「そのDMは偽物」AI偽スクショによる炎上の削除対策

SNS上で「○○さんからこんなDMが来ました」という一言とともに、メッセージ画面のスクリーンショットが公開され、大きな批判を集める。ところが、その会話は実際には一度も交わされていなかった。このような「偽スクショ」による炎上被害が、生成AIの普及とともに現実の問題になりつつあります。

以前は、本物らしい偽のスクリーンショットを作るには、画像編集の知識や手間が必要でした。しかし現在では、AIや各種ツールを使えば、実在するアプリの画面にそっくりなDMやチャット、メールの画像を、誰でも短時間で作れるようになっています。顔や映像を偽造するディープフェイクとは違い、偽スクショは文字情報だけでできています。そのため見る人が「本物の証拠」として受け止めやすく、真偽を確かめられないまま拡散してしまう点が厄介です。

身に覚えのない画像で非難されたら、すぐに「これは捏造です」と反論したくなるものです。しかし、感情的に反論するより先に証拠を保存し、冷静に対応の順番を考えることが、被害を抑える鍵になります。

本記事では、次の内容を具体的に解説します。

・偽スクショによる炎上の仕組み

・本物と偽物の見分け方

・証拠保存の方法

・X・Threads・Instagramなどへの削除申請

・名誉毀損にあたる場合の法的対応

・企業が被害を受けた場合の初動対応

AIで作られた「偽スクショ」による炎上とは

國次将範
國次将範

この章では、AIなどで作られた偽のスクリーンショット、いわゆる「偽スクショ」がどのように炎上を引き起こすのか、その仕組みを整理します。偽スクショの怖さは、「証拠画像がある」という見た目だけで、多くの人が内容を事実だと信じてしまう点にあります。被害を受けた側は、存在しない会話について「なかったこと」を証明しなければならない難しい立場に置かれます。まずは典型的なパターンと、被害が広がりやすい理由を確認しておきましょう。

「○○さんからこんなDMが来た」偽の証拠画像が炎上を生む典型パターン

偽スクショによる炎上で最も多いのが、「○○さんからこんなメッセージが届いた」として、DMやチャット画面の画像を投稿するパターンです。画像には実在する人物のアカウント名やアイコンが表示されており、高圧的な言葉や差別的な発言、性的な誘いなど、相手の評判を落とす内容が書かれています。

典型的なケースには、次のようなものがあります。

・インフルエンサーや配信者が、ファンに暴言を送ったかのように見せかけるDM画像

・元交際相手や知人とのLINE画面を捏造し、浮気や金銭トラブルがあったかのように見せる画像

・企業の担当者から威圧的なメールが届いたとする、存在しない社内外のメール画面

・有名人や企業アカウントが、実際には投稿していない問題発言をしたかのように見せる「偽の投稿画面」

こうした画像は、「被害を告発する」「注意喚起する」という形で投稿されることが多く、閲覧者は投稿者を被害者、名前の出た人物を加害者として受け止めやすくなります。その結果、名前を出された人物のアカウントには非難のコメントが殺到し、引用や転載によって短時間で拡散してしまいます。

なかには、本物のやり取りの一部だけを書き換えたり、別の会話の一部を差し込んだりした「部分的な改ざん」もあります。全体としては実際にあったやり取りに見えるため、まったくの捏造よりも見抜くのがさらに難しくなります。

生成AIやツールの普及で偽造のハードルが下がった背景

以前は、本物らしい偽スクショを作るには、画像編集ソフトで文字を一つずつ書き換えたり、フォントや配色を細かく調整したりする必要がありました。手間も技術もかかるため、精巧な偽造を作れる人は限られていました。

しかし現在は状況が大きく変わっています。ブラウザ上でDMやチャット画面の見た目を再現できる「チャット画面ジェネレーター」のようなツールや、画像の中の文字を自然に差し替えられる生成AIの編集機能が身近になりました。アカウント名やアイコン、メッセージ本文、送信時刻などを入力するだけで、実在するアプリとよく似た画面をそれらしく作れてしまうのです。

