たした際に成立するとされています。
- 私生活の事実または、事実らしいと勘違いされる可能性がある情報である
- 本人が「公開して欲しくない」と判断した情報である
- 一般にまだ知られていない情報である
破産情報は上記3つの条件をすべて満たします。
弁護団でも破産の事実の公表が「恐怖心を人々に抱かせる」と述べており、名誉毀損同様に情報が広まることで生活に影響が生じるとしています。
上記より、自己破産・特別清算・再生データベースにも破産者マップ同様に個人情報の取り扱い方に問題があると言えます。
そもそも「官報」には問題はないのか
Webへの公開が違法ならば、「官報」には問題がないのかと思う方もいるでしょう。
「官報」とは、国が発行する公告文書のことです。
官報が破産などの情報を公開する理由は、債権者への告知のためと破産による取引の不履行の防止のためともいわれていますが、一番は「公にすべき」と法律で定めてあるためとされています。
実際に自己破産・特別清算・個人民事再生などを定める各種法律で官報への公告が義務づけられています。
【自己破産に関する「破産法」の場合】
第十条 この法律の規定による公告は、官報に掲載してする。
(中略)
第三十二条 裁判所は、破産手続開始の決定をしたときは、直ちに、次に掲げる事項を公告しなければならない。
一 破産手続開始の決定の主文
二 破産管財人の氏名又は名称
三 前条第一項の規定により定めた期間又は期日
引用 破産法
【特別清算に関する手続きについて定める「会社法」の場合】
清算株式会社は、第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない。
引用 会社法「第四百九十九条」
【個人民事再生を定める「民事再生法」の場合】
第十条 この法律の規定による公告は、官報に掲載してする。
引用 「民事再生法」
このように法律の定めるところにより、官報上での情報掲載は法律的に何の問題もなく、むしろ義務づけられていることが分かります。
それでも一部では官報での詳細な個人情報の公開は「プライバシーの侵害なのでは?」と問
題視されています。
しかし、官報を閲覧する方は少ないとされ、閲覧にわざわざ規制をかける必要がないとされており、今後法改正がない限りは官報で公開されることになると考えられます。
自己破産・特別清算・再生データベースへの適切な対処方法
自己破産・特別清算・再生データベースには「お問い合わせ・削除依頼」が存在します。
ただし、破産者マップ事件の例もあるので、削除申請時にうかつに個人情報を記入する行為は避けるべきと判断します。
ここまでの内容を踏まえ、考えられる掲載情報の削除依頼方法は以下の3つです。
- 方法その1:「削除依頼フォーム」から直接削除依頼
- 方法その2:民事保全法に基づき、裁判所への「仮処分」の申請
- 方法その3:プロバイダ責任制限法に基づいて発信者の特定を行い、「送信防止措置依頼書」ほか法的措置
それぞれの方法を見ていきましょう。
方法その1:「削除依頼フォーム」から直接削除依頼
少々リスクがありますが、削除依頼フォームから直接削除依頼を送る方法です。
問題の情報の掲載が「名誉毀損」または「プライバシー侵害」であると述べ、該当情報の指定(URLなど)とその削除を求めましょう。
メールは文言通り、無料で作成できるYahooのものを利用し、削除が完了するなど問題が解決した場合はウイルスメールなどの送付を避けるため、ただちにYahooのアカウントを削除することをおすすめします。
方法その2:民事保全法に基づき、裁判所への「仮処分」の申請
ネット上で名誉毀損やプライバシー侵害など権利侵害が起きた場合、侵害情報の削除を求めて民事保全法に基づき「仮処分」の命令を裁判所に申し立てることができます。
この「仮処分」とは、法律によってガードを作り出し、一時的にみなさんの権利を保全する手続きのことです。
法的な手続きが大半となりますので、弁護士に依頼して削除依頼を送る方法が基本です。
以下のような流れで問題の記載を削除できます。
- ステップ1弁護士探し弁護士を探し、ネット上のトラブル対処(特に「投稿の削除」)を得意とする弁護士を選ぶ
- ステップ2法律相談候補に挙げた弁護士に法律相談する(自己破産・特別清算・再生データベースで起きた事情を説明する)
- ステップ3仮処分申立の準備証拠を保存し、仮処分申請用の書類を準備、弁護士に自己破産・特別清算・再生データベースの投稿の削除を依頼する
- ステップ4削除申請弁護士が自己破産・特別清算・再生データベースに対して直接交渉を行うか「仮処分」の申立をする
- ステップ5裁判所による審尋裁判所が相手方を審尋する
- ステップ6担保金の供託相手方の損害に対する担保金を法務局に供託する(30~50万円となるが還付を受けることが可能)
- ステップ7仮処分命令の発令と問題ページの削除担保金が供託されると裁判所から記事削除の仮処分命令が発令され、問題の投稿を削除させることが可能
申立から発令まで2ヶ月程度がかかるとされていますが、この仮処分が発令されることで、当該ページの内容を強制的に削除することができます。
方法その3:発信者の特定後「送信防止措置依頼書」ほか法的措置
プロバイダ責任制限法に基づき、発信者である自己破産・特別清算・再生データベースの運営者の氏名・住所などを特定し、「送信防止措置依頼書」を送付して削除を依頼する方法です。
その他、慰謝料の請求など法的な措置をとることもできます。
この方法の手順は以下の3ステップです。
- ステップ1:プロバイダ責任制限法に基づく「発信者開示請求」
- ステップ2:割り出した運営者宛にプロバイダ責任制限法に基づく「送信防止措置依頼」
- ステップ3:慰謝料の請求などその他法的措置
詳しい方法や手順は下記の記事で紹介していきます。
こちらの方法も弁護士の協力を依頼するケースがほとんどです。
まとめ
「自己破産・特別清算・再生データベース」は「自己破産」「特別清算」「個人民事再生」の各種手続きを行った方の氏名・住所などの情報を公開しているWebサイトでしたね。
様々な法的問題があるという点もご紹介しました。
運営者が不明であるため、削除を依頼する方法として「自己破産・特別清算・再生データベース」上での権利侵害の発生を解いて、法的に削除を要求するしかありません。
以下の3つの方法で対処しましょう。
- 方法その1:「削除依頼フォーム」から直接削除依頼
- 方法その2:民事保全法に基づき、裁判所への「仮処分」の申請
- 方法その3:プロバイダ責任制限法に基づいて発信者の特定を行い、「送信防止措置依頼書」ほか法的措置
いずれも弁護士への相談が成功の鍵を握ります。
自己破産・特別清算・再生データベースの対処にこの記事が参考になれば幸いです。
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