この記事ではSNSで自分のなりすましアカウントを見つけた場合の基本的な対処・対策方法について解説しています。
顔もわからない人物に自分のイメージを下げられるのは非常に迷惑ですよね。
今回は迷惑ななりすましアカウントへの対処・対策について紹介していきます。
特に気になる、
- なりすましアカウントへの対処法と対策(再発防止)
- なりすましアカウントへの法的措置
の2点を重点的に解説しますので、迅速な対応が可能ですよ。
なりすましアカウントを見つけたら、この記事を参考にして対処・対策していきましょう。
SNSなりすましは2種類!種類別の対処・対策を
単純に「なりすまし被害」と言っても、SNS上でのなりすまし行為には以下の2種類があります。
- 「偽(酷似)アカウント作成・運用」:なりすます相手のアカウントや人物像を顔写真などを流用して再現した偽のアカウントを作成・運用する行為
- 「アカウント乗っ取り」:何らかの方法でなりすます相手のアカウントのID・パスワードを取得し、不正にログインしてアカウントを乗っ取る行為
上記の2種類で対応が異なりますので、まずはどちらのなりすまし被害に遭われたのか押えておきましょう。
「偽アカウント作成・運用」への対処
偽アカウントを作成し、みなさんを真似てなりすます(装う)アカウントは各SNSの利用規約で禁止されている傾向があり、規約違反として報告可能です。
必ずしも禁止されているわけではないみたいですね。
例えば、TwitterやInstagram、Facebookではなりすまし(偽アカウントの作成・運用)行為は禁止されており、報告もできます。
- Twitter「Report an account for impersonation(なりすましアカウントの報告)」:ページ最下部の「English」で言語を日本語に変更可能
- インスタグラム「Instagramでのなりすましアカウントを報告」
- Facebook「なりすましアカウントを報告」
問題のアカウントのプロフィール画面から「通報」や「報告」で「なりすまし」項目を選ぶことで、アカウントを報告できますよ。
なりすまし(偽アカウント)を禁止するインスタグラムの例を詳しくご紹介します。
また、次章以降で紹介するようになりすまし犯が行う諸々の行為に対して法的措置も可能です。犯人に責任を追及したい方はぜひご確認くださいませ。
「偽アカウント作成・運用」対策(再発防止)
周囲に公開する情報を減らし、できるだけなりすましできるような個人情報を与えないことが大切です。
そのためには、「非公開化(投稿の公開範囲の限定)」や「フォロワーを友人・家族など親しいフォロワーに限定」といった対策が効果的となります。
ただし、これはあくまでも「個人」の場合であり、企業や芸能人、著名人などSNSを「広報・告知」のために利用する方が行うのは難しいでしょう。
そのような方は次章以降を参考に「法的措置」を行って整然と対処し、なりすまし行為に徹底して対抗する姿勢を見せましょう。ふざけ半分で行っている「なりすまし犯」に対してある程度は抑止が働きます。
「アカウント乗っ取り」への対処
アカウントを乗っ取り被害は違法性・緊急性が高い行為であり、各SNSでは利用規約で禁じられています。そのため、SNS側でも「規約違反行為」として報告用のフォームを設けている場合があります。
- Twitter「お問い合わせ」
- LINE「お問い合せフォーム」
- インスタグラム「Instagramでのなりすましアカウントを報告」
- Facebook「なりすましアカウントを報告」
乗っ取りは技術的な問題でもあり、自力での解決は困難です。まずは乗っ取られた現状を運営に報告し、運営の指示に従って適切な対応を取りましょう。
インスタならばログイン画面で本人確認のリンクを発行してもらうこともできますね。
以下の記事ではその報告の方法について具体的な手順を紹介していますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
また、「偽アカウント対策」でも説明したように、なりすまし犯が行う諸々の行為に対しては法的措置も可能です。次章以降で紹介していきます。
「アカウント乗っ取り」対策(再発防止)
アカウント乗っ取りは以下のように「対策」がある程度決まっています。
- 定期的なログインIDやパスワードの変更