さらに、生成AIを使えば、特定の人物らしい言葉づかいを真似た文章を作ることもできます。見た目だけでなく、文面まで「本人が書きそう」と思わせる内容に仕上げられるため、本人をよく知る人でさえ違和感に気づきにくくなっています。

もちろん、こうしたツールの多くは、ジョークやデザイン用途など正当な目的で使われています。問題なのは、作られた画像が「本物の証拠」として、特定の人物を攻撃するために使われることです。偽造の手軽さが増した分、悪意ある人物が思いつきで偽スクショを作り、拡散させるリスクも高まっているといえます。

ディープフェイクとの違いと、文字の「証拠」が信じられやすい理由

AIによる偽情報というと、顔や声をすり替えた動画、いわゆるディープフェイクを思い浮かべる人が多いでしょう。ディープフェイクは主に「顔・映像・音声」を偽造するもので、近年は見分けるための検出技術や注意喚起も広がってきています。

これに対して偽スクショは、DM・メール・チャット・SNSの投稿画面といった「文字情報の証拠」を偽造するものです。両者には、次のような違いがあります。

・作るのが手軽:映像や音声と違い、文字と画面の配置を整えるだけで作れるため、偽造に必要な手間が少ない

・不自然さに気づきにくい:表情の乱れや音声のズレのような、見た人が直感的に気づく「違和感」が出にくい

・「証拠」として受け取られやすい:スクリーンショットは「実際の画面を写したもの」というイメージが強く、見る人が疑いを持ちにくい

特に、スクリーンショットは日常的に「やり取りの証拠」として使われているため、「画像があるなら本当なのだろう」と考えてしまう心理が働きやすい点に注意が必要です。

さらに厄介なのは、DMやチャットは当事者同士の非公開のやり取りであるため、第三者は真偽を確かめる手段をほとんど持っていないことです。偽スクショで名前を出された人が「そんなメッセージは送っていない」と説明しても、「証拠があるのに否定している」と受け止められ、かえって批判が強まってしまうこともあります。

このように、偽スクショの被害では「存在しない会話を、存在しないと証明する」という難しい課題に向き合うことになります。だからこそ、本物と偽物を見分けるポイントを知り、反論の前に証拠を固めておくことが重要です。次章では、偽スクショを見分けるための具体的なポイントを解説します。

本物のスクリーンショットと偽物を見分けるポイント

國次将範
國次将範

この章では、出回っているスクリーンショットが本物か偽物かを見極めるための具体的なチェックポイントを紹介します。ただし、見た目の違和感だけで「偽物だ」と断定することはできず、最も確かな反証になるのは、自分の端末やアカウントに残っている「本物のデータ」です。見分け方と反証の方法をあわせて押さえておきましょう。

