この記事では「モンスターマップ(破産者情報掲載サイト)」について解説しています。
- モンスターマップというサイトが気になる。
破産者情報の公開についてネット検索していて、この「モンスターマップ」と呼ばれるWebサイトの存在を知る方も多いのではないでしょうか。
実はこのWebサイト、裏では破産者の情報を公開しているとされており、ひそかに問題視されています。
今回解説するのはその「モンスターマップの実態」と「対処方法」です。
- どのようなサイトなのか
- 破産者情報が掲載されている場合はどうしたらいいのか
といったポイントを解説していきます。
後述しますが、モンスターマップは「ウェブマイニングプログラム」と呼ばれるプログラムを導入しているとされており、閲覧は積極的に推奨できません。
リンクへのアクセスは控え、あくまでも自己責任で閲覧するようにしてください。
「モンスターマップ」とは
スクリーンショット出典 Monster Mapより
「モンスターマップ(Monster Map)」とは、インターネット版「官報」に掲載されている破産者の個人情報(氏名・住所)を整理・保存・再掲載していると思しきWebサイトです。
破産者の情報が掲載されたことで問題となった「破産者マップ」と類似しており、第二の破産者マップとも呼ばれています。
破産者マップ同様に、個人情報の無断掲載が問題視されているWebサイトです。
「破産者マップ事件」とモンスターマップの類似点
まずは「破産者マップ事件」の概要を説明しておきます。
2018年12月頃に開設された「破産者マップ」と呼ばれるサイトが「官報」に掲載された破産者の氏名・住所などをGoogleマップ上に表示するサービスを展開しており、2019年3月中旬に「『破産』という知られたくない情報が可視化されている」としてネット炎上した事件。
Twitterに運営者と思しき人物が登場し、多数メディアに取り上げられ、弁護団が発足された後、国の個人情報保護委員会の行政指導を受け、サイトは閉鎖されたものと思われる。
詳しい事件の経緯は下記の記事が参考になります。
モンスターマップはこの破産者マップと類似している点がいくつかあります。
まずは専門の方の意見です。
新「類似サイト」、旧「破産者マップ」のデータを流用、または同一人物や関係者が運営している可能性
1.OCR誤認識、箇所が完全一致
>井が#になる点、同じデータで同じ誤認部分2.公開範囲が同一(10年分、2009年1月~現在)
3.フッターの主張が類似#破産者マップ被害対策弁護団@166mochizuki pic.twitter.com/UApnncew7V
— nuco.jp (Normal Cat) (@nuco_jp) November 12, 2019
このように破産者マップとモンスターマップ間で一部のサイトの仕様や破産者データの公開範囲で同様の特徴が見られたとされています。
さらに、モンスターマップでも掲載されている住所からGoogleマップにリンク(外部)がされており、マップ上にピンが表示される形となっており、容易に住所が分かってしまう点は破産者マップと類似の形式と言えます。
運営者は「掲載されている人物は実在しない」の一点張り
モンスターマップでは十分なサイト説明がされているとは言い難く、「お知らせ」や「法的告知」の欄にのみサイト説明ととれる文章が掲載されているのみです。
モンスターマップのサイト運営者と思しき人物が応答したと考えられる「お知らせ」の欄によくある質問を掲載しています。
例えば、以下のような記載がありました。
<質問>掲載されている氏名や住所は破産者や個人再生者ですか?
<回答>いいえ。掲載されている氏名や住所は実在しない人物の氏名や住所であり、破産者や個人再生者とは関係がありません。<質問>知人が掲載されていたのですが、名前や住所は実在する人物のものではないですか?
<回答>いいえ。実在する人物の名前や住所は含まれていません。偶然の一致とお考えください。<質問>掲載されている住所や名前は削除してもらえますか?
