YouTubeやSNSなどのインターネット上では、匿名性を保ったまま自由に投稿できるため、誹謗中傷の温床となってしまいがちです。投稿者にとっては何の気なしの投稿であっても、誹謗中傷を受けた側の心に大きな傷を残してしまうこともあります。
総務省の調査によると、令和4年度の違法・有害情報相談センターへの相談件数は5000件を超え、高止まりを続けています。相談件数が多い事業者としては、YouTubeサービスを提供する「Google」が「Twitter(現X)」に次いで2位の結果となりました。
出典:総務省
この記事では、YouTubeで誹謗中傷を受けた方に向けて、投稿を削除する方法や相手を特定する方法、相手に問える法的責任を解説します。
YouTubeでの誹謗中傷は規約違反?
YouTubeを利用するユーザーにとって、動画コンテンツやコメントによる誹謗中傷は大きな悩みの種です。結論として、YouTubeでの誹謗中傷は規約違反にあたります。個人の特徴や人格、属性を否定するような悪意ある投稿は許されていません。
誹謗中傷とは、悪口や根拠のない嘘により、相手を傷つける行為を指します。誹謗中傷を受けた場合、民事責任や刑事責任を問える可能性があります。
誹謗中傷をめぐる最近の動き
近年、インターネット上の誹謗中傷が深刻化し、社会問題となっています。2020年に女子プロレスラーの木村花さんがSNSの誹謗中傷を受けて亡くなったのを機に、誹謗中傷に対する世間の目は厳しくなっています。2022年には侮辱罪を厳罰化する改正刑法が施行され、同時期に誹謗中傷の発信者を特定しやすくするプロバイダ責任制限法も改正されました。
こうした動きを受け、YouTubeでも誹謗中傷を防止する対策を進めています。2023年には、YouTubeが参画するクリエイターエコノミー協会に「誹謗中傷対策検討会」を設置。クリエイターが安心して活動できるよう連携強化に努めています。
YouTubeにおける誹謗中傷の規制
YouTubeでは許可されないコンテンツを規定する「コミュニティガイドライン」を公開しています。誹謗中傷については、「ハラスメントやネットいじめに関するポリシー」と「ヘイトスピーチに関するポリシー」で規制しています。
個人を対象とした身体的特徴または保護対象グループへの所属(年齢、障がい、民族、性別、性的指向、人種など)に基づく長期に及ぶ侮辱または中傷を含むコンテンツは許可されていません。
規制の対象となる誹謗中傷の例としては次のようなものが挙げられます。
規制対象となるコンテンツ | 誹謗中傷の例 |
特定の個人の身体的特徴への侮辱 | 「あいつの顔は気持ち悪い」
「あの人の顔はブスで体は臭そう」 |
特定の個人に対する嫌がらせの扇動 | 「あいつの住所はここだ。みんなで押しかけて困らせてやろう」
「あの人の動画に悪口をコメントしよう」 |
特定の個人や財産への脅迫 | 「次に会う時は殺してやる」
「インターネットに裸の写真をばらまくぞ」 |
特定の個人の死や被害を喜ぶもの | 「あいつがトラックに轢かれて良かった」
「あの人は死んでしまえばいいのに」 |
特定の個人の性的な描写 | 本人の意に反して性的に強調された描写や性的暴行を示す内容 |
国籍、人種、ジェンダー、障害など個人・グループの属性に対する差別 | 「レズビアンは単なる精神疾患だ」
「障害者はみんな人間のクズだ」 |
YouTube上で誹謗中傷を受けるクリエイターは多く、中でも女性やLGBTQ、黒人、有色人種などこれまでに差別を受けてきたクリエイターへの迷惑行為が問題となっています。18歳未満の未成年者に対する誹謗中傷を目的としたコンテンツについては、特に厳しく規制されています。
YouTubeではクリエイターやユーザーに対し、誹謗中傷を行わないよう呼びかけています。上記のようなYouTubeのガイドラインに反する投稿があれば、通報による削除が可能です。具体的な削除方法については次章でご紹介します。
YouTubeで誹謗中傷を削除する方法は?
