悪口を書き込んだ相手の情報を知りたいですか?「ネット上の誹謗中傷投稿で被害を受けている」といった場合、法的な手続きに基づき、投稿者の情報の開示を求めることができます。
つまり、法的に投稿者の特定ができる、ということですね。正式には「発信者情報開示請求」と呼びます。名称はまだ覚えなくても大丈夫です。
特定ができれば慰謝料の請求や警察への刑事告訴が可能になります。投稿者にしかるべき罰を与えることもできるでしょう。
しかしながら、この重要な手続きの概要を知ろうとネット上を調べても内容が難しく、理解に苦しみがちです。
そこでこの記事では開示請求の内容について詳しく、かつ簡単に解説していきたいと思います。
わかりやすくお願いします。
つまずく方はこの記事で開示請求について理解していきましょう。
「開示請求」とは
まずは開示請求の基本から押さえていきましょう。
開示請求とは?簡単に説明すると
開示請求とは、インターネットサービス提供者(プロバイダ)に対して、ネット上に保管されている投稿者の情報を開示させる手続きのことです。
例えば、悪質な投稿者がネット上で特定の人物に対して攻撃的な発言(投稿)をしたような場合に、法的に投稿者の情報を開示できる権利が与えられます。
「特定」という手続きを法的に行っていくものです。
開示請求ができるようになった背景
インターネットの普及により、ネット上では特定の個人をターゲットとした攻撃が増えていく一方で、こうしたネット上のサービスを提供するプロバイダ側にも責任が問われるようになりました。
そこでその責任を減免する代わりに、警察・検察、そして被害者などの求めに応じて投稿者の個人情報を開示させる権利を与える法律が制定されました。
これが 2001年に制定された「プロバイダ責任制限法」です。
こうやって開示請求ができるようになったのですね。
ネット上でよく聞くあの法律ですね。実は投稿者の個人情報を開示をする一方でプロバイダの責任を減免させる法律なのです。
この法律が制定されたことで、投稿者の個人情報を速やかに開示することができるようになりました。
開示請求の「要件」とは?開示請求できないパターンも…【わかりやすく】
2001年からプロバイダ責任制限法によって、インターネットサービス提供者に対し、悪質な投稿者の個人情報の開示請求ができるようになりました。
ただし、どのような請求に対しても個人情報を開示させる許可が与えられるわけではありません。
この開示請求には「要件」があります。この要件をすべて満たしていなければ開示請求ができません。まずはご自身の状況に照らし合わせながら確認してみてください。
基本的には次の3つの要件が重要になります。
開示請求の要件1:「特定電気通信による情報の流通」
まず「特定電気通信」とは、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信のことです。わかりやすく言うと、不特定多数の人間が閲覧できるインターネットサービスのことを指します。
さらに「情報の流通」ですので、不特定多数のユーザーが閲覧できるネット上に公開される形で投稿された情報が流通してしまっていることが条件となってきます。
例えばSNS上であらぬ情報を公開されてしまったり、掲示板に名指しで誹謗中傷を書き込まれてしまった場合などに該当します。
だれでも閲覧できるところに書き込まれてしまうと情報が拡散(流通)してしまい、被害も広がっていきますものね…。
また「特定電気通信」はあくまでも「不特定多数が閲覧できること」が条件であり、1対1のインターネット通信は対象となりません。
例えば、電子メールやSNS上のDMなどはこの要件を満たせず、プロバイダ責任制限法の対象外となります。ご注意ください。
開示請求の要件2:「権利の侵害」
開示請求の2つ目の要件として「権利の侵害」があります。
「権利」とは、法律上で定められている、守られるべき「権利」のことです。「人権」とも言います。例えば名誉権、プライバシー権、肖像権、著作権などがあります。
そのような権利を侵害されるので、権利侵害というわけですね。確かに、プライバシー権侵害、著作権侵害などはどこかで聞いたことがあります。
開示請求は「プロバイダ責任制限法」と呼ばれる法律に基づく手続きでしたね。
そもそもこの法律が趣旨が記載されている第一条では開示請求の権利が与えられるのは「権利侵害が起きた時」と限定されています。
第一条 この法律は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものとする。
このように第一条で権利の侵害がある場合に限定されていることが明白ですね。