<回答>いいえ。掲載されている住所や名前は、実在する人物や組織と関係ないので、削除に応じかねます。
引用 Monter Map「お知らせ」より
このように、あくまでも「掲載されている人物は実在しない」の一点張りです。
さらにサイトのフッター部分では「モンスターマップはフィクションです」などとの文言を掲載しており、サイトの掲載情報が虚偽のものであると主張しています。
しかしながら、このサイトの破産者に関するデータは「官報」に掲載されている破産に関する情報と一部一致するとの報告もあり、実在する人物の個人情報であると思われます。
ゆえに、どこまでが「フィクション」なのか、そも線引きはわかっていません。
破産者マップよりもやばい理由!ドメインの登録日・更新頻度について
Whoisドメイン検索によると、ドメイン登録日は2019年9月24日とされています。
つまり、早くとも2019年9月頃から運営が始まったことが推測できます。
破産者に関するデータは2008年1月4日分から存在し、2020年現時点で12年分もの破産者情報の記録が記載されています。
「破産者マップ」のケースが約3年分であったことに対して、はるかに長い年数となっており、膨大な情報が記録されていることが分かります。
この点が破産者マップよりも「やばい」といわれている理由とされます。
2020年1月15日現時点で2020年1月14日分の更新されているため、更新はほぼ毎日更新と考えられます。
サイトアクセス時には注意!「ウェブマイニングプログラム」
「お知らせ」のページには「サーバーへの不正アクセスやハッキング」の名目で「ウェブマイニングプログラム」を導入したとの報告が掲載されています。
この「ウェブマイニングプログラム」とは、仮想通貨の「採掘(マイニング)」をWeb上で実行するプログラムとされています。
この「採掘」とは、膨大な仮想通貨の取引記録のチェック作業を、他人のコンピューターリソースの計算能力を借りて行い、共通の1つの取引台帳に追記する作業のことです。
ゆえに「ウェブマイニングプログラム」はその作業をWebにアクセスしたパソコンのリソースを借りて行うものと思われます。
パソコンに負荷がかかるためか、サイトアクセス時にはパソコンのファンの音が大きくなります。
サイトにアクセスする際には注意しましょう。
モンスターマップの法的問題点
破産者マップの法的な問題として「名誉毀損」や「プライバシーの侵害」が挙げられていました。
それでは、モンスターマップではどうなのか、法律的解釈を解説していきます。
「名誉毀損」は成立しない可能性があるが「侮辱」ならあり得る
まずは名誉毀損が成立する可能性から。
刑法の名誉毀損成立の条件を見ていきましょう。
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
引用 刑法「第二百三十条」
成立の条件を整理します。」
- 「公然と(公然性)」:誰でも閲覧できる場所で
- 「事実を摘示(てきし)し」:事実・ウワサ・デマ・ガセなど「何らかの情報」を示して
- 「人の名誉を毀損した者」:個人・企業の名声・信用といった価値を傷つけた人物
- 「その事実の有無にかかわらず」:示された情報は真実・虚偽に関わらない
上記のような条件をすべて満たしたネット上のコンテンツが名誉毀損に該当します。
なお、この「名誉」とは、「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価」とされ、社会的な評価を下げる言動が名誉毀損に当たります。
例えば、Webサイト上に投稿された
- 「〇〇は犯罪者」
- 「〇〇は低学歴」
- 「〇〇は低脳」
などといった発言も真実・虚偽にかかわらず、人の名誉を毀損する行為であり、名誉毀損が成立するとされます。
モンスターマップの場合はサイト内で直接的に「破産者」とは明記していませんので、「破産者と呼ばれたことで名誉を傷つけられた」という主張は困難です。
ただし、侮辱行為が成立する可能性はあります。
侮辱についても刑法の定めるところにより、違法行為となっています。
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
引用 刑法「第二百三十一条」
つまり、名誉毀損の時ように「破産した事実」を摘示しなくても、侮辱が成立するということです。
例えば、実名と住所が記載されたページに「”モンスター”マップ」と併記されていれば、「侮辱行為」と捉えることも可能です。
いずれにせよ、名誉毀損は成立しませんが、「侮辱」といった行為が成立する可能性はあります。
「プライバシー侵害」は成立する可能性が高い