YouTubeが規定するガイドラインに反した投稿は削除の対象となります。投稿者以外の個人が強制的に投稿を削除することはできないため、原則としてYouTubeの運営元に削除を依頼することになります。
誹謗中傷を受けた場合や規約違反の投稿を見つけた場合には、お手持ちのパソコンやスマートフォン、タブレット、YouTube接続したテレビなどから削除を依頼できます。YouTubeにおける誹謗中傷の投稿コンテンツを削除する流れはざっくりと次の通りです。
- YouTubeにログインする(登録が必要)
- 動画やコメントなどの違反コンテンツを報告(通報)する
- YouTubeの審査チームが違反審査を行う
- 違反が確認できればコンテンツが削除される
ガイドラインに違反するコンテンツの削除依頼は24時間いつでも受け付けています。YouTubeのアカウントを持っていれば、誰でも報告ができます。違反報告は匿名で行うことができ、誰が報告したかを相手に知られることはありません。
しかし、YouTubeに違反報告をしたからと言って、そのコンテンツが削除されるとは限りません。YouTubeの審査チームが審査をしても、該当コンテンツの違反が特定できなかった場合には削除は認められません。個人ができるのはあくまでも削除依頼であって、実際に削除するかどうかはYouTubeの判断に任されていることに注意しましょう。
ここでは、誹謗中傷のコンテンツを報告(削除依頼)する具体的な方法について、動画とコメントに分けて解説します。
YouTubeの誹謗中傷動画を削除する方法
他のクリエイターによってYouTubeに投稿された動画が誹謗中傷の内容を含んでいる場合、次のような手順で動画を「報告」します。
ステップ1:報告する動画にアクセスする
パソコンやスマートフォンからYouTubeのウェブサイトやアプリにアクセスします。
報告したい誹謗中傷動画を表示します。
ステップ2:「その他」または「設定」のアイコンを押す
パソコンとスマートフォンでは表示場所が異なります。
- パソコンからのアクセスであれば、動画の下部に表示されている「その他」アイコンをクリックします。(下記画像の右端のアイコンをクリック)
- スマートフォンからのアクセスであれば、動画の上部に表示されている「設定」アイコンをタップします。(下記画像の右端のアイコンをタップ)
ステップ3:「報告」を選択する
表示されるポップアップから一番下の「報告」ボタンを選択します。
ステップ4:報告する理由を選択して報告する
「性的なコンテンツ」「暴力的または不快なコンテンツ」「差別的または攻撃的なコンテンツ」などの理由が表示されます。当てはまる理由を選択して、右下の報告ボタンを押せば報告完了です。
ステップ5:報告した動画が削除されたかどうかを確認する
報告された動画はYouTubeの審査チームが審査をします。その上で不適切だと認められれば、動画は削除されます。動画が削除されたかを確認するには「報告履歴」から確認可能です。
YouTubeには通常の動画のほか、60秒以下の短い動画「YouTubeショート動画」が投稿できます。しかし、短い動画の中にも誹謗中傷が含まれている可能性があります。誹謗中傷の内容を見つけた場合、ユーザーは上記の手順によりガイドライン違反を報告できます。
動画投稿者に直接依頼する方法もあるが…
YouTubeの投稿動画を削除するには、運営に報告する方法のほか、動画投稿者に直接削除を依頼する方法もあります。
投稿動画の概要欄(=動画の内容を説明する箇所)や投稿者のチャンネル情報に連絡先が記載されていれば、投稿者と直接連絡を取ることができます。動画内容が誹謗中傷にあたる旨を伝えて削除をお願いすることで、動画削除に応じてもらえるかもしれません。
しかし、一般的にはかなりハードルの高い方法だと言えます。ユーザー同士の交渉だけでは、相手が真剣に取り合ってくれない可能性が高いでしょう。また、何度も誹謗中傷を投稿しているような悪質な投稿者であれば、直接の連絡によって嫌がらせが悪化するリスクもあり、非常に危険です。
したがって、動画投稿者に直接アプローチする場合には弁護士に相談することをおすすめします。弁護士から連絡をしてもらうことで、相手にプレッシャーを与えることができます。相手が交渉に応じなくても、法的措置のステップに進むことが可能です。
YouTubeの誹謗中傷コメントを削除する方法
YouTubeの動画に書き込まれた誹謗中傷コメントを削除する方法は、動画投稿者側と閲覧者側で異なります。
自分自身が投稿した動画に誹謗中傷コメントが書き込まれた場合、管理者としてコメントを削除できます。あらかじめコメントを承認制にしておけば、公開するコメントを任意に選べるため、誹謗中傷コメントの公開を防ぐことができます。何度削除しても誹謗中傷コメントが続いてしまう場合は、コメント欄自体を閉鎖する手もあります。
他の投稿者によって投稿された動画に誹謗中傷コメントが書き込まれている場合は、次のような流れでコメントの削除を依頼します。
ステップ1:動画のコメント欄を開く
パソコンやスマートフォンからYouTubeのウェブサイトやアプリにアクセスします。報告したいコメントが掲載されている動画のコメント欄を開きます。
ステップ2:「その他」アイコンを押す
削除を依頼したいコメントの横にある「その他」アイコンを押します。
ステップ3:「報告」を選択する
表示されるポップアップから一番下の「報告」ボタンを選択します。
ステップ4:報告する理由を選択して報告する
「性的なコンテンツ」「暴力的または不快なコンテンツ」「差別的または攻撃的なコンテンツ」などの理由を選択する画面が表示されます。当てはまる理由を選択して、右下の報告ボタンを押せば報告完了です。当てはまる報告の理由を選び、「報告」ボタンを押せば報告完了です。
ステップ5:自分の動画にそのユーザーのコメントを非表示できる
誹謗中傷コメントを報告したあと、自分が投稿している動画にそのユーザーのコメントが表示されないように設定できます。非表示にする方法は「チャンネルでユーザーを非表示にする」のチェックボックスにチェックを入れるだけ。これにより、同じユーザーにより自分の動画が荒らされないよう対策できます。
YouTubeの誹謗中傷で問われる罪は?
