
近年、何かを調べる際に検索エンジンだけでなく、ChatGPTやGemini、Copilotといった生成AIに直接質問する人が急速に増えています。「○○株式会社 評判」「○○という人物について」といった検索は、もはや珍しいものではありません。
しかし、ここに新たな問題が生まれています。生成AIが古い情報や誤った情報をもとに回答してしまうケースや、ネット上に広まった根拠のない風評やデマをあたかも事実であるかのように要約してしまうケースが報告されているのです。
検索エンジンの順位操作とは異なり、AIの回答はその仕組みが複雑で、対処方法も十分に確立されていません。放置すれば、就職活動や取引先との商談、日常生活のあらゆる場面で誤った印象を与え続けるリスクがあります。
今後、生成AIの利用はさらに拡大していくと予想され、この問題への対応は個人にとっても企業にとっても避けて通れない課題になりつつあります。
本記事では、生成AIがどこから情報を取得しているのか、AIの回答は削除できるのか、元サイト削除が重要な理由、AI事業者への修正申請方法、Google検索結果との違い、そして専門機関へ相談すべきケースについて、順を追って詳しく解説していきます。
生成AIはどこから情報を取得しているのか

生成AIがなぜ個人名や会社名について具体的な回答をするのか、その仕組みを理解することが対策の第一歩です。この章では、AIがどのような情報源から回答を生成しているのか、そしてなぜ誤情報や風評をそのまま回答してしまうのかについて解説します。情報源の仕組みを知ることで、後述する対処法の意味がより明確になります。
検索エンジンとの連携によるリアルタイム情報取得
近年の生成AIの多くは、単独で回答を生成するだけでなく、検索エンジンと連携して最新の情報を取得する仕組みを備えています。ChatGPTのブラウジング機能やGemini、Copilotなどは、質問を受けると裏側でWeb検索を実行し、検索結果の上位に表示されるページの内容を参照したうえで回答を作成しています。
つまり、Google検索やYahoo!検索で上位表示されている情報が、そのままAIの回答内容に強く反映されるという関係性があるのです。もし検索結果の上位に誹謗中傷を含むまとめサイトや、事実と異なる書き込みが掲載されたページが表示されていれば、AIはその内容を「参考情報」として取り込み、あたかも事実であるかのように回答してしまう可能性があります。
学習データに含まれるネット上の情報源
生成AIはリアルタイム検索だけでなく、開発段階で学習した膨大なテキストデータをもとに回答を生成する側面も持っています。この学習データには、ニュース記事や公式サイトだけでなく、匿名掲示板の書き込みやSNSの投稿、まとめサイトの記事なども含まれていることがあります。
そのため、過去に一度でも誤った情報や誹謗中傷的な内容がネット上に拡散されていた場合、その情報がAIの「知識」として内部に取り込まれてしまっている可能性があります。この場合、元となった投稿がすでに削除されていたとしても、AI側の回答には反映され続けてしまうという厄介な問題が生じます。
AIが情報の真偽を判断できない理由
多くの人が誤解しがちな点として、生成AIは情報の真偽を人間のように判断しているわけではないという事実があります。AIは基本的に、大量のテキストデータの中から統計的にもっともらしい文章を生成するという仕組みで動いており、情報源の信頼性を都度精査したり、事実関係を裏付け調査したりする機能は限定的です。
そのため、信頼性の低いサイトの情報と、公式発表のような信頼性の高い情報が、AIの中では同列に扱われてしまうことがあります。特に検索結果の上位に風評被害的な内容が表示されている状態が続くと、AIはそれを「多くの情報源が言及している事実」と誤認しやすくなる傾向があります。この特性を理解しておくことが、次章以降で解説する対処法を正しく実践するうえで重要になります。
また、AIによっては複数の情報源を要約する過程で、断片的な情報が組み合わさり、事実とは異なる新たな文脈が生まれてしまうこともあります。たとえば、過去のトラブルに関する投稿と、無関係な別の出来事の投稿が混同され、あたかも一つの事実であるかのように回答されるケースも報告されています。こうした「情報の合成」による誤情報の生成は、生成AI特有のリスクとして注意が必要です。
生成AIの回答は削除・修正できるのか

