ネット上では誹謗中傷で警察が動かないという噂が流れており、不安に思う方も多いかもしれません。
結論から言えば、 警察はネット上の誹謗中傷による被害でも動いてくれます。
しかし、誹謗中傷で警察に動いてもらうためには、押さえるべきポイントがあるため、注意が必要です。
そこで、この記事では判断材料として、 警察に動いてもらえるポイントと 警察が動くケースと動かないケースを紹介します。
みなさんの状況とこの記事の内容を照らし合わせながら、ネットの誹謗中傷に対して今後の対応を決めていきましょう。
残念ながら警察はネットの誹謗中傷に対して消極的
誹謗中傷の犯人を警察に逮捕させるためには、まずは警察に相談しますよね。
しかし、警察はネット上の誹謗中傷関係の事件に対して、思いのほか消極的です。
警察が誹謗中傷に対して消極的な理由は、主に次の2つ法的な理由があります。
- 民事不介入
- 表現の自由
まずはこの理由2つをみていきましょう。
消極的な理由その1:民事不介入
民事不介入とは、 民事訴訟で解決できるような問題に警察機関が介入するべきではないという原則のことです。
誹謗中傷はその「 民事訴訟で解決できるような問題」にあたります。
民間人の間で解決できることならば、警察がわざわざ動く必要はありません。
ゆえに、「個人で解決できる争いごとは個人で解決してくれ」という姿勢が警察の基本スタンスといえますね。
この民事不介入の原則が警察にあるため、誹謗中傷に対して消極的な姿勢を見せているわけですね。
消極的な理由その2:表現の自由
表現の自由とは、 国や企業など誰にも邪魔されることなく、好きな場所で好きなことが言える権利です。
ゆえに、表現内容をチェックして犯罪として扱うような行為は、この表現の自由に反する行為となります。
つまり、ネットの投稿が誹謗中傷を含む表現があるからといって、安易に犯罪として扱えないというわけです。
この表現の自由が法律で保障されているため、誹謗中傷は警察でも取り締まりが難しい案件であり、警察が消極的になる理由の1つとなっています。
消極的な警察に動いてもらうためのポイント4つ
警察が誹謗中傷に対して消極的な理由は、民事不介入と表現の自由があることがわかりましたね。
しかし、 誹謗中傷の被害では断固として警察が動いてくれないわけではありません。
ポイントを押さえれば、警察に犯人逮捕のために動いてもらえる可能性が高くなります。
誹謗中傷で警察に動いてもらうためのポイントは、次の4つです。
- 誹謗中傷による被害の状況を明確にする
- 問題の書き込みが法律に違反していることを立証する
- サイバー犯罪対策室に相談してみる
- 粘り強く被害を訴える
この4つのポイントを押さえ、消極的な警察を動かして、犯人を逮捕させましょう。
ポイント1:誹謗中傷による被害の状況を明確にする
まずは誹謗中傷によって どれくらいの規模の被害を被ったかという被害の状況を明確にしましょう。
なぜなら、 被害状況が不明な場合、警察は被害届を受理しない可能性があるためです。
被害の状況とは例えば、名誉を傷つけられた、売上が下がったなどですね。
このような 被害状況はなるべく数値化できると良いです。
被害状況を数値化できれば、視覚的に理解しやすいほか、被害状況の具体性も増します。
売上がいくら失われたのか、名誉がどの程度傷つけられたのかといった点は明確にしておきましょう。
ポイント2:問題の書き込みが法律に違反していることを立証する
問題の書き込みがどの法律に違反しているのかを立証しましょう。
なぜなら、 法律に違反していることが認められない限り、警察は動かないためです。
それだけではなく、警察は「民事不介入」「表現の自由」を理由に消極的でしたね。
法律の違反を立証することは、警察を動かすためのポイントとなります。
ゆえに、問題の書き込みがどの法律に違反しているのかを立証することが重要なのです。
ネット上の誹謗中傷だと、刑法230条「名誉毀損罪」、刑法233,234条「信用毀損罪・業務妨害罪」に該当するケースが多いです。
ポイント3:サイバー犯罪相談窓口に相談してみる
サイバー犯罪相談窓口とは、サイバー犯罪の被害にあった際に気軽に相談できる窓口となっています。
サイバー犯罪とは、 詐欺、公然わいせつ、著作権違反、名誉棄損などです。
ネット上で誹謗中傷を受けた場合、このサイバー犯罪に該当する可能性が高く、相談する方も少なくありません。
このサイバー犯罪相談窓口は各都道府県の警察本部に設置されています。