画面表示の不自然さをチェックする

まず確認したいのが、画面の見た目に不自然な点がないかどうかです。偽スクショでは、次のような部分にほころびが出やすい傾向があります。

・フォントや文字の大きさ:メッセージ本文だけ字体や太さ、文字の間隔が微妙に違う。日本語の中に、中国語用フォントで表示されたような字形の違う漢字が混ざっている

・時刻や日付の表示形式:アプリ本来の表示形式(「午後3:12」「15:12」など)と違う。端末上部のステータスバーの時刻と、メッセージの送信時刻の関係が不自然

・既読表示やリアクション:既読マークや送信済みの表示がアプリの仕様と異なる位置や形で表示されている

・アイコンや画像の解像度:アイコンだけがぼやけている、輪郭に切り貼りしたような跡がある

・画面デザインのバージョン:送信日とされる時期には使われていなかった、新しい(または古い)画面デザインになっている

生成AIで加工した画像では、細かい文字の崩れや、ボタン・記号の歪みが出ることもあります。画像を拡大して細部まで確認してみましょう。

AI生成を示す電子透かしや来歴情報(メタデータ)が付く場合もありますが、撮り直しやSNSへの投稿の過程で失われることが多く、決め手にはなりにくいのが実情です。

内容や文脈の矛盾を確認する

見た目に問題がなくても、内容や前後の流れに矛盾が見つかることがあります。次のような点を確認しましょう。

・時系列の矛盾:送信時刻とされる時間帯に、本人は配信中だった、別のSNSに投稿していた、移動中で操作できなかったなど、行動記録と食い違っている

・仕組み上の矛盾:相手のDM受付設定やブロック状態から考えて、そもそもメッセージを送れない状態だった

・言葉づかいの違い:一人称や語尾、絵文字の使い方、敬語のクセなどが、本人の普段の文章と明らかに違う

・前後のやり取りの欠落:会話の途中だけが切り取られており、それ以前の流れがまったく示されていない

また、投稿者が元の画面の提示に応じない、指摘されると画像を差し替えるといった行動も、捏造を疑う手がかりになります。

なお、「AI画像判定ツール」の結果は誤ることもあるため、それだけを根拠に偽物と主張するのは危険です。見分け方はあくまで「疑うきっかけ」と考え、反証は次に説明する自分自身のデータで行うのが基本です。

自分のデータで「そのやり取りは存在しない」と示す方法

偽スクショへの反証として最も説得力があるのは、自分のアカウントや端末に残っている本物の記録です。主なサービスでは、次のような方法で自分のデータを保存できます。

・X(旧Twitter):設定画面の「アカウント」から「データのアーカイブをダウンロード」を申請すると、投稿やDMなどのデータをまとめて取得できます。準備に時間がかかることがあるため、早めに申請しておきましょう

・Instagram・Threads:アカウントセンターの「あなたの情報とアクセス許可」から、メッセージを含む自分の情報をダウンロード(エクスポート)できます

・LINE:トーク画面の設定から、トーク履歴をテキスト形式で保存・送信する機能があります。該当する相手とのトーク履歴を丸ごと保存しておきます

・メール:送信済みフォルダやサーバー上の記録を確認し、該当日時に問題のメールが送信されていないことを確かめます。企業の場合は、システム管理者を通じて送信記録(ログ)を確認する方法もあります

こうしたデータに該当するメッセージが含まれていないこと、あるいは実際のやり取りの内容が画像と異なることを示せれば、捏造を裏付ける有力な材料になります。

ただし、「削除したから残っていないだけだ」と反論される可能性もあります。データは取得した日時がわかる形で保管し、内容に手を加えないことが大切です。画面を操作する様子を動画で記録しておくと、信頼性をさらに高められます。

「これは捏造です」と反論する前に証拠を保存すべき理由

國次将範
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この章では、反論よりも先に証拠を保存すべき理由と、その具体的な方法を解説します。反論をきっかけに投稿者が画像を削除すると、削除申請や投稿者の特定、損害賠償請求に必要な証拠まで失われてしまうおそれがあります。まず証拠を確保し、そのうえで反論の内容とタイミングを考えるのが基本の順番です。

反論より先に証拠保存を優先すべき理由

証拠保存を最優先にすべき理由は、主に次の3つです。

1つ目は、投稿が削除・編集される前に記録を残す必要があることです。捏造を指摘されると、投稿者が画像やアカウントごと消すことがあります。拡散した転載は残るのに、元の投稿を示す証拠だけがないという状態になりかねません。

2つ目は、投稿者を特定するための手続きに期限があることです。後述する発信者情報開示請求では、投稿のURLや日時が必要になります。また、通信事業者が保存している接続記録(ログ)の保存期間は数か月程度とされることが多く、証拠を集めるのが遅れると、特定そのものが難しくなります。

3つ目は、感情的な反論が、かえって炎上を広げてしまうことです。反論が切り取られて「逆ギレ」と受け取られたり、注目を集めて偽スクショの閲覧数を増やしたりすることがあります。