前章で述べた仕組みを踏まえると、多くの方が気になるのは「では、AIの誤った回答自体を直接消すことはできないのか」という点でしょう。この章では、AIの回答そのものを削除することの難しさと、その背景にある技術的な仕組み、そして放置した場合のリスクについて解説します。
AIの回答そのものを直接削除することの難しさ
結論から言うと、特定のAIの回答結果だけをピンポイントで完全に削除する方法は、現状では確立されていません。Google検索結果であれば、検索結果画面から特定のURLを除外する「検索結果の削除申請」という仕組みが存在しますが、生成AIの回答はそもそも固定のページとして存在しているわけではなく、質問のたびにその都度生成されるという性質を持っています。
そのため、「このURLを削除してください」という形での申請がそのまま通用しにくく、AI事業者に対する修正依頼という間接的なアプローチを取らざるを得ないケースがほとんどです。この点は、後の章で詳しく解説します。
さらに、生成AIにはキャッシュや会話履歴とは異なる形で、応答生成のたびに新しい文章が組み立てられるという特徴があります。同じ質問であっても、質問の言い回しやタイミングによって回答内容が微妙に変わることも珍しくありません。この「都度生成される」という性質そのものが、削除申請という従来型のアプローチを難しくしている根本的な要因になっています。
回答内容が変化・更新される仕組み
生成AIの回答は、モデルの更新やアップデートのタイミングによって内容が変化するという特徴があります。ある時点では誤った情報を回答していたとしても、AI事業者側がモデルを更新したり、参照する検索結果が変化したりすることで、次第に回答内容が改善されるケースも少なくありません。
一方で、その逆のパターンも起こり得ます。現在は問題のない回答であっても、ネット上に新たな誹謗中傷や誤情報が拡散されることで、将来的にAIの回答内容が悪化してしまう可能性があるのです。つまり、AIの回答は一度きりの対応で終わるものではなく、継続的にモニタリングしていく必要がある問題だと言えます。
放置すると起こりうるリスク
「AIの回答だから、検索結果ほど見られていないのでは」と考える方もいるかもしれませんが、これは大きな誤解です。生成AIの利用者数は年々急増しており、特に若い世代を中心に「調べ物はAIに聞く」という行動様式が一般化しつつあります。
採用担当者が応募者の名前をAIで調べたり、取引先の担当者が企業名をAIで検索したりする場面は、今後さらに増えていくと予想されます。もし誤った風評がAIの回答として定着してしまうと、本人や企業が気づかないうちに、機会損失や信用低下が静かに進行してしまうおそれがあります。早期の対応が重要である理由はここにあります。
特に注意したいのは、検索結果と違って、AIの回答は本人がその内容を目にする機会が少ないという点です。検索結果であれば自分で検索して確認することが習慣化している人も多いですが、AIに聞かれた際にどのような回答が返っているかは、第三者に指摘されるまで気づきにくいのが実情です。定期的に自分自身や自社名でAIに質問し、回答内容を確認しておくことも、有効な予防策のひとつと言えるでしょう。
元サイトを削除することが重要な理由

AIの回答を直接消すことが難しいのであれば、どこにアプローチすべきなのでしょうか。この章では、AIが参照する「元となる情報源」自体を削除することの重要性について、検索結果との関係性も踏まえながら解説します。
AIが参照する「情報源」を絶つという考え方
前章で述べた通り、生成AIの多くは検索エンジンと連携してリアルタイムに情報を取得しています。つまり、検索結果の上位に表示されている元サイト(誹謗中傷の書き込みや、事実と異なる情報が掲載されたページ)を削除・非表示化することができれば、AIが参照する情報源そのものを絶つことにつながります。
これは、AIの回答を「後から修正する」というアプローチではなく、そもそも誤情報がAIに取り込まれる経路を根本から断つという、より効果的な対策だと言えます。実際に、元サイトが削除された後にAIの回答内容が改善されたという事例も報告されています。
検索結果とAI回答の両方に影響する元記事
元サイトの削除は、検索結果の改善とAI回答の改善という、2つの効果を同時に得られるという大きなメリットがあります。誹謗中傷サイトやまとめサイト、悪意のある投稿などが検索結果の上位に表示され続けている限り、Google検索でもAI検索でも、同様に悪影響を受け続けてしまうのです。
逆に言えば、元サイトを削除できれば、検索エンジン対策とAI時代の風評対策を一度に進めることができるため、対応の優先順位としては非常に高いと言えるでしょう。
元サイト削除がもたらす波及効果
元サイトの削除には、プロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置請求や、サイト管理者への直接的な削除依頼など、複数の手段があります。これらの手続きにはある程度の専門知識と時間を要しますが、一度削除が実現すれば、検索結果・AI回答の両方から情報が消え、さらに新たな拡散を防ぐ効果も期待できます。
また、元サイトが削除されることで、それを引用・転載していた二次的なサイトにも波及的に影響が及ぶケースがあり、風評被害対策全体において非常に重要な位置づけとなります。
さらに、元サイトの削除には証拠保全という側面もあります。削除交渉や法的手続きを進める過程で、投稿内容のスクリーンショットやURL、投稿日時などの記録を事前に残しておくことが重要です。証拠が不十分なまま削除が完了してしまうと、後になって発信者情報開示請求などの追加対応を取りたくなった際に、必要な証拠が揃わず手続きが進められなくなるリスクがあるため注意が必要です。
AI事業者への修正申請方法