サイバー犯罪に特化しており、ほかの課よりもサイバー犯罪を取り扱った実績も豊富であるケースも多いです。
サイバー犯罪相談窓口に相談するとしないでは、警察の対応に大きな差が生まれてしまう可能性もあります。
そのため、誹謗中傷を受けた際は、このサイバー犯罪相談窓口に相談することをおすすめします。
ポイント4:粘り強く被害を訴える
誹謗中傷の書き込みによって被害を受ければ、警察の消極的な態度など関係ありません。
被害者はその書き込みが立派な犯罪行為であることを主張できます。
それに、誹謗中傷は、攻撃を受けた人の精神的なダメージが大きく、日常生活にも支障をきたすような深刻な問題です。
粘り強くその被害の深刻さを何度も訴え続ければ、警察官を説得できる可能性はあります。
警察が動かないケース
さきほどのポイント2の中で、「 法律に違反していることが認められない限り、警察は動かない」と説明しました。
ネット上で受けた誹謗中傷が犯罪として成立しなければ、警察は動きません。
誹謗中傷はさまざまな犯罪が成立する危険な行為ですが、中でも名誉毀損が問われる例が多いです。
そこで、ここからは誹謗中傷の中でも「名誉毀損」が犯罪として成立しないケースについて説明していきます。
名誉毀損が成立しない条件は次の3つです。
- 事実の公共性
- 目的の公益性
- 真実性・真実相当性
この3つの条件すべてに当てはまれば、警察は動きませんよ。条件の1つずつ確認いたしましょう。
警察が動かない条件1:事実の公共性
事実の公共性とは、問題の書き込みが「 公共の利害に関する事実」を含む内容であるような状況です。
この「公共の利害に関する事実」とは、ネット上へ書き込んで世間に公表することで、多くの方のためになる情報を含むことを指します。
例えば、政治家の汚職、上司からのセクハラ、企業の不正などの情報ですね。
このような情報が公開されることは、 国民の良識を育む議論の材料となりうるため、公共性のある事実として認められやすいのです。
ゆえに、事実の公共性が警察が動かない条件の1つとなっています。
警察が動かない条件2:目的の公益性
目的の公益性とは、事実を示した理由が正当な目的であるような状況を指します。
この正当な目的とは、「 情報が多くの人間の役に立つと思って書き込んだ」といった目的のことです。
例えば、政治家の資質を問うために汚職・不正を暴露するケースなどを思う浮かべるとわかりやすいですね。
このような 正当な目的でネットに書き込まれた投稿は、目的の公共性を満たす状況となっています。
ゆえに、目的の公共性は警察が動かない条件の1つなのです。
警察が動かない条件3:真実性・真実相当性
真実性・真実相当性とは、 示した情報が真実であると証明できるような状況です。
ネット上の書き込みによって偽りようがない真実の情報を示している場合、警察が動かない条件の1つとなります。
以上3つの条件 (事実の公共性、目的の公益性、真実性・真実相当性)をすべて満たすと、名誉毀損罪は成立しません。
名誉毀損が犯罪として成立しなければ、警察も動かないというわけです。
警察が動くケース(事例つき)
警察が消極的で犯人逮捕のために動かないケースばかりではありませんよ。
実際にネット上の誹謗中傷で逮捕された者や刑事責任を負った者も多いです。
この記事では、誹謗中傷で警察が動いたケースを4つ紹介します。
- タレント・麻木久仁子が掲示板の投稿を名誉毀損で訴え
- 掲示板でノンフィクション作家を誹謗中傷、逮捕へ
- 掲示板で藤井厳喜氏を誹謗中傷、逮捕へ
- お笑いタレント・スマイリーキクチへの名誉毀損で18人を書類送検
この4つの事例は、著名人への誹謗中傷という点が共通しています。
著名人への誹謗中傷は犯人が逮捕される傾向が強いです。以上の4つの事例を詳しくみていきましょう。
警察が動いたケース1:タレント・麻木久仁子が掲示板の投稿を名誉毀損で訴え
zakzak(夕刊フジ)では2011年に「2ちゃんねらー騒然! 麻木久仁子“勝訴”匿名でも名誉毀損か」として次のように報じています。
「2ちゃんねる」への書き込みで名誉を傷つけられたとして、タレントの麻木久仁子(48)がプロバイダーの「浜松ケーブルテレビ」(浜松市)に発信者情報の開示を求めた訴訟で、静岡地裁浜松支部は26日、発信者の個人情報開示を命じたのだ。麻木側が今後、書き込み主を相手に刑事、民事での訴訟を起こすのは確実だ。