保存すべき情報と具体的な保存方法

偽スクショの被害で保存しておくべき情報は、次のとおりです。

・偽スクショが投稿された画面:投稿本文、添付画像、投稿日時、アカウント名、ユーザーID(@から始まる文字列)が一度に写るように撮影する

・投稿のURL:投稿ごとの個別URLをコピーし、メモ帳などに一覧で記録する

・偽スクショの画像そのもの:投稿に添付された画像を、できるだけ元のサイズで保存する。後で画像の細部を検証する際に役立つ

・投稿者のプロフィール画面:アカウント名、ID、自己紹介文、フォロワー数がわかるように保存する

・拡散の状況:リポスト数、引用投稿、コメント欄の誹謗中傷、他のSNSやまとめサイトへの転載先のURLとスクリーンショット

・被害の記録:職場や取引先への問い合わせ、仕事のキャンセル、誹謗中傷のDMなど、実際に生じた被害の内容と日時

・自分側の反証データ:前章で紹介したデータのダウンロードやトーク履歴、当日の行動記録など

保存の際は、パソコンのブラウザで投稿を開き、アドレスバーのURLと投稿日時が同時に写る状態で撮影すると、証拠としての信頼性が高まります。スマートフォンなら、画面録画で投稿を開いてからURLを表示するまでの流れを残す方法も有効です。

反論や声明を出すときの注意点

証拠を確保したら、必要に応じて「この画像は事実ではない」と説明する投稿や声明を出すことを検討します。その際は、次の点に注意しましょう。

・偽スクショの画像を自分の投稿に再掲しない:反論のために画像を貼り付けると、偽の内容をさらに多くの人の目に触れさせてしまいます

・事実だけを簡潔に伝える:「該当するメッセージは送信していません」「送信履歴にも存在しません」など、確認できた事実を短くまとめます

・根拠を示す:アカウントのデータを確認した結果など、捏造と判断した根拠を可能な範囲で示します。ただし、他人とのやり取りなど第三者の情報が含まれる場合は、公開範囲に注意が必要です

・投稿者を名指しで攻撃しない:根拠が不十分なまま「犯人」として相手を名指しすると、今度は自分が名誉毀損を問われるおそれがあります

・個別の反応に一つずつ反論しない:リプライでの言い争いは新たな切り取りの材料になります。説明は1つの投稿にまとめ、プロフィールに固定するなどして、繰り返し発信しないようにします

「法的措置を含めて対応を検討しています」と添えると、拡散している人に注意を促す効果も期待できますが、脅すような表現は避け、落ち着いた言葉づかいを心がけましょう。

X・Threads・Instagramなどへの削除申請と拡散への対応

國次将範
國次将範

この章では、偽スクショが投稿・拡散されたときの具体的な削除方法を解説します。削除を求める先は、SNSのプラットフォーム、投稿者本人、そして転載先のまとめサイトや掲示板と、大きく3つに分かれます。削除申請では「不快だから」ではなく、「存在しない会話を捏造したもので、虚偽の内容により名誉や信用が傷つけられている」と具体的に伝えることが重要です。拡散の規模が大きいところから、優先順位をつけて対応していきましょう。

X・Threads・Instagramでの通報と削除申請の手順

代表的な通報手順は次のとおりです。画面の表記はアップデートで変わることがあるため、各サービスのヘルプセンターもあわせて確認してください。

・X(旧Twitter):投稿右上の「…」から「ポストを報告」を選び、最も近い理由を選択します。Xには合成・操作されたメディアに関するポリシーがあり、人を欺く加工画像は規制の対象とされています

・Instagram:投稿右上の「…」から「報告」を選び、理由を選択します。名誉毀損など法的な問題がある場合は、Metaのヘルプセンターにある法的な理由による報告フォームから申請する方法もあります

・Threads:投稿右上の「…」から「報告する」を選びます。ThreadsはInstagramと同じMeta社のサービスのため、Metaの報告窓口も利用できます