元サイトの削除と並行して検討すべきなのが、AI事業者に対して直接、回答内容の修正を申請する方法です。この章では、主要な生成AIサービスへの問い合わせ方法と、申請時に押さえておくべきポイントを解説します。
主要な生成AIサービスの問い合わせ・報告窓口
代表的な生成AIサービスには、それぞれ不適切な回答やコンテンツの問題を報告するための窓口が用意されています。例えば、OpenAIのChatGPTには回答へのフィードバック機能や問い合わせフォームが、Googleのgeminiにはヘルプセンター経由の報告手段が、Microsoftのcopilotにも同様の仕組みが存在します。
これらの窓口は検索結果の削除申請ほど整備が進んでおらず、対応スピードや反映の可否も事業者ごとに異なるのが実情です。それでも、問題のある回答が生成されている事実を事業者側に伝えること自体には一定の意味があります。
修正申請時に準備すべき情報と伝え方
修正申請を行う際は、感情的な訴えではなく、客観的な事実に基づいた具体的な情報を提示することが重要です。具体的には、どのような質問に対してどのような回答が生成されたのかのスクリーンショット、回答内容のどの部分が事実と異なるのか、正しい情報は何か、その根拠となる資料(訂正報道、判決文、公式発表など)を整理して提出することが望まれます。
曖昧な申告では対応してもらえない可能性が高いため、「いつ・どのような質問で・どのような誤った回答が出たか」を明確に記録しておくことが申請の第一歩となります。
なお、名誉毀損やプライバシー侵害に該当する可能性がある内容については、個人の感想として申請するのではなく、法的な観点からも整理したうえで伝えることで、事業者側に問題の深刻さが伝わりやすくなります。可能であれば、元となった投稿の削除請求や発信者情報開示請求の状況も合わせて説明すると、より説得力のある申請になるでしょう。
申請しても反映されない場合がある点への注意
残念ながら、修正申請を行ったからといって、必ずしも回答内容が改善されるとは限りません。生成AIの回答生成の仕組み上、事業者側が個別の申告ひとつひとつに対応してモデルを調整することは、技術的にも運用的にも容易ではないのが現状です。
そのため、AI事業者への申請だけに頼るのではなく、前章で述べた元サイトの削除など、複数のアプローチを並行して進めることが現実的な対策だと言えるでしょう。
加えて、AIサービスによっては、申請を受け付ける窓口自体が一般消費者向けに公開されていない、あるいは英語対応のみであるといったケースもあります。国内で提供されているAIサービスであっても、運営元が海外法人であるために、日本語での問い合わせに時間がかかることも珍しくありません。こうした事情も踏まえ、修正申請はあくまで複数ある対策のひとつとして位置づけ、過度に期待しすぎないことも大切です。
Google検索結果との違い

