「権利侵害」というワード、最近よく聞くようになりましたね。気になる方も多いでしょう。
インターネット上で権利侵害は多発しており、SNS・匿名掲示板を閲覧していると、知らず知らずのうちにみなさんの権利が脅かされているケースはかなり多いです。
権利侵害を知って対処していきましょう!
「権利侵害って何?」「これって権利侵害?」「どこからが権利侵害?」「権利侵害に遭ったらどうする?」権利侵害に関するすべてをこの記事でご紹介していきます。
権利侵害とは?皆さんにはどんな「権利」がある?
まずは基本から押さえていきます。
権利侵害とは
権利侵害とは、法律上認められているみなさんの権利(人格権、財産権等)を不当に侵害される行為のことを指します。
より身近な例として、ネット上において攻撃的な発言で人格権が侵害されたり、ネット上に他人の作品を勝手にアップロードして財産権(著作権)を侵害するといった例があります。すべて「権利侵害」とみなせます。
権利と権利侵害の種類
著名な権利とその権利侵害を紹介します。当てはまるものがないか確認してみてくださいね。
権利侵害の種類①:名誉権の侵害=名誉毀損
有名な「名誉毀損(めいよきそん)」のことです。
名誉権とは人の「名誉」を守る権利(人格権の一種)のことで、名誉とは具体的に「人に対する社会的な評価や信用、イメージ(外部的名誉と呼びます)」を指します。
つまり、名誉権の侵害=名誉毀損とは、人の社会的な評価や信用、イメージを貶める行為のことをいいます。
具体例として「公然と根も葉もない噂を流してその人の信用を失墜させた」といった場合や「誹謗中傷でその人のイメージを損なった」といった場合等に名誉毀損が成立します。
名誉権を侵害する行為は以下の法的責任を負います。
- 刑法230条「名誉毀損罪」:第三者が閲覧可能な場所で何らかの情報を「公開」して人の社会的な信用等を損なった場合成立。3年以下の懲役・禁錮/50万円以下の罰金
- 刑法231条「侮辱罪」:第三者が閲覧可能な場所で罵倒・悪口等「侮辱」行為を行った場合に成立。30日未満の拘留/1万円未満の科料→厳罰化で1年以下の懲役・禁錮/30万円以下の罰金
- 民法709条「不法行為による損害賠償請求」:他人の権利を侵害する行為(不法行為)で損害を与えた場合に賠償金を請求。ケースによるが賠償額は1万円~100万円
よくニュースなどで芸能人への名誉毀損で逮捕されたり、損害賠償を請求されたりする裏にはこのような法律が存在しているわけです。
みなさんも思い当たることはありませんか?ぜひ弁護士に相談してみてください。
権利侵害の種類②:プライバシー権の侵害
こちらも有名な「プライバシーの権利(人格権)を侵害する行為」で、具体的には元々非公開であった住所・氏名・年齢・顔写真等が本人の許可なしでネット上に投稿された場合等に成立します。
- 条件①:プライベート情報、またはプライベート情報と勘違いされるような(誤解を与える)情報
- 条件②:公開された結果、不快・不安となる情報
- 条件③:未公開の情報
通説的に、これら3つの条件をすべて満たすとプライバシーの権利が成立するとされています。
プライバシーを保護する刑法はまだ存在しないので、民法709条「不法行為による損害賠償請求」でプライバシーの権利による賠償金請求が一般的です。
こちらもケースによりますが、賠償額は1万円~100万円となっています。
権利侵害の種類③:肖像権の侵害
肖像権とは「自分の肖像(写真、絵等)を勝手に利用されない権利」のことで、肖像権侵害は自分の肖像を勝手に利用される行為のことを指します。
勝手に写真を撮る行為の他、勝手に撮影した写真をネットにアップロードしたり、人の顔写真を加工して公開したりする行為が肖像権侵害に該当します。
こちらもれっきとした権利侵害なので、プライバシー侵害同様に不法行為による損害賠償請求の対象となり、数十万円の請求が可能です。
権利侵害の種類④:著作権の侵害
著作権は「著作物を保護するための権利(財産権)」のことです。
「著作物」とは、何らかの情報を文章や音楽、映画作品などを通して感情表現を利用して創作的に「表現」したものです。
単なるデータや事実、アイデア等は該当しませんし、表現が必要で頭の中にあるだけでは著作物として認められません。