また、開示請求について直接定められている第四条では以下のような記載もあります。
一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
明確に権利が侵害されていることが条件となっていることがわかります。
名指しやデマ・噂・誹謗中傷などの流布で明らかに特定の個人の名誉を傷つける内容(=名誉毀損・名誉権侵害)や明確に住所を特定できる投稿内容(=プライバシー侵害)などが該当します。
開示請求の要件3:「正当な(開示請求の)理由」
開示請求には開示請求を行う正当な理由が必要です。こちらも要件2と同様に第四条で定められている重要な要件となっています。
この要件を満たせないパターンも少なくないので、注意深く読み進めていただければと思います。
正当な理由とは例えば以下のような理由となります。
- 投稿者を特定し、権利侵害に対する損害賠償を請求するため
- 投稿者を特定し、謝罪広告など名誉回復措置の要請を行うため
- 投稿者に直接投稿の削除を申し出るため
- 投稿者を特定しておき、刑事告訴をスムーズに進めるため
上記は法的機関や論文などでよく取り上げる「正当と思しき理由」となっています。
つまり、上記のような「法的手段をとるため」という類の理由であれば、正当な理由とみなされやすいということです。
本当に正当な理由と認められるかはケースバイケースとなります。
当然ですが「特定してSNS上で晒したい」「苛立つから特定してやりたい」といった理由では開示請求を行うことはできません。
「その他の要件」:基本的に満たしていることが多い
その他にも以下の4つのような要件があります。基本的には満たしていることが多いです。
- 自己の権利を侵害されたとする者であること:開示請求が与えられるのは権利を侵害された本人または当人が運営する団体など
- 相手方が「開示関係役務提供者」であること:投稿者だけではなく、ドメイン・サーバーを提供する企業、匿名掲示板サイトの管理人、プロバイダなども該当
- 開示請求する情報が「発信者情報」に該当すること:IPアドレス、氏名、住所、メールアドレスなど
- 開示請求する情報を相手方の「開示関係役務提供者」が「保有」していること:開示関係役務提供者が法律・事実上、それらの情報を管理していること
上記の条件は開示請求を行う時点でおのずと満たしていることが多いです。心配な方は念のために一つずつ確認しておきましょう。
開示請求で開示できる情報とは
開示請求は通常、2段階に分けて行われます。まずはWebサイトに対する開示請求を行い、そこから得た情報でプロバイダを特定し、そのプロバイダに対しても開示請求を行います。
つまり、開示請求では2段階で情報を得ることになる、ということになります。まず、Webサイトに対して行われる開示請求で開示できる情報には以下のようなものがあります。
- 投稿者のIPアドレス
- 投稿のタイムスタンプ(上記のIPアドレスから投稿が書き込まれた年月日・時刻)
この情報があれば投稿者のプロバイダを特定できます。プロバイダを特定したら今度はプロバイダに対して開示請求を行います。こうして以下の情報が得られます。
- 投稿者の氏名
- 投稿者の住所
- 投稿者のメールアドレス
投稿者の特定が完了しました!2段階に分けて投稿者の開示請求を行う流れは大体は理解できたと思います。
ネット上に投稿を書き込む場合、インターネットを経由するのであり、必ずプロバイダ(インターネット事業者)を契約・利用することになりますよね。
投稿者がこのプロバイダとの契約時にプロバイダに伝えた上記の情報が残っているので、それを開示させるというわけですね。
まとめ
おさらいしましょう。開示請求とは、インターネットサービス提供者(プロバイダ)に対して、ネット上に保管されている投稿者の情報を開示させる手続きのことでしたね。
また、どんな請求に対しても投稿者の情報が開示されるわけではありません。請求時に以下のような要件が吟味されます。
- 特定電気通信による情報の流通であること
- 明確な権利侵害の発生
- 開示請求すべき正当な理由
もう一度みなさんの事例を顧みて、上記3つの基本的な条件を満たしているか確認しておきましょう。
この開示請求の手続きが成功すれば以下のような情報を得ることができます。
- 投稿者のIPアドレス
- 投稿のタイムスタンプ(上記のIPアドレスから投稿が書き込まれた年月日・時刻)
- 投稿者の氏名
- 投稿者の住所
- 投稿者のメールアドレス
このようにして開示請求とは、投稿者の情報を開示できる手続きとなっています。
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