YouTubeの動画やコメントを通した誹謗中傷は、相手を傷つけるだけでなく、法的な取り締まりの対象になる可能性があります。誹謗中傷を受けた被害者は警察に被害届を提出したり、刑事告訴をしたりして、相手に刑事責任を問うことが可能です。
ただし、「誹謗中傷罪」という罪は存在しないため、名誉毀損罪や侮辱罪などの刑法上の罪の構成要件に当てはまるかどうかを確認することになります。構成要件とは、刑法に規定されている犯罪が成立するための要件のことを指します。
誹謗中傷をした人に問える可能性がある刑事責任としては、次のようなものがあります。
- 名誉毀損罪
- 侮辱罪
- 脅迫罪
- 信用毀損罪・偽計威力業務妨害罪
以下、各犯罪の刑罰や構成要件、どのような誹謗中傷が当てはまるかを解説します。
名誉毀損罪
名誉毀損罪とは、YouTube上で相手の名誉や評判を貶めるような具体的な事実を示すことで成立する犯罪です。名誉毀損罪が成立すると、3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金が科されます(刑法230条)。
名誉毀損罪が成立するための構成要件は次の3つです。
構成要件 | 説明 |
公然性があること | YouTubeの公開動画やその動画に書き込んだコメントなど、不特定多数の人々が閲覧できる状況にあること |
事実を摘示していること | 「誰が何をした」など具体的な事実や行為を示していること |
名誉を毀損したこと | 主観的なプライドではなく、社会的な評価を低下させたこと |
なお、ここでいう「事実」とは、アホやバカなどの抽象的な悪口ではなく、「特定の人物が特定の行動をした」というような具体的な内容を示していることを意味します。その内容が真実か嘘かは問われません。
YouTubeにおける名誉毀損罪の例としては、次のような行動が挙げられます。
- 「AさんはBさんと不倫関係にある」と動画内で発言する
- 「Cさんは前科持ちだ」とコメント欄に書き込む
このとき、AB間の不倫関係やCの前科の真偽は問われません。本当であれ、嘘であれ、社会的な評価を失墜させた場合には名誉毀損罪が成立する可能性があります。
侮辱罪
侮辱罪とは、YouTube上で具体的な事実を示さずに相手を侮辱することで成立する犯罪です。侮辱罪が成立すると、1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金、または拘留、または科料が科されます(刑法231条)。
これまで侮辱罪の刑事罰は拘留または科料に限られていましたが、相手が命を断つほどの誹謗中傷に対しては刑罰が軽すぎるとの指摘から厳罰化されています。2022年7月7日から改正刑法が施行され、懲役・禁錮刑と罰金刑が追加されました。
侮辱罪が成立するための構成要件は次の3つです。
構成要件 | 説明 |
公然性があること | YouTubeの公開動画やその動画に書き込んだコメントなど、不特定多数の人々が閲覧できる状況にあること |
相手を侮辱したこと | 特定の相手の社会的な評価を低下させたこと |
名誉毀損罪と違い、具体的な事実を示す必要がないため、「ばか」「まぬけ」「気持ち悪い」などの主観的・抽象的な悪口であっても、侮辱罪が成立する可能性があります。
YouTubeにおける侮辱罪の例としては、次のような行動が挙げられます。
- 「Aの顔は気持ち悪くて吐き気がする」と発言した動画を投稿する
- 「Bは頭が足りなくてどうしようもないばかだ」とコメントする
YouTubeの動画やコメントは原則として広く公開されるものであり、公然性があります。このような公的なプラットフォーム上で精神的な苦痛を受けた場合、名誉毀損罪や侮辱罪に該当する可能性が高いでしょう。
脅迫罪
脅迫罪とは、YouTube上で特定の他人の「生命、身体、自由、名誉又は財産」に危害を加えると脅迫することで成立する犯罪です。自分自身だけでなく、自分の家族や親族に危害を与える旨を示して脅迫した場合も含まれます。脅迫罪が成立すると、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(刑法222条)。
