みなさんはこのようなお悩みをお持ちかと思います。自分に対して権利侵害を行った犯人の素顔が知りたくなるのは無理ありません。
そこで、この記事では犯人特定に関する次の2つのポイントを紹介していきます。
- 具体的な犯人特定方法
- 犯人特定にかかる費用
それでは、犯人の特定方法について、解説していきます。
ネットで書き込みをした犯人を特定する際の流れ
以下のような流れで、インターネット上のウェブサイトで誹謗中傷を行った犯人を特定します。
- ステップ1:本当に該当するサイトに誹謗中傷投稿が投稿されているか確認する
- ステップ2:サイト管理人に連絡して、IPアドレスなどの情報を開示させる
- ステップ3:IPアドレスなどの情報から犯人のプロバイダを特定する
- ステップ4:プロバイダに連絡して、犯人に関する記録を保存させる
- ステップ5:プロバイダが犯人の名前、住所、メールアドレスを公開する
以上たったの5ステップで犯人の特定が可能です。
- サイトに犯人の手がかりに関する情報を開示させる
- その手がかりをもとにプロバイダを特定し、プロバイダに個人情報を開示させる
サイトからプロバイダへと情報開示の請求先が変わって思っていることがわかります。
ネット誹謗中傷の犯人を特定する具体的な方法
さきほど犯人特定のための5つのステップを紹介しました。
- ステップ1:本当に該当するサイトに誹謗中傷投稿が投稿されているか確認する
- ステップ2:サイト管理人に連絡して、IPアドレスなどの情報を開示させる
- ステップ3:IPアドレスなどの情報から犯人のプロバイダを特定する
- ステップ4:プロバイダに連絡して、犯人に関する記録を保存させる
- ステップ5:プロバイダが犯人の名前、住所、メールアドレスを公開する
この章ではこれらのステップの具体的な方法について、解説していきます。1つずつのステップを理解して、犯人を特定しましょう。
ステップ1:本当に該当するサイトに誹謗中傷投稿が投稿されているか確認する
ステップ1は確認のステップです。実際に次のようなポイントを確認しましょう。
- 誹謗中傷が投稿されているという事実は本当か
- 誹謗中傷投稿があなたに関する内容を含む投稿であるか
- あなたの社会的な評価を下げる具体的な事実が記載されているか
- 公益を図った投稿ではないか
以上4つのポイントを確認しましょう。
それでは4つの確認項目について、詳しく説明します。
誹謗中傷が投稿されているという事実は本当か
まずは自分に対する誹謗中傷投稿がサイトに投稿されているという事実が本当なのか確認しましょう。
なぜなら、知人やSNSの報告で 「聞いた」程度の情報ではあくまで噂に過ぎないためです。
噂程度の信憑性の情報では、聞いていたサイトとは別のサイトに投稿されている可能性もあります。
そこで、本当に投稿されているのか、実際にそのサイトの記事にアクセスして、投稿を確認しましょう。
誹謗中傷投稿があなたに関する内容を含む投稿であるか
誹謗中傷投稿があなたを特定できるような情報を含んでいるか確認します。自分と特定できない情報を 誹謗中傷投稿と扱うことは困難であるためです。
誹謗中傷に含まれる情報のうち、自分と特定できる情報の例は「名前」「住所」といった個人情報です。もう一度、自分に関する情報が含まれているか確認しましょう。
あなたの社会的な評価を下げる具体的な事実が記載されているか
社会的な評価は「名誉」とも呼ばれます。つまり、ネットでは有名な 「名誉毀損」とは、この社会的評価を傷つけられることを指すわけです。
誹謗中傷とされる投稿は社会的評価を傷つける名誉棄損罪や侮辱罪に該当するケースが多いです。
犯人を特定する場合、裁判所に対してこのような罪に触れていることを立証する必要があります。
その名誉棄損や侮辱を立証するためには、投稿内容に社会的な評価を傷つけられた行為があったことを証明しなればいけません。
社会的な評価を傷つける投稿内容の例は、次のようなものです。
- 「○○に住むAは詐欺師で情報商材を販売している」
- 「Bは頭がおかしい」
- 「アイドルのCは裏で水商売をしている」
これらの情報の真偽に問わず、特定の人物の社会的評価を下げる内容として、刑法に違反する行為となっています。
このような情報が含まれているか、確認しましょう。
公益を図った投稿ではないか
「公益を図った投稿」は、社会のためになる投稿のことです。
刑法第230条の2(公共の違いに関する場合の特例)では、次のように定められています。
- 第230条の2
前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
刑法第230条の2の「前条第1項の行為」とは、名誉毀損行為のことを指します。
