ネット上でひどい言葉を投稿されて、困っていませんか?
もしかするとあなたに投げかけられたその誹謗中傷は、罪に問うことができるかもしれません。
「自分の言われた言葉が誹謗中傷にあたるのか」「誹謗中傷は訴えることができるのか」と気になっている人は、この記事でしっかりと詳細を確認していきましょう。
そもそも具体的に「誹謗中傷」とは何か
インターネットが普及したことによって世に広まった「誹謗中傷」という言葉ですが、もともとそのような四字熟語は存在しません。
「誹謗」と「中傷」は あくまでも個別の単語であり、それぞれの意味合いは以下となります。
- 誹謗 :相手をそしること。悪口を言うこと。
- 中傷 :根拠もないのに相手の悪口を言うこと。
どちらも悪口を言って他人の名誉と心を傷つけるという点は同じなため、セットとして扱われる場面が多いです。
ただし、誹謗は根拠の有無を問わず悪口全般のことを指しているのに対して、中傷は根拠がない悪口のみを指しているという点は、大きく異なるので注意しましょう。
誹謗中傷にあたる言葉と誹謗中傷で問われる4つの罪
インターネット上でひっきりなしに飛び交う誹謗中傷ですが、相手の捉え方やその内容によっては罪に問われるケースもあります。
ここでは、どのような言葉がどのような罪に該当するのか、具体的にみていきましょう。
名誉毀損罪
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。(刑法第二百三十条)
名誉毀損罪(めいよきそんざい)とは、インターネット上を始めとする 公然の場において他人の名誉を傷つける発言をした際に適用される刑罰です。
刑が確定した者には3年以下の懲役もしくは禁錮または、50万円以下の罰金が科せられます。
【名誉毀損罪に該当する言葉】
- Aは犯罪者だ
- AとBは不倫をしている
- Aは部下にセクハラをしていた
[surfing_voice icon=”https://sakujo.or.jp/wp-content/uploads/2019/01/AdobeStock_99318373.jpeg” name=”” type=”r” font_color=”000″]真偽は問われないため、仮に事実に基づいたものであっても公然の場でこれらの発言をしてしまうと、刑事罰を科せられる可能性があります。
侮辱罪
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。(刑法第二百三十三条)
侮辱罪(ぶじょくざい)とは、インターネット上を始めとする 公然の場において他人を馬鹿にしたり辱めたりする発言をした際に適用される刑罰です。
刑が確定した者には1日以上30日未満の勾留または1,000円以上1万円未満の罰金が科せられます。
【侮辱罪に該当する言葉】
- Aは馬鹿だ
- Aは使えないやつだ
- Aはデブだ
[surfing_voice icon=”https://sakujo.or.jp/wp-content/uploads/2019/01/AdobeStock_99318373.jpeg” name=”” type=”r” font_color=”000″]個人間の言い争いで侮辱罪が適用されることはありませんが、不特定多数の面前でこういった発言をしてしまうと侮辱罪に該当する恐れがあります。
信用毀損罪
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。(刑法第二百三十三条)
信用棄損罪(しんようきそんざい)とは、 嘘の情報を流して他者や企業、団体の経済的信用を傷つける発言をした際に適用される刑罰です。
刑が確定した者には3年以下の懲役または五十万円以下の罰金が科せられます。
【信用毀損罪に該当する言葉】
- Aは自己破産をした
- Aに○○万円も貸したのに返ってこない
- ○○会社は経営が成り立たなくて倒産寸前だ
信用毀損罪は 内容が虚偽であることが大前提です。そのため、これらが事実に基づいた発言であれば罪に問われることはありません。
[surfing_voice icon=”https://sakujo.or.jp/wp-content/uploads/2019/01/一般男性エガオ.jpeg” name=”” type=”l” font_color=”000″]名誉毀損材とは違って、こっちは事実であるかどうかに焦点が当てられているんだなぁ。
脅迫罪
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。(刑法第二百二十二条)
脅迫罪(きょうはくざい)とは、 対象の人物あるいはその親族の命や身体、自由、名誉または財産に対して危害を加えることを告知をした者に適用される刑罰です。
刑が確定した者には2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
【脅迫罪に該当する言葉】
- Aを殺してやる
- Aの妻を怪我させてやる
- Aを監禁してやる
- Aの家を放火してやる
告知の方法に関する制限はないので、インターネット上の書き込みはもちろん手紙やLINEでこれらの告知を行えば、脅迫罪が適用されます。
誹謗中傷と批判は全く異なるものである