ここまで生成AIへの対策を中心に解説してきましたが、従来のGoogle検索結果対策とは何が違うのでしょうか。この章では、両者の仕組みの違いと、それぞれの対応における難易度の差について整理します。
検索結果の順位操作とAI回答の仕組みの違い
Google検索結果に対しては、検索結果からの削除申請フォームや、SEO的なアプローチによる評判記事の押し上げなど、比較的手段が確立されています。検索結果は「特定のURLのリスト」という明確な形を取っているため、個々のページ単位で対処しやすいという特徴があります。
一方で生成AIの回答は、複数の情報源を統合して一つの文章として生成されるため、「どの情報源がどの程度回答に影響しているか」を特定すること自体が難しく、対処すべき対象が不明瞭になりやすいという違いがあります。
削除対応のスピード感や難易度の違い
Google検索結果の削除申請は、申請から一定期間内に審査結果が通知されるなど、ある程度プロセスが明確化されています。これに対し、AI事業者への修正申請は、明確な審査基準や対応期限が公開されていないケースが多く、対応にどれだけの時間がかかるか予測しづらいのが実情です。
このように、AI時代の風評対策は、従来の検索結果対策よりも不確実性が高く、難易度が上がっていると言わざるを得ません。だからこそ、元サイトの削除という根本的なアプローチの重要性がより一層高まっているのです。
また、Google検索結果には「忘れられる権利」に関する議論や、検索結果の削除に関する裁判例が一定程度蓄積されているのに対し、生成AIの回答をめぐる法的な位置づけはまだ発展途上の分野です。今後、生成AIの普及に伴って新たなガイドラインや判例が整備されていく可能性はありますが、現時点では手探りの対応にならざるを得ない部分があることも理解しておく必要があります。
今後さらに重要性が増すAI時代の風評対策
生成AIの利用者数は今後も拡大が見込まれており、「検索エンジン対策(SEO・逆SEO)」に加えて「生成AI対策」も風評被害対策の重要な一部として位置づけられる時代が到来しつつあります。
早い段階からこの変化を認識し、検索結果とAI回答の両方を視野に入れた対策を講じておくことが、将来的な被害の拡大を防ぐうえで非常に重要になってきています。
実際に、採用活動や取引先の与信確認において、AIの回答結果を参考情報として利用する企業も増えつつあると言われています。今後は、企業のリスク管理という観点からも、自社に関する生成AIの回答を定期的に確認し、必要に応じて対策を講じる体制を整えておくことが、一般的な取り組みとして定着していく可能性があります。
ネット削除会社へ相談すべきケース

ここまで解説してきた対策は、いずれも専門的な知識や継続的なモニタリングを要するものです。最後に、個人での対応が難しいと感じた場合に、専門のネット削除会社へ相談すべき具体的なケースについて解説します。
自分で対応しても改善しない場合
元サイトの削除依頼を送っても対応してもらえない、AI事業者への修正申請をしても回答内容が変わらないといった場合、個人での対応には限界があると考えるべきタイミングです。
特に、海外のサーバーで運営されているサイトや、匿名性の高い掲示板への投稿などは、法的知識や交渉のノウハウがないと削除交渉自体が難航しやすく、専門家のサポートを受けることで解決のスピードが大きく変わるケースが多く見られます。
元サイトの削除請求や発信者情報開示が必要なケース
風評の投稿者を特定し、法的責任を追及したいと考える場合には、発信者情報開示請求という手続きが必要になります。この手続きは、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)に基づく専門的な法的知識を要するため、個人で進めるにはハードルが高いのが実情です。
また、送信防止措置請求についても、サイト管理者やサーバー運営会社との適切なやり取りが必要であり、専門機関のサポートを受けることでスムーズに進められる場合が多くあります。
特に、同一の投稿者から繰り返し誹謗中傷を受けている場合や、複数のサイト・SNSにまたがって風評が拡散されているケースでは、対応すべき範囲が広く、個人で全てを把握・整理すること自体が大きな負担になります。こうした状況では、現状を俯瞰的に把握し、優先順位をつけて対応してくれる専門機関の存在が特に有効です。
早期相談によって被害拡大を防げる理由
生成AIの回答は、放置している間にも新たな情報を取り込み、内容が変化し続けるという特性を持っています。だからこそ、「まだ大きな実害が出ていないから」と様子見をするのではなく、問題に気づいた時点で早めに専門機関へ相談することが、被害の拡大を防ぐうえで非常に重要です。
一般社団法人ネット削除協会では、検索結果対策と生成AI時代の風評対策の両面から、状況に応じた最適な対応方法をご案内しています。ひとりで抱え込まず、まずは現状を整理したうえで相談することをおすすめします。
まとめ
生成AIの普及により、「AIに名前や会社名を聞かれたときにどう答えられるか」が、新たな風評被害対策のテーマとして浮上しています。AIの回答は検索エンジンと連携しながら生成される部分が大きく、元サイトを削除することが、検索結果とAI回答の両方を改善する最も効果的なアプローチであることをご紹介しました。
あわせて、AI事業者への修正申請という補助的な手段や、個人での対応が難しい場合の専門機関への相談についても解説しました。今後さらに拡大が見込まれるこの問題に対し、早めの情報収集と対策を心がけていただければ幸いです。


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