軽い気持ちで投稿した誹謗中傷で相手から訴えられてしまった場合、どのような対処を施したら良いのでしょうか。
今回は誹謗中傷で訴えられたらすべきことと、抵触する恐れのある罪についてご紹介していきます。
慰謝料はいくら払うのか、どのような罪に問われる可能性があるのか気になる人は、さっそく詳細をみていきましょう。
訴えられたらどうなるのかを把握しておきましょう
誹謗中傷をしたことで相手から訴えられる場合、民事訴訟を提起されるか刑事告訴されるかでその後が大きく変わってきます。
まずは、この2つの違いについてみていきましょう。
民事訴訟では警察は動かない
民事訴訟では、主に貸金の返還や財産分与、慰謝料の請求などといったお金に関する揉め事が裁判所で争われています。
ただし裁判所で争うと言っても、個人間の紛争(民事事件)では警察や検察は動きません。
そのため、自分が主体となって行動するか弁護士に依頼することになるでしょう。
民事訴訟では慰謝料を請求されることが多い
誹謗中傷で民事訴訟を起こされた場合、請求される可能性が高いのは以下の3つです。
- 慰謝料
- 問題となった書き込みの削除や撤回
- 名誉の回復(謝罪文や謝罪広告など)
3つのなかでも特に焦点となってくるのは慰謝料の請求です。
誹謗中傷に対する慰謝料の相場は、おおむね10~50万円となっています。
ただし、内容が悪質であったり相手が法人だったりすると、100万円以上の慰謝料を請求される可能性もあるので注意しましょう。
刑事告訴では前科がついてしまう事もある
被害者が警察官などに犯罪事実を申告して、加害者に対する処罰を求めることを刑事告訴といいます。
刑事告訴されて有罪判決が下ると、懲役刑や罰金刑などの刑罰を言い渡されることになるでしょう。
刑が確定してしまうと当然前科がついてしまい、社会復帰をする際に影響が出る恐れがあります。
誹謗中傷で問われる罪4選
誹謗中傷で問われる罪は、ネットに投稿した内容によって異なります。
ここでは、誹謗中傷をすると該当する恐れのある5つの罪についてみていきましょう。
名誉棄損罪
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。(刑法第230条)
名誉毀損罪は、公然の場で人の名誉を傷つけた際に適用される刑罰です。
事実であるかどうかは問われないため、投稿した内容がたとえ真実であっても罪になり、 3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
【名誉毀損罪に該当する言葉】
- Aは犯罪を犯したことがある
- AとBは不倫をしている
- Aは会社のお金を使い込んでいる
侮辱罪
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。(刑法第233条)
公然の場で人格を蔑視するような発言をした際に適用される刑罰です。
抵触すれば 1日以上30日未満の勾留または1,000円以上1万円未満の罰金が科せられます。
【侮辱罪に該当する言葉】
- Aはハゲでデブだ
- Aは使えないやつだ
- Aは本当に馬鹿でどうしようもないやつだ
信用毀損及び業務妨害罪
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。(刑法第233条)
信用棄損罪は嘘の情報を流して、他者や企業などの経済的信用を傷つける発言をした際に適用される刑罰です。
業務妨害罪は嘘の情報を流し、問い合わせを殺到させるなどして業務を妨害した際に適用される刑罰となります。
これらに抵触すれば 3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
【信用毀損及び業務妨害罪に該当する言葉】
- A店は賞味期限切れの食材を使っている
- Aは自己破産をした
- A会社は経営が成り立っておらず倒産寸前だ
[surfing_voice icon=”https://sakujo.or.jp/wp-content/uploads/2019/01/AdobeStock_99318355.jpeg” name=”” type=”r” font_color=”000″]発言内容が事実に基づいていれば、信用毀損及び業務妨害罪は成立しませんよ。
脅迫罪
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。(刑法第222条)
対象人物及びその親族に対して命や身体などに危害を加えると告知した者に適用される刑罰です。
抵触すれば、 2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
【脅迫罪に該当する言葉】
- Aを殺してやる
- Aの親を殺す
- Aを怪我させてやる
脅迫罪が成立するのはあくまでも 対象人物及びその親族に対する脅迫のみです。
「Aの恋人を殺してやる」「Aの友人を殺してやる」などといった書き込みは脅迫罪が適用されないので、おさえておきましょう。
誹謗中傷で訴えられたら最優先すべきは示談交渉である
多額の慰謝料を請求されたり、刑事事件として発展したりするのを防ぐために重要となってくるのが、示談交渉です。
次は、そんな示談交渉に対する理解を深めていきましょう。
示談交渉をするべき理由
裁判ではなく被害者と加害者間で話し合いをして、発生したトラブルを解決へと導くことを示談交渉といいます。
示談交渉へ発展すれば以下のメリットがあるので、なるべく早い段階で示談交渉を持ちかけた方が良いでしょう。
- 慰謝料が妥当な金額になる可能性が高まる
- 追加で慰謝料を請求されるリスクを防げる
- 刑事告訴を取り下げてもらえる可能性がある
- 刑罰の減刑が期待できる
示談交渉を依頼するまでの流れ
- 加害者が自分の弁護士に示談交渉をしたい旨を伝える
- 加害者の弁護士が、事件を担当している検察官に示談交渉をしたい旨を伝える
- 担当検察官が被害者に示談交渉の意向を尋ねる
- 被害者が承諾する
- 検察官から伝えられた連絡先へ弁護士が連絡をして示談交渉を持ちかける
弁護士に依頼をせずに自分で解決を図ろうとするのは、あまりおすすめしません。
そもそも誹謗中傷を受けた被害者は怒り心頭ですから、加害者と連絡を取り合うことに対して拒絶の意向を示すケースが多いです。
そのため、第三者である弁護士を通した方が示談に応じてくれる可能性が高まるのはもちろん、交渉もスムーズにいくでしょう。
示談交渉の内容
示談交渉では主に以下の内容について話し合うことになります。
- 加害者から被害者への謝罪
- 慰謝料の具体的な金額や支払い方法
- 誓約書
- (刑事事件へ発展してしまっている場合)告訴の取り下げ
示談交渉における慰謝料は民事と同様、10~50万円程度が相場となっていますが、誹謗中傷の内容や相手によっても変わってきますので心しておきましょう。
[surfing_voice icon=”https://sakujo.or.jp/wp-content/uploads/2019/01/AdobeStock_99318332.jpeg” name=”” type=”r” font_color=”000″]ちなみに民事事件の示談交渉回数は4~5回、刑事事件の示談交渉回数は1~2回が平均だといわれていますよ。
まずは示談交渉への筋道を立てましょう
誹謗中傷で訴えられたら、慰謝料を請求されるだけではなく前科がつく恐れもあります。
そのため、できるだけ早く示談交渉を進めていくことが大切です。
しかし、加害者自身が示談交渉を依頼しても、被害者に受け入れてもらうのは難しいでしょう。
「示談交渉を少しでも早く進めたい」…そんなときは、誹謗中傷に強い専門の弁護士へ依頼するのも1つの手です。
事態がさらに深刻化するのを防ぐためにも、しっかりと示談交渉への筋道を立てて早期解決を図りましょう。
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