- SNSアプリと紐付けしている「サードパーティアプリ(SNS以外のアプリ)」のアクセス無効化
- 「二段階認証」設定:アカウントログインを2重にして、セキュリティを強化
上記はすべてSNS側で用意されていますのでご安心ください。
アカウント設定などの画面から上記の設定を行うことができますよ。
上記のような対策を行い、他人が自分のアカウントにログインできる余地を無くすという対策を取って、アカウントの不正ログインを予防しましょう。
また、ネット上でのアカウント乗っ取り行為は「不正アクセス禁止法」に該当し、違反すれば刑事罰が与えられます。不正アクセス禁止法は非親告罪ですが、警察に被害届を出してはいけないわけではないので、警察に周知させる目的で被害届を提出しましょう。
SNSなりすましは「法的措置」も可能
「なりすまし行為」自体を裁く法律はありませんが、なりすまし犯が行っている行為を裁くことは可能です。
なりすましと法律については下記の記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。
なりすましアカウントと法律をふまえたうえで、なりすましアカウントの「言動」にもう一度注目してみましょう。
例えば、
- 「自分になりすまして暴言をはき、周囲に誤解を与えている」=「名誉毀損罪・侮辱罪」
- 「なりすましアカウントが勝手に自分の顔写真を転用している」=「肖像権侵害」
- 「アカウントに不正にログインされた(乗っ取り)」=「不正アクセス禁止法違反」
- 「自分になりすました上で友人・知人にギフトカード購入を要求している」=「詐欺罪」
- 「企業や芸能人の公式アカウントがなりすまされている」=「信用毀損罪・偽計業務妨害罪」
- 「なりすまされた上で、SNS上に投稿した作品を私物化された」=「著作権侵害・著作権法違反」
といった場合、法的措置を取ることが可能です。
SNS上のなりすまし犯は上記の法律に基づき、「権利侵害」または「刑法・特別刑法違反」として法的責任を追及することが可能です。
「権利侵害」
「名誉毀損(名誉権侵害)」「肖像権侵害」「著作権侵害」はいわゆる「権利侵害」となります。
権利侵害が発生している場合、民法709条に基づき、権利を侵害している人物に対して損害賠償請求が可能です。
第五章 不法行為
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
権利侵害時の慰謝料請求については下記の記事でも詳しく解説していますのでご参照ください。
また、次章で紹介するように権利侵害が発生していれば、なりすまし犯の特定も可能となります。詳しくは次章をご覧ください。
「刑法・特別刑法違反」
なりすまし行為は、権利侵害以外にも刑法や特別刑法に違反している可能性があります。
例えば、
- 「名誉毀損罪・侮辱罪」
- 「不正アクセス禁止法違反」
- 「詐欺罪」
- 「信用毀損罪・偽計業務妨害罪」
- 「著作権法違反」
です。
上記の犯罪には、権利侵害とは別に「懲役」や「罰金」といった「刑事罰(罰則)」があります。刑事罰に処せられる見込みがある場合は警察に相談することが可能です。
ここでよく耳にする「被害届」を警察に出すわけですね!
はい。その詳細や方法については「場合によっては「被害届」も出せる」で解説します。
場合によってはSNSなりすまし犯を「特定」ができる
SNSなりすましの犯人は「権利侵害」が発生している場合、「特定」が可能になります。それを保障するのが「プロバイダ責任制限法」です。
第一条 この法律は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものとする。
要はインターネット上で権利侵害が発生した場合、なりすまし犯(発信者)の個人情報を開示できる(特定できる)権利を与えるという法律です。
つまり、ネット上での権利侵害(なりすまし犯による名誉権侵害・肖像権侵害・著作権侵害)が絶対条件となります。
権利侵害が発生している場合、プロバイダを経由した特殊な手続きによって、なりすまし犯の特定や問題の情報の削除(送信防止措置)が可能になります。
詳しい手続きの内容や流れのイメージは以下の記事で解説していますので、なりすまし犯を特定して詳細な情報を得たい場合は、以下の記事を参考にして対処していきましょう。
犯人を特定する意味はあるのでしょうか?