一件悪口に見えるネット上の書き込みでも、誹謗中傷ではなく批判に分類されることがあります。
ここではそんな誹謗中傷と批判の違いについて、みていきましょう。
そもそも批判とは
対象人物または対象物に対して評価を下し、正しい道へ導こうとすることを批判と言います。
評価と言っても悪い評価となってしまうケースが大半なことから、誹謗中傷との境目が曖昧になっているケースが多いです。
大きな違いは明確な根拠があるかどうかである
批判は、明確な根拠を打ち出しながら対象の悪い部分を指摘します。
明確な根拠を打ち出すためには対象への理解が必要となってくるため、文章のところどころに愛情が見え隠れしていることも。
また、 批判には「改善をして欲しい」という思いが念頭にあるので、アドバイスを行うことが多いのも特徴です。
[surfing_voice icon=”https://sakujo.or.jp/wp-content/uploads/2019/01/AdobeStock_99318373.jpeg” name=”” type=”r” font_color=”000″]上記のように単に対象を悪く言う誹謗中傷と批判とでは異なる点があるので、2つを履き違えてはダメですよ。
誹謗中傷の過去の事例
実際に誹謗中傷で罪に問われた事例とは、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは過去の事例を見ながら、誹謗中傷に関する理解をさらに深めていきましょう。
事例1「名誉毀損で200万円弱の損害賠償請求」
横浜DeNAベイスターズの井納翔一投手が、某匿名掲示板で「そりゃこのブスが嫁ならキャバクラ行くわ」と書き込みをした20代のOLに対し、損害賠償を求めた事例です。
井納翔一投手は 自分と妻の名誉が傷つけられたとして、200万円弱の損害賠償を求めました。
記事元:J-CASTニュース
事例2「名誉毀損で懲役1年6ヶ月」
某匿名掲示板で参院選候補者に対する誹謗中傷を繰り返した当時大学4年生だった男子学生が 名誉毀損の容疑で逮捕され、懲役1年6ヶ月の刑事罰を受けた事例です。
男子学生は「犯罪者」「死ね」などという誹謗中傷の投稿を数十回に渡って繰り返し行ったといわれています。
事例3「SNSで寿司に異物が入っていたと投稿」
当時25歳の男性が飲食店で食べた寿司の中に異物が入っていたと フェイスブックに投稿し、名誉毀損の疑いで逮捕されました。
男性は寿司に入っていた異物で口の中が切れたと家族に話していたが、医療機関で診察を受けた際そういった傷口は見受けられなかったそうです。
記事元:産経WEST
事例4「人気女性アイドルを脅迫した疑いで逮捕」
アイドルグループ乃木坂46の人気メンバーに「居場所教えてください。とっ捕まえて絞めたいので」といった 脅迫などをした疑いで、25歳の男性が逮捕されました。
脅迫行為はツイッターで行われ、複数回に及んだといわれています。
記事元:SANSPO.COM
誹謗中傷は罪に問える可能性がある
誹謗中傷は、その内容や被害者の捉え方によっては罪に問える可能性もでできます。
しかし、実際は早期解決を図るために民事で損害賠償や謝罪広告、対象物の削除等を求めて終わるケースも多いです。
[surfing_voice icon=”https://sakujo.or.jp/wp-content/uploads/2019/01/AdobeStock_99318383.jpeg” name=”” type=”r” font_color=”000″]そのため、誹謗中傷に悩んでいる場合は専門の弁護士に依頼をするのも1つの手段だといえます。
心無い誹謗中傷に屈して泣き寝入りするのではなく、できることから始めて自分なりの対処法を見出しましょう。
コメント
しかしある法律事務所に聞いたところハンドルネームだけではなく本名と住所が特定できないと告訴できないと言われました。以前もamebaであるユーザーから精神異常者とののしられ運営にIDも報告したのですが結局泣き寝入りとなりました、ツイッターやYOUTUBEでも誹謗中傷を投稿するアンチが絶えず住所も本名も特定できず困り果てています。その場合の対処はあるのでしょうか?
UUKUN SAKURAGAOKA 様
コメントありがとうございます。
いわゆる、同定可能性の問題ですね。
小難しい部分ですが、
『ある記事によって名誉を毀損された者と本人の同定可能性については、本人と面識があり、又は本人の履歴情報を知る者において、その知識を手がかりに当該記事が本人に関するものであると推知することが可能であり、当該記事の読者の中にこれらの者が存在した可能性があるか否か、また、これらの読者の中に、当該記事を読んで初めて本人についてのそれまで知っていた以上の情報を知った者がいた可能性があるか否かによって決すべきである』
などと言われています。
要するに、問題となる書込みが、ハンドルネーム「A」を使用している本人「B」に関する書込みだと読者がわかって初めて、名誉権侵害の主張ができます。
本名と住所の特定は別でお考えください。
しかし、ハンドルネーム「A」を使用している本人「B」が誰かわからないという、匿名状況だと名誉権侵害の主張は困難になってきます。
将来的に社会や裁判例が変わっていく可能性はゼロではないとしても、現時点では上記のような理解になります。