・TikTok:動画や投稿の共有ボタン、または長押しから「報告する」を選び、理由を選択します

申請時には、「該当するDMは送信しておらず、画像は捏造されたものである」「実在する人物のアカウント名とアイコンが使われ、虚偽の内容で社会的評価が下げられている」など、何がどのように事実と異なり、どのような被害が出ているかを具体的に書きましょう。自分のデータで反証できる場合は、その旨も記載すると説得力が増します。

なお、2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)により、総務省が指定した大規模プラットフォーム事業者には、削除申出の窓口の整備や、申出から原則7日以内に対応を判断して申出者に通知することなどが義務付けられました。X、Meta(Facebook・Instagram・Threads)、TikTokなども指定されているため、各社が届け出ている専用の削除申出窓口を利用するのも有効です。

投稿者本人に削除を求める場合の方法と注意点

投稿者の連絡先がわかる場合は、本人に直接削除を求めることも選択肢です。ただし、そのやり取りまで新たに切り取られ、晒されるおそれがあるため、慎重に進めましょう。相手が不明な場合や不安な場合は、無理に連絡せずプラットフォームへの申請を優先してください。

直接削除を求める場合は、次の点を意識しましょう。

・感情的なメッセージは送らず、文書の形で要求をまとめる:対象となる投稿のURL、画像が事実と異なること、削除を求める期限、応じない場合は法的措置を検討することを簡潔に記載します

・記録が残る方法で送る:相手の住所がわかる場合は、内容証明郵便を使うと、いつ・どのような内容の要求をしたかを証明できます

・脅迫や強要と受け取られる表現を避ける:「許さない」「職場に知らせる」などの表現は、かえってこちらが責任を問われる原因になりかねません

まとめサイトや掲示板へ転載された場合の削除依頼

まとめサイトや掲示板などの転載先では、元の投稿が削除された後も画像が残り続けるため、それぞれに削除を求める必要があります。

・まとめサイト:サイト内の「お問い合わせ」フォームや削除依頼窓口から、対象ページのURLと、画像が捏造であることを伝えて削除を求めます

・匿名掲示板:多くの掲示板には削除ガイドラインや削除依頼の専用ページがあります。ガイドラインに沿った形式で申請しましょう

・運営者の連絡先がわからない場合:サイトが利用しているレンタルサーバー会社に対して、送信防止措置(削除)を依頼する方法があります。依頼書の書式は、業界団体が公開しているガイドラインの書式を参考にすると作成しやすくなります

自分だけで削除依頼を進めるのが難しい場合は、総務省の「違法・有害情報相談センター」に相談すると、削除依頼の方法について助言を受けられます。一般社団法人セーファーインターネット協会の「誹謗中傷ホットライン」も、事業者に対応を促す連絡を行っています。

転載ページが名前の検索結果に表示される場合は、Googleの法的な理由による削除申請窓口も利用できますが、元のページへの削除依頼と並行して進めることが大切です。

偽の証拠が名誉・信用を傷つけた場合の法的対応と企業の初動

國次将範
國次将範

この章では、偽スクショで名誉や信用が傷つけられた場合の法的な対応と、企業の初動対応を解説します。偽スクショは「存在しない事実」をでっち上げるものであるため、内容次第で名誉毀損や信用毀損、業務妨害が問題になり、投稿者を特定して責任を追及できる可能性があります。手続きには期限があるため、早めの判断が大切です。

名誉毀損・信用毀損・業務妨害が問題になるケース

偽スクショによって、「暴言を吐いた」「差別的な発言をした」「不正な取引を持ちかけた」など、社会的評価を下げる事実があったかのように示された場合は、名誉毀損が問題になります。名誉毀損は、公然と事実を示して人の社会的評価を低下させた場合に成立し得るもので、民事上の損害賠償請求や、刑事上の名誉毀損罪の対象になる可能性があります。

偽スクショの場合、示された内容がそもそも捏造であるため、「内容が真実である」という理由で違法性が否定される余地はほとんどありません。また、偽の画像に「気持ち悪い」「最低な人間」などの罵倒が添えられている場合は、侮辱にあたる可能性もあります。