犯人の特定を行うことで、発信者に対して損害賠償請求を行ったり、次章で紹介するように、刑事罰を与えるべく捜査機関に発信者の告訴・告発を行うことが可能になります。
場合によっては「被害届」も出せる
なりすまし犯は「被害届」を出して「逮捕」される可能性もあります。どのような状況であれば被害届が出せるのか、その出し方についても見ていきましょう。
なりすまし犯の刑事上の責任を追及する
なりすまし犯が「刑法・特別刑法」に違反すれば、刑事上の責任が問われ、犯人には刑罰が与えられます。
例えば、
- 「名誉毀損罪」:3年以下の懲役・禁錮/50万円以下の罰金
- 「侮辱罪」:拘留/科料(刑罰としては比較的軽微)
- 「不正アクセス禁止法違反」:3年以下の懲役/100万円以下の罰金
- 「詐欺罪」:10年以下の懲役
- 「信用毀損罪・偽計業務妨害罪」:3年以下の懲役/50万円以下の罰金
- 「著作権法違反」:10年以下の懲役/1000万円以下の罰金
といった刑罰が与えられます。なりすまし犯を逮捕することも可能と覚えておきましょう。
「親告罪」と「非親告罪」について
「親告罪」とは「告訴」がなければ検察が被疑者に対して有罪の判決を求める訴えを提起することができない犯罪のことです。
その「告訴」とは、犯罪があった事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示のことを指します。
つまり、「親告罪」とは、被害者による犯罪事実の意思表示が必要なタイプの犯罪となります。いわゆる「被害届」や「告訴状」を警察に提出するのはそのような申告が必要な犯罪があるためです。
「非親告罪」は逆にその申告を必要としないタイプの犯罪で被害者の告訴がなくても検察が被疑者を起訴できます。被害者の告訴が不要なのが非親告罪です。
なりすまし犯が犯している可能性がある犯罪の中では「親告罪」は、
- 「名誉毀損罪」
- 「侮辱罪」
- 「著作権法違反」
があります。
上記の犯罪を訴える場合、あらかじめ警察に被害届や告訴状の提出が必要ですのでご注意ください。
なお、「不正アクセス禁止法」と「詐欺罪」、「信用毀損罪・偽計業務妨害罪」は非親告罪であり、被害届や告訴状の提出は必要ではありません。
「被害届」と「告訴状」の違いについて
名誉毀損罪などの親告罪には、犯罪の申告が必要でしたね。
被害届の記入項目には、
- 被害者(みなさん)の住所・氏名・生年月日・職業(身分証明書持参)
- 被害日時・場所(どのSNSか、いつ)
- 被害状況(どのような被害を受けたのか/名誉毀損・侮辱・著作権侵害)
- 被害金額(あれば)
- 犯人の人定事項(犯人の特徴など)
などがありますので、記述できることがあればもれなくすべて記述していきましょう。
「被害届」とは警察・検察などの捜査機関に対して単に犯罪の事実を報告(申告)するものです。捜査の義務はなく、なりすまし犯の処罰を求めるものではありません。
これに対して「告訴状」には犯罪の事実を報告するだけではなく、「捜査の義務」も発生します。
ただし、警察など捜査機関に捜査の義務が発生する以上、あいまいな記述は厳禁で告訴状が拒否されるケースも少なくありません。
そこでプロバイダ責任制限法に基づき、民事で「権利侵害」として犯人を特定、あらかじめ犯人の素性や違法性のある行為を明らかにしておくと、告訴状が受理されやすくなるとされています。
ゆえに、犯人の「特定」には意味があるのです。
なお被害届の提出先は「最寄りの交番」、告訴状の提出先は「警察署」となっていますのでご注意ください。
まとめ:SNSなりすましへの対策
なりすましと言っても以下の2つの意味合いがあり、それぞれ対処も異なります。
- 「偽(酷似)アカウント作成・運用」
- 「アカウント乗っ取り」
また、なりすまし行為は様々な法律に違反している可能性がある行為です。
そのため、法的措置に基づき、犯人の特定や被害届の提出も可能です。
この記事で紹介したことを活かして、厄介な「なりすまし」被害に対処していただければ幸いです。
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