モンスターマップ上に掲載されているものは氏名や住所に関する情報であり、再掲載によってプライバシー権が侵害される可能性が高いです。
プライバシー権の侵害は以下の3つの条件をすべて満たした際に成立するとされています。
- 条件その1:私生活の事実または、事実らしいと勘違いされる可能性がある情報である
- 条件その2:本人が「公開して欲しくない」と判断した情報である
- 条件その3:一般にまだ知られていない情報である
氏名・住所といった情報は条件その1や条件その2を満たします。
また、氏名・住所といった情報は例え官報で掲載されていたとしても、官報の公開範囲が限定的であることから、一般にはまだ知られていない情報とみなされます。
実際に過去の裁判例を参考にすると、電話帳や顧客情報などすでに公開されている情報であっても「ある目的のために限定された媒体や方法で公開されたもの」である場合には、プライバシーとして保護されるという見解があります。
これは官報などの媒体上の破産者の個人情報も同様で、プライバシーとして保護されるべき情報です。
つまり、モンスターマップのようなサイトが官報などから個人情報を再掲載した場合、条件を3つとも満たし、プライバシー侵害が成立する可能性があります。
「不正指令電磁的記録」に関する罪
モンスターマップでは「ウェブマイニングプログラム」を導入したとされていますが、このようなプログラムの設置を「不正指令電磁的記録罪」に問える可能性はあります。
この法律は、コンピューターに不正な指令を与える電磁的記録(プログラム)の作成や取得、保存などの行為を禁止するものです。
各種新聞メディアによると、2018年6月にWeb上にマイニングプログラムを設置したWebサイトの運営者が、不正指令電磁的記録供用・保管などの容疑で摘発されたとしています。
警視庁によると2018年には日本全国で合計21人が不正指令電磁的記録に関する罪で検挙されています。
法律ではウイルスは「パソコンユーザーの意図に沿った動作をさせない、またはユーザーの意図に反する動作をさせるように不正な指令を与える電磁的記録」とされており、警察ではマイニングプログラムをウイルスと判断するようです。
警視庁のホームページでも、以下のような記載がありました。
平成30年6月14日現在、警察では、サイバーパトロールの実施等により、閲覧者に気付かれないように仮想通貨を採掘するツール(マイニングツール)が設置されているウェブサイトを確認しております。
(中略)
・ マイニングツールを設置することを検討しているウェブサイトの運営者自身が運営するウェブサイトに設置する場合であっても、マイニングツールを設置していることを閲覧者に対して明示せずにマイニングツールを設置した場合、犯罪になる可能性があります。
引用 警視庁サイバー犯罪対策プロジェクト 広報・施策「仮想通貨を発掘するツール(マイニングツール)に関する注意喚起」
このように、警視庁ではマイニングプログラムは違法という認識があることが分かります。
「ウェブマイニングプログラム」の導入は違法である可能性があります。
モンスターマップへの適切な対処方法
モンスターマップについて現段階では知る人が少なく、開示または拡散し、ネット上でサイトの存在を周知させることで対処が可能(批判の扇動やネット炎上の誘発など)です。
また、削除依頼フォームどころか運営者への連絡手段が一切存在しないため、情報の削除を申請する場合は法的な措置をとるほかありません。
必要であれば、下記の記事の方法で適切な弁護士にご相談ください。
また、下記の記事では、別サイトへの削除依頼方法ですが、
- 「民事保全法に基づく裁判所への『仮処分』の申請」
- 「プロバイダ責任制限法に基づく発信者の特定と『送信防止措置依頼書』ほか法的措置」
といった方法を紹介していますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。
関連記事「自己破産者リストマップ「自己破産・特別清算・再生データベース」とは?」
まとめ
モンスターマップは現状では問題視程度ですが、今後破産者マップ同様にネット炎上する可能性もあります。
ただし、モンスターマップ上で「破産者」という言葉を用いていないため、破産者マップのように「破産」の事実による社会的評価の下落として「名誉毀損」を訴えるのは困難とされます。
もし個人情報が掲載されている場合は「プライバシー侵害」として個人情報の公開を訴える必要があります。
詳しい対処方法は弁護士にご相談ください。
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