脅迫罪の構成要件には「公然性」がないため、YouTube上の公開された動画やコメントだけでなく、個別のメッセージや非公開動画を送りつけた場合でも適用されます。
YouTubeにおける脅迫罪の例としては、次のような行動が挙げられます。
- 「お前の家に火をつけるぞ」というメッセージを送る
- 刃物をちらつかせながら「家族が無事で済むと思うなよ」と発言する動画を投稿する
誰かから脅迫を受けた場合はまず、自分や家族の身を守る行動を取る必要があります。「どうせ何もしないだろう」と軽く捉えてしまうのは危険です。脅迫のメッセージや動画、コメントを記録してすぐに警察に相談してください。
信用毀損罪・偽計業務妨害罪
信用毀損罪とは、YouTube上で虚偽の内容を広めたり、人を欺いたりして、他人の信用を毀損させる行為によって成立する犯罪です。一方、偽計業務妨害罪は虚偽の内容を広めたり、人を欺いたりする点では信用毀損罪と同様ですが、その目的を業務を妨害することにおいている場合に成立します。
信用毀損罪・偽計業務妨害罪が成立すると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます(刑法233条)。
信用毀損罪・偽計業務妨害罪が成立するための構成要件は次の3つです。
構成要件 | 説明 |
虚偽の風説を流布すること | 虚偽の内容を虚偽だと知りながら広めること |
偽計を用いたこと | 人の勘違いや不知を利用すること |
信用毀損罪:
他人の信用を毀損したこと |
個人や法人の社会的な評価や経済的な信用を低下させること |
偽計業務妨害罪:
他人の業務を妨害したこと |
個人や法人の業務を妨害する目的があること |
YouTubeにおける信用毀損罪・偽計業務妨害罪の例としては、次のような行動が挙げられます。
- 実際に出された料理に自ら異物を混入させたにも関わらず、最初から入っていたように見せかける動画を投稿する
- A店のアルバイトだと偽り、「A店では賞味期限切れの食材を客に出している」と嘘のコメントを投稿する
最近はYouTubeの体験動画を見て、飲食店や宿泊先などを選ぶユーザーが増えてきました。お店や会社の信頼を落とすような虚偽の内容を広められてしまうと、深刻なダメージを負う可能性があります。
警察に相談すれば相談には乗ってくれるが…
誹謗中傷は刑事罰の対象になる可能性があるため、警察に相談することはできます。ただし、実際に捜査に踏み切ってくれるかどうかは個別の事情によって異なります。
誹謗中傷は刑事上の責任を問える一方、個人間の紛争として解決を図ることも可能です。このため、警察に相談しても事件性が低いと見なされ、民事事件として処理されてしまう可能性があります。
警察に動いてもらうためには、実際に精神的・経済的な被害を受けていることを証明する必要があります。事前に弁護士などの専門家に相談して誹謗中傷ユーザーを特定しておくなど、警察に納得してもらえるだけの証拠を揃えておくと良いでしょう。
YouTubeの誹謗中傷ユーザーを特定する
YouTubeで誹謗中傷を受けた場合、誹謗中傷の投稿を行ったユーザーを特定できます。特定するためには、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求、または、発信者情報開示命令の申立てが利用可能です。
いずれの方法も2022年10月に施行された改正プロバイダ責任制限法に規定されています。裁判所を介して行う法的な手続きとなるため、あらかじめ弁護士に依頼しておくと安心です。
発信者情報開示請求
発信者情報開示請求は従来から利用されてきた誹謗中傷ユーザーを特定する方法です。YouTube側と契約プロバイダ側の両方に発信者情報開示請求をしなければならず、事業者が応じなければ最大2回の裁判上の手続きが必要となります。具体的な手続きの流れは次の通りです。
- YouTubeに対して任意のIPアドレス開示を求める
- YouTubeが応じなければ、裁判所から発信者情報開示仮処分をしてもらう(YouTubeが応じれば次の手続きへ)
- YouTubeが開示したIPアドレスから、誹謗中傷ユーザーの契約プロバイダを特定