企業や店舗が対象になった場合は、虚偽の情報を広めて企業の経済的な信用を傷つけた「信用毀損」や、だます手段で業務を妨げた「偽計業務妨害」が問題になることもあります。たとえば、「この会社の担当者から脅しのようなメールが来た」とする偽のメール画面が拡散され、問い合わせや解約が殺到したようなケースです。

なお、内容を確かめずにリポストや転載をした人も責任を問われる可能性があり、単なるリツイートで名誉毀損の責任を認めた裁判例もあります。

発信者情報開示請求で投稿者特定を検討すべきケース

匿名のアカウントから偽スクショが投稿された場合、投稿者を特定するためには、発信者情報開示請求の手続きを利用します。2022年10月に施行された法改正により、「発信者情報開示命令」という裁判所の手続きで、以前よりも迅速に投稿者を特定できる仕組みが導入されています。

次のようなケースでは、投稿者の特定を検討する価値があります。

・削除申請をしても対応されない、または同じ偽スクショが繰り返し投稿されている

・偽スクショが原因で、仕事の契約解除や取引停止など、具体的な経済的損害が出ている

・職場や家族への嫌がらせなど、実生活にまで被害が及んでいる

・損害賠償請求や刑事告訴によって、投稿者の責任をはっきりさせたい

注意したいのは期限です。前述のとおり、通信事業者の接続記録(ログ)は数か月程度で消えてしまうことが多いため、特定を考えている場合は、できるだけ早く専門家に相談する必要があります。また、名誉毀損罪や侮辱罪は被害者の告訴がなければ起訴されない親告罪で、原則として犯人を知った日から6か月以内に告訴する必要があります。

身の危険を感じる場合や嫌がらせが続く場合は、警察相談専用電話「#9110」への相談も検討してください。

企業が偽スクショの被害を受けた場合の初動対応

企業や店舗が偽スクショの標的になった場合は、個人の場合とは違い、組織として素早く、一貫した対応をとることが求められます。初動では、次の流れで対応を進めましょう。

・社内での事実確認:名前の出た担当者へのヒアリング、メールや社内チャットの送信記録、問い合わせ履歴などを確認し、本当にそのやり取りが存在しないかを確かめます

・対応窓口の一本化:広報や法務など、外部への説明を担当する窓口を決め、社員が個別にSNSで反論しないよう周知します

・証拠の保全:前章で紹介した方法で、投稿や拡散の状況、問い合わせの件数などを記録します

・公式見解の発信:事実確認の結果、捏造と判断できた場合は、公式サイトや公式アカウントで、確認した事実と今後の対応方針を簡潔に公表します。確認中の段階では「事実関係を確認中」と伝え、憶測で断定しないことが重要です

・取引先や顧客への個別説明:影響が大きい取引先や顧客には、公式見解とあわせて個別に経緯を説明し、不安を解消します

社内確認の結果、一部は本物だったと判明する可能性もゼロではありません。確認が終わる前に「すべて捏造です」と断定するのは避け、事実を確かめてから発信することが、企業の信用を守るうえで最も重要です。

偽スクショによる炎上は、対応が遅れるほど被害が広がります。「反論より先に証拠を保存する」「自分のデータで反証する」「削除申請と投稿者特定を並行して検討する」という3つを意識して、落ち着いて対応を進めましょう。自分だけで対応するのが難しいと感じた場合は、一人で抱え込まず、総務省の「違法・有害情報相談センター」や法務省の「みんなの人権110番」、ネット上の削除対応に詳しい専門家などに相談することも検討してください。

 

誹謗中傷対策風評被害対策
この記事の監修者
國次@ネット削除の専門家

インターネットの誹謗中傷対策、削除の専門家。5ちゃんねるを始めとする、各種書き込みの削除、下位表示させるプロ。特に企業案件を得意とし、ネガティブな口コミ、サジェストキーワードを常に監視、対策している。携わった案件は1,000以上。お困りの場合は、以下↓LINEからお気軽にお問い合わせください。

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