誹謗中傷投稿が 社会のためになる情報を含む場合、その投稿は名誉毀損行為と認められなくなるわけです。
例えば、次のような投稿は公益を図った投稿とみなされます。
- 「Aという上司がセクハラやパワハラを行っている」
- 「政治家であるBが汚職を行っている」
- 「○○という販売会社に定価の数十倍の法外な値段を叩きつけられた」
このような投稿内容は刑法第230条の2で「罰しない」と定めてあるため、名誉棄損として違法性を立証するのが非常に困難です。
ゆえに、誹謗中傷投稿内容にこのような公益を図った趣旨が含まれていないかよく確認しておきましょう。
ステップ2:サイト管理人に連絡して、IPアドレスなどの情報を開示させる
プロバイダ責任制限法では、インターネット上で誹謗中傷を受けた場合、ウェブサイトやプロバイダに対して、誹謗中傷の 犯人に関する情報の開示を請求することを認めています。
この法律をもとに、犯人に関する情報を開示するように請求できるわけですね。
犯人に関する情報を公開するように請求することを「 発信者情報開示請求」とも呼びます。
ここからは犯人を実際に特定していく流れです。
- まずは誹謗中傷投稿が投稿されているサイトにアクセスし、サイト管理人のメールアドレスやサイト運営のお問い合わせフォームを見つけます。
- 続いて、メールアドレスやお問い合わせフォームを利用して、「発信者情報開示請求書」という書類を作り、サイト管理人に提出しましょう。
この書類は犯人に関する情報の開示を請求するためのものです。
多くの場合、 IPアドレスとタイムスタンプが開示されるケースが多いですね。
このようにしてサイト管理人に誹謗中傷された旨を告げ、犯人のIPアドレスとタイムスタンプを公開するように連絡しましょう。
サイト側が開示請求に応え、犯人のIPアドレスとタイムスタンプを開示すればステップ3に進みます。
ただ、メールやお問い合わせフォームからの開示請求では、なかなか情報を開示してくれないのが現状です。
サイト側が情報を任意で開示してくれない場合は、裁判所に開示命令を出してもらう手続きをすることになります。
サイト管理人が開示請求に応じない場合は、裁判所で開示命令の手続きを行う
サイト管理人が開示を拒む場合は、裁判所に開示命令を出させることで情報を強制的に開示させる手続きが必要です。
この手続きを「 発信者情報開示仮処分命令申立」と呼びます。
この命令によって、 2週間から1ヶ月の間にサイトにIPアドレスとタイムスタンプを開示させることが可能です。
この手続きをする際に本当に誹謗中傷といえるのか、その 証拠を集める必要があります。
証拠を集めるだけではなく、 権利侵害を立証する必要もあり、法的な知識が必要となるため、弁護士に依頼するケースが多いです。
不安な場合は、弁護士に相談しましょう。
ステップ3:IPアドレスなどの情報から犯人のプロバイダを特定する
ステップ2で犯人のIPアドレスとタイムスタンプが開示されたら、犯人が利用しているプロバイダを特定します。
プロバイダはインターネット接続を仲介する業者のことです。
例えば、NTTやSoftbankなどの会社ですね。
このプロバイダを特定するためには、さきほどのIPアドレスとタイムスタンプを用います。
ドメイン/IPアドレス サーチ 【whois情報検索】にアクセスして、これらの情報を記入することで、プロバイダを特定することが可能です。
このようなサービスを利用して、プロバイダを特定できるため、このステップでは複雑な手続きを行う必要はありません。
プロバイダを特定する理由は記録の保持と契約情報の取得
プロバイダを特定する理由は次の2つです。
- 犯人に関する記録の保持
- 犯人に関する契約情報(個人情報)の取得
2つの理由について解説していきます。
犯人に関する記録の保持
プロバイダの情報は3ヶ月ほどで消えてしまいます。プロバイダにもIPアドレスとタイムスタンプの記録があり、犯人が書き込みを行ったという証拠となります。
ゆえに、犯人の投稿に関する証拠が消えてしまう恐れがあるのです。
そこで、プロバイダに犯人の投稿に関する記録まで削除しないように、 記録を保存させる手続きが必要になります。
犯人に関する契約情報(個人情報)の取得
インターネットの利用者は必ずこのプロバイダと契約しているため、誹謗中傷投稿の犯人もプロバイダと契約していることになります。
つまり、プロバイダは犯人がインターネット契約をした際の犯人の名前や住所などの個人情報を保持しているのです。
したがって、犯人特定の際には、さきほどのプロバイダ責任制限法に基づき、 プロバイダの持つ犯人の個人情報を開示させる必要があります。
ステップ4:プロバイダに連絡して、犯人に関する記録を保存させる
犯人に関する情報の保存は必要です。
