この記事ではデジタルタトゥーの基本について解説しています。
デジタルタトゥーという単語はよく聞きますが、意味まではわからない方も多いことでしょう。
また、すでにご存じの方でも、デジタルタトゥーはどうやったら消えるのか知りたい方も多いはずです。
そこで今回解説するのが「デジタルタトゥーのすべて」です。
具体的には、
といった点を解説していきますので、デジタルタトゥーを対処できるようになりますよ。

「為す術がない」と思われがちなデジタルタトゥー。
この記事ではその対処方法についても解説していきます。
それでは解説していきます。
デジタルタトゥーとは?
デジタルタトゥーとは、一度ネット上に書き込まれた誹謗中傷や個人情報などの情報が一度「拡散」すると、完全に削除できなくなる状況のことを指します。

現実で一度彫ったタトゥーを完全に消すことが困難であることに例えているんですね。

その通りです。ネット上に拡散された情報の完全な削除は難しいというわけですね。

「消えない」わけですから、デジタルタトゥーを刻まれた本人は「恥ずかしい」「痛ましい」「苦しい」という気持ちも消えませんよね。

その通りです。
ネットが存在する限り半永久的にデジタルタトゥーが残る可能性があるので、心を病んでしまう方も多いです。

消すのが難しいのは承知ですが、なんとか対処したいです。

もちろん対処はできます。
まずはデジタルタトゥーを知るところから始めましょう。
一部の論文では、デジタルタトゥーとネット炎上との関係が指摘されています。
吉野 ヒロ子「ネット炎上を生み出すメディア環境と炎上参加者の特徴の研究」でもデジタルタトゥーとネット炎上について以下のように述べられていました。
さらに、インターネット上に拡散された個人情報は、削除が難しい「デジタル・タトゥー」(Enríquez 2013)として、拡散された側の社会生活を長期間脅かすことになる15。
2005 年に起きた炎上事例について検索すると、10 年以上経っているにもかかわらず容易に炎上した人物の実名を知ることができる。
逆に、彼らの実名を検索すれば、過去の炎上を起こした人物であることがわかる。
一般人が炎上した場合、その人物の現在の人間関係が破壊されるだけではく、未来の人間関係やキャリアにも影響することになる。
引用吉野ヒロ子「ネット炎上を生み出すメディア環境と炎上参加者の特徴の研究」中央大学大学院 p.9 2018
※赤字加工
このようにデジタルタトゥーはやはりネット上への「個人情報の拡散」が根本的な原因であることが分かります。
また、炎上などによるデジタルタトゥーの場合は、炎上事例で検索をすると「実名」が分かるような状況となっている例もあります。
このように「個人情報がネット上に何年も晒された状態」というのは危険視されていることなのです。
デジタルタトゥーの原因の種類4つ
デジタルタトゥーの根本的な原因は個人情報の流布行為でしたね。
つまり、個人情報がインターネット上に勝手に公開されることでデジタルタトゥーが発生します。
この個人情報の公開のされ方によって、デジタルタトゥーの原因の種類を分類可能です。
デジタルタトゥーの原因は、主に以下の4種類に分類されます。
- 原因その1:メディアの過度な報道
- 原因その2:炎上による特定とSNS上への投稿・拡散
- 原因その3:リベンジポルノなどによる性的画像の公開
- 原因その4:匿名掲示板上などでの誹謗中傷
まずはそれぞれの原因を見ていきましょう。
原因その1:メディアの過度な報道
事件・事故を起こした際にネットメディア(新聞会社、企業サイトなど)が「啓発」「犯罪抑止」などとして過度に報道・ネット記事掲載を行う場合があります。
このような場合、ネットで氏名を検索しただけで逮捕歴・犯罪歴・前科が計り知れるケースがほとんどです。

プライバシー侵害が問題視されるメディアによる過度な報道ですね。
実名報道の場合は、事件・事故や逮捕の事実などネットを利用した実態の把握がさらに容易となり、デジタルタトゥーの事態がより悪化します。
こういったネットメディアの過度な報道が、逮捕歴・犯罪歴・前科のデジタルタトゥーを発生させる原因となるわけですね。

逮捕歴・犯罪歴・前科って何が違うんですか?