- 契約プロバイダに対して裁判上の発信者情報開示請求を行う
- 誹謗中傷ユーザーの個人情報を特定できる
なお、刑事告訴や民事訴訟手続きも加えると、何度も裁判上の手続きをすることになり、被害者の負担が大きくなってしまうデメリットがあります。
発信者情報開示命令(2022年新設)
発信者情報開示命令は改正法により新設された方法です。YouTube側と契約プロバイダ側の両方に対する開示請求が一本化され、一度の裁判手続きで誹謗中傷ユーザーまで辿り着けるようになりました。
具体的な手続きの流れは次の通りです。
- YouTubeと契約プロバイダに対する発信者情報開示命令を裁判所に申し立てる
- 裁判所は双方に対してログの保存と発信者情報の開示を命令する
- 誹謗中傷ユーザーの個人情報を特定できる
新たな手続きでは、裁判上の対面審査が必須ではなくなった点も大きなメリットです。これにより、誹謗中傷ユーザーの特定にかかる期間短縮や手数料負担の軽減が見込まれます。
YouTubeの誹謗中傷ユーザーに対して損害賠償請求ができる?
YouTube上で誹謗中傷を受けた被害者は、投稿したユーザーに対して損害賠償請求ができる可能性があります。損害賠償請求は民事責任を問う手続きとなるため、その動画やコメントが民法上の「不法行為」に該当している必要があります。
不法行為とは、故意または過失によって他人の権利や法律上の利益を侵害することを指します(民法709条)。YouTube上の誹謗中傷によって侵害される権利や利益には次のようなものがあります。
侵害される権利・利益 | 内容 | 例 |
名誉権の侵害
(名誉毀損) |
社会的評価を低下させる行為 | 「AはBにセクハラをした」 |
名誉感情の侵害
(侮辱) |
自分自身の主観的評価(プライド)を損なう行為 | 「死ね」「気持ち悪い」などの言葉 |
プライバシーの侵害 | プライベートな生活をみだりに公表する行為 | 氏名・住所・家族構成などの個人情報を動画公開すること |
営業権の侵害 | 営業を妨害する行為 | 営業妨害の口コミや秘密漏洩など |
誹謗中傷によって権利を侵害された被害者は、相手に対して不法行為に基づく損害賠償請求ができます。請求できる金額は個別の事情によって異なりますが、個人なら10万円〜50万円、法人なら50万円〜100万円が相場です。
YouTubeの誹謗中傷を相談する先はどこ?
YouTubeで誹謗中傷を受けた場合、速やかに専門機関に相談することで早期解決が期待できます。
ひとりで抱え込まず、下記の相談先に連絡してみましょう。
警察
警察に相談して被害届を提出すれば、逮捕に向けて動いてくれる可能性があります。YouTube上の誹謗中傷については、まず「サイバー事案に関する相談窓口」に相談しましょう。誹謗中傷をした相手を逮捕したい方、刑事告訴をして刑事責任を問いたい方に適しています。
総務省の違法・有害情報相談センター
総務省が運営する「違法・有害情報相談センター」では、ネットトラブル全般の相談を受け付けています。もちろん、YouTube上の誹謗中傷も対象です。誹謗中傷にどのように対処したら良いかわからず悩んでいる方におすすめです。
法務省が管轄する人権擁護局
YouTube上の誹謗中傷で人権侵害を受けている場合、法務省管轄の「人権擁護局」に相談できます。人権擁護局はネット相談を受け付けているため、誰でも気軽に利用できます。
民間団体「セーファーインターネット協会」の誹謗中傷ホットライン
民間団体「セーファーインターネット協会」が運営する誹謗中傷ホットラインでも誹謗中傷の相談ができます。YouTube上の誹謗中傷動画やコメントを削除したい方、解決方法を知りたい方は積極的に利用しましょう。
弁護士
弁護士に相談すれば、刑事告訴や民事訴訟を含む法的なアドバイスを受けられます。YouTube上の誹謗中傷の被害に悩み、相手に法的措置を望む場合には弁護士に相談すると良いでしょう。個別の事情に応じて、最適な選択肢を提示してもらえるほか、法的措置の代理を依頼することも可能です。
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