まずはプロバイダに連絡を行い、プロバイダ責任制限法を元に、任意で犯人の契約情報の開示に応じてくれないか一度確認しましょう。
もし任意での情報開示に応じてくれない場合は、プロバイダに「発信者情報消去禁止仮処分申立」の手続きを行い、犯人に関する記録を保存させます。
この手続きが裁判所に認められることで、裁判所からプロバイダに対して、犯人に関する記録の消去を禁止する命令が出し、記録を保存させることが可能です。
手続きからこの命令まで2週間ほどかかります。
ステップ5:プロバイダが犯人の名前、住所、メールアドレスを公開する
ここまでのステップでサイトに開示させたIPアドレスとタイムスタンプを用いて、犯人が利用するプロバイダを特定できました。
任意での開示請求に応じないため、プロバイダに犯人の証拠となる記録を保存させることも成功しました。
最後にプロバイダに対して訴訟を起こして、犯人の 契約情報を開示させる手続きを行います。
この手続きのことを「 発信者情報開示請求訴訟」と呼び、判決が下されるまで半年程度の期間が必要です。
裁判所が保持された記録や提出した証拠をもとに審議を行い、「投稿が権利侵害に該当する」という判決が出れば、犯人の氏名、住所、メールアドレスなどが開示されます。
犯人に関する情報を手にいてることができましたので、このステップをもって犯人の特定は完了です。
ネット誹謗中傷の犯人特定にかかる弁護士費用
犯人特定はさきほどの5ステップを合わせて、 8か月から1年で犯人を特定することが可能です。
その犯人特定の流れの中で、犯人の特定にはステップ2で「仮処分」と呼ばれる簡易な裁判を1回、ステップ4で「仮処分」をもう一回、ステップ5で「訴訟」を1回、合計3回の裁判を起こしています。
これらの手続きでは法的な知識となるため、犯人の特定は弁護士に依頼するケースがほとんどです。
弁護士に依頼する際にかかる費用として、以下のような費用があります。
- 相談料:弁護士に相談する際にかかる費用
- 着手金:弁護士が法的手続きを始めるにあたり支払う費用
- 成功報酬/報酬金:犯人特定の依頼が成功した際に支払う費用、裁判の手続きが成功する都度支払う必要あり
- 裁判所費用:弁護士ではなく、裁判所に支払う費用、印紙代や切手代
- 日当:弁護士が出張する際の交通費、宿泊費など
それぞれの費用相場は、以下の表に整理します。
相談料 | 初回は無料の法律事務所が多い/2回目以降は30分で5,000円程度 | |||
着手金 | ステップ2:サイトの管理者に開示請求(交渉):50,000円 | ステップ2:裁判所に仮処分申立→サイトに情報開示命令(裁判):100,000円 | ステップ4:プロバイダに情報を保存させる仮処分申立(裁判):100,000円 | ステップ5:プロバイダに情報開示請求(裁判):100,000円 |
成功報酬/報酬金 | 50,000円~200,000円 | |||
裁判所費用 | 10,000円~20,000円 | |||
日当 | 出張の有無によって異なる | |||
特定にかかる弁護士費用の合計(相場) | 500,000円~1,000,000円 |
こうして表をみると、たしかに安価ではありません。しかし、特定した犯人に慰謝料として弁護士費用を請求することも可能です。
例えば、横浜DeNAの井納翔投手が妻の誹謗中傷を投稿されたとして、弁護士に依頼して情報開示を請求し、投稿者に対して情報開示にかかった費用と損害賠償金を合わせて合計約191万円を請求する訴状を送ったケースもあります。
このように、誹謗中傷を行った犯人に弁護士費用でかかったお金を請求することも可能なのです。
まとめ
以下のような流れで誹謗中傷投稿の犯人を特定可能です。
- ステップ1:本当に該当するサイトに誹謗中傷投稿が投稿されているか確認する
- ステップ2:サイト管理人に連絡して、IPアドレスなどの情報を開示させる
- ステップ3:IPアドレスなどの情報から犯人のプロバイダを特定する
- ステップ4:プロバイダに連絡して、犯人に関する記録を保存させる
- ステップ5:プロバイダが犯人の名前、住所、メールアドレスを公開する
特定には 50万円~100万円程度の費用がかかりますが、特定にかかった 費用は誹謗中傷投稿者に請求することもできます。
また、特定には8か月~1年程度の期間を要しますので、最初のステップから弁護士に依頼して、迅速かつ的確に手続きを進めることをおすすめします。
誹謗中傷は犯罪行為ですので、それ相応の罰が必要です。
この記事がその誹謗中傷投稿の犯人を探す方にとって、一助になれば幸いです。
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