みなさんが撮影した写真やスマホで編集した映像作品、ネット上で公開した物語等はこの著作権で保護されています。
著作権はさらに細かい権利(支分権)に分かれており、複製権(コピー権)、上映権、公衆送信権(アップロード権)、翻訳権等は有名です。
現在、リテラシーの欠如によってSNS上で著作権の侵害は頻繁に発生しており、今後の課題となっています。ネット上で著作権侵害を行うと以下の法的責任を負います。
- 「著作権法」第119条1号の著作権侵害:10年以下の懲役/1000万円以下の罰金
- 民法709条「不法行為による損害賠償請求」:著作権侵害で損害を与えた場合に賠償金を請求。ケースによるが賠償額は50万円~100万円
著作権侵害は財産権を侵害される行為で、ここまでに紹介した人格権の侵害と比べると大きな金額が動くのが特徴です。それだけ法的責任の重い行為となっています。
権利侵害の「対処法」とは【わかりやすく説明】
権利侵害を放置すればその間その情報は誰でも閲覧できる状態が続きますので、社会的にみなさんの人格的な価値や著作物の価値がどんどん下がっていきます。
そうなる前に、権利侵害を受けたら「必ず訴える」という意気込みが持てるのが利用ですね。
権利侵害の対処法は「削除」、内容に応じて「投稿者の特定」「損害賠償」です。ネット上で権利侵害が発生したときは次の5つの対処法で権利侵害に対応しましょう。
対処法①:投稿者に対して権利侵害の発生を伝えて削除依頼
最もハードルが低い対処法で、相手に権利侵害の発生を告知し、投稿を削除させる方法です。
勇気を出して「その投稿の○○(表現・写真等)は、私の○○権の侵害にあたりますので早急に削除してください。法的措置も検討しています。」といった例文で直接交渉しましょう。
対処法②:「送信防止措置依頼書」で強制削除
送信防止措置とは、「プロバイダ責任制限法」に基づき、ネット上で権利侵害が発生した際に、決まった形式で削除を申し出ればプロバイダやWebサイト側が削除に応じるという制度のことです。
この手続きはユーザーではなく「サイト運営者」に対して行います。
その決まった形式が「送信防止措置依頼書」となります。詳しい内容は下記の記事をご覧ください。
対処法③:裁判所に「仮処分申請」で強制削除
権利侵害を放置すれば継続的に権利を侵害され続けることになります。
そこで「民事保全法」に基づく手続きを裁判所で行い、保全したい権利への侵害対して「勝訴」の仮処分を出してもらうことで強制的に削除させることが可能です。
送信防止措置依頼書と比べるとより強制力の強い措置であり、ほぼ確実に権利侵害の投稿を削除できます。ただし、法的な手続きなので弁護士への協力はマストです。
対処法④:「発信者情報開示請求」で投稿者特定・損害賠償の請求
発信者情報開示請求とは「プロバイダ責任制限法」に基づく手続きで、権利侵害の発端となった投稿者の契約情報(氏名、住所等)をプロバイダ(インターネット事業者)に対して開示させるものです。
これにより投稿者を法的に特定することができます。
特定後は弁護士と協力して慰謝料の請求を行うか、応じない場合「不法行為に基づく損害賠償請求」を行います。民事で法的責任を追及するのであれば必要な手続きです。
特定した情報を元に対処法⑤「刑事告訴」も可能です。
対処法⑤:「刑事告訴」で投稿者を警察に通報
名誉毀損罪や著作権法違反の場合、刑事責任が発生しますので、警察に通報すると動いてくれるでしょう。ところが被害を申告したところで警察は動いてくれません。
刑事告訴とは最寄りの警察署で「告訴状」を提出することで、告訴状を受理すると捜査機関には捜査をする義務が発生します。この点が被害届とは異なります。
対処法④で弁護士と協力して犯人を特定し、その弁護士に助言してもらいながら告訴状を作成することをおすすめします。
権利侵害の「相談先」一覧【困ったら相談を!】
権利侵害の相談は国の公的機関も対応しています。
- 「インターネット人権相談受付窓口」:法務省
- 「違法・有害情報相談センター」:総務省
- 「インターネット・ホットラインセンター」:警視庁
- 「サイバー犯罪相談窓口」:各都道府県警察本部
相談ではなくすでに法的な措置を検討しているのであれば、弁護士への相談もおすすめです!
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