引用:2ちゃんねらー騒然! 麻木久仁子“勝訴”匿名でも名誉毀損か – 芸能 – ZAKZAK
発信者情報開示とは、名誉を傷つけた相手を特定する手続きのことです。
zakzakでは麻木氏が「確実」に刑事での訴訟を起こすと推測しており、警察が動く可能性の高さについて知ることができます。
著名人への名誉毀損で警察が動く事例の1つでした。
警察が動いたケース2:掲示板でノンフィクション作家を誹謗中傷、逮捕へ
ネット上の掲示板でノンフィクション作家(千葉県)を誹謗中傷する書き込みを行った大阪府に住む一般女性(45)を、千葉県警が名誉毀損の容疑で逮捕したケースがあります。
容疑者はノンフィクション作家について「現在は風俗嬢。低脳ぶりを発揮中」などと書き込み、作家の名誉を傷つけました。
このようにネット上での名誉毀損が、実際に警察を動かし「逮捕」に至ったケースもあります。
このように、誹謗中傷で警察が動いたケースは存在するので、ご安心ください。
警察が動いたケース3:掲示板で藤井厳喜氏を誹謗中傷、逮捕へ
匿名掲示板「2ちゃんねる」で、「たちあがれ日本」から立候補して落選した藤井厳喜氏を誹謗中傷する書き込みを行ったとして、警視庁小岩署が名誉毀損の容疑で北海道大学の男子大学生を逮捕したケースがあります。
逮捕された大学生は掲示板にて計33回、藤井氏を誹謗中傷する投稿を行い、名誉を傷つけました。
こちらもノンフィクション作家のケース同様、ネット上での名誉毀損が、警察を動かして逮捕に至ったケースです。
警察が動いたケース4:お笑いタレント・スマイリーキクチへの名誉毀損で18人を書類送検
日刊スポーツでは「スマイリーキクチのブログ炎上19人検挙!」として以下のように報道しています。
お笑いタレント、スマイリーキクチ(37)のブログに、本人が過去の殺人事件の犯人であるかのような中傷や脅迫文が数百件書き込まれる事件があり、警視庁中野署は5日までに、17~45歳の男女計18人を名誉棄損の疑いで書類送検する方針を決めた。また、脅迫容疑で川崎市の会社員の女(29)を書類送検した。
引用:スマイリーキクチのブログ炎上19人検挙! – 芸能ニュース : nikkansports.com
こちらのケースは警察が名誉毀損の疑いで一斉検挙した例です。
また、会社員の女性が脅迫の容疑で書類送検されています。
このように、ネット上での誹謗中傷で大勢の人間がその責任を問われる例もあるのです。
一般人への誹謗中傷で逮捕者が出たケース
J-CASTニュースでは、「自殺高校生をネットで中傷の少年 『名誉棄損で逮捕』の理由」として次のように報道しています。
滋賀県内の高校3年の男子生徒(18)をSNS上で中傷したとして、東京都内の無職の少年(19)が名誉棄損の疑いで逮捕され、話題になっている。(中略)
滋賀県警の甲賀署はJ-CASTニュースの取材に対し、容疑者の少年は、15年7月から16年9月までの間、SNS上で中傷する書き込みを続けていた疑いがあるとしている。「さまざまな女ユー ザーに迷惑行為を行い、最終的にはそんなことをやっていないと逃げ惑っている」などと書き込んでいたという。
京都新聞によると、遺族の話では、男子生徒は、16年9月下旬に父親と一緒に甲賀署を訪れて被害の相談をしていたが、その翌日に自宅で首を吊って自殺していた。一方、甲賀署によると、被害者の父親が16年11月に甲賀署に被害届を出し、捜査していた。
引用: J-CASTニュース
このように誹謗中傷の対象が著名人ではなくても、警察が動いて犯人の逮捕に至ったケースもあります。
「著名人ではないから」と諦めてしまうにはまだ早いです。
一度、最寄りの警察本部のサイバー犯罪相談窓口に相談しましょう。
まとめ
警察は ネット上の誹謗中傷に対して、民事不介入と表現の自由を理由に消極的な姿勢をとっています。
しかし、必ずしも警察が動かないわけではありません。
ネット上での誹謗中傷で警察が動き、逮捕に至ったケースが存在しています。
消極的な警察を動かすポイントは次の4つでしたね。
- 誹謗中傷による被害の状況を明確にする
- 問題の書き込みが法律に違反していることを立証する
- サイバー犯罪対策室に相談してみる
- 粘り強く被害を訴える
これらのポイントを意識しながら、警察に被害を報告するための被害届を出しましょう。
この記事が誹謗中傷の犯人を逮捕するための一助になれば幸いです。
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