以下のような違いがあります。
- 「逮捕歴」:過去に逮捕されたことがある履歴のこと
- 「前科」:過去に起訴され、有罪判決を受けた履歴のこと
- 「犯罪歴」:過去に犯罪を行った履歴のこと(犯罪を行った時点で犯罪歴が発生)

詳しくは下記の記事も参考にしてみてください。
原因その2:炎上による特定とSNS上への投稿・拡散
ネット炎上が発生した際にその「制裁」として個人情報が特定され、SNSに投稿されるケースがあります。
いわゆる「晒し」です。
炎上は情報の拡散という側面もあるため、こういった炎上主の個人情報の特定後、SNSの共有機能で速やかに拡散されてしまう可能性もあります。
炎上には、
- フェーズ1:「発生」社内でネット炎上の発端となる事件などが発生し、それを知ったネットユーザーが「火種」となる企業批判や誹謗中傷などを投稿、炎上の発生
- フェーズ2:「拡散」炎上に加担するものが現れ、ネット上に企業批判・誹謗中傷などが増えていく燃料投入段階(消費者からのクレームなどが増えるのがこのフェーズ)
- フェーズ3:「報道」炎上の様子が新聞・テレビ・ネットニュースなど大手マスメディアに取り上げられ、「ネット炎上」として社会問題化
の3つのケースがありますが、拡散のフェーズで特定されるケースがほとんどです。
以下は企業の事例ですが、「誰がなぜ拡散するのか」といった炎上のメカニズムを解説していますので、気になる方はぜひ参考にしてみてください。
原因その3:リベンジポルノなどによる性的画像の公開
リベンジポルノは元交際相手が仕返し(復讐)として、相手の性的な画像(動画)をネット上に公開する行為のことを指します。
こちらも公開された側の心を傷つける深刻な問題となっています。

実は2014年に「リベンジポルノ規制法」が施行されており、リベンジポルノを法律でさばけるようになりました。
その法律が以下の「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」です。
この法律は、私事性的画像記録の提供等により私生活の平穏を侵害する行為を処罰するとともに、私事性的画像記録に係る情報の流通によって名誉又は私生活の平穏の侵害があった場合(中略)個人の名誉及び私生活の平穏の侵害による被害の発生又はその拡大を防止することを目的とする。
引用e-Gov 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律「第一条」
※赤字加工
この「私事性的画像記録」とは同法で性行や性器に関する画像と定められています。
つまり、リベンジポルノ画像を拡散(流通)したことで名誉を毀損されたり、プライバシーを侵害される事態を防ぎ、拡散(流通)を防止する法律のことです。
また、以下をご覧ください。
第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用e-Gov 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律「第三条」
※赤字加工
このように、リベンジポルノ画像を不特定多数に公開した場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
この罪は「親告罪」となるので、警察に申告する必要があります。
もしリベンジポルノ画像を勝手に公開され、デジタルタトゥーに悩む場合は警察に相談しましょう。
原因その4:匿名掲示板上などでの誹謗中傷
匿名掲示板は匿名性が高く、自由な書き込みができる反面、誹謗中傷の温床となる一面もあります。
こういった匿名掲示板上での誹謗中傷には、住所や写真などといった個人情報が掲載される場合が多いです。
匿名掲示板でもある程度情報は拡散するうえに、Google検索でもスレッドがヒットするため、誹謗中傷や個人情報が残る可能性があります。
こういったデジタルタトゥーに対処するためには、「削除依頼」が重要です。
目次より「その後どんな影響がある?デジタルタトゥーの危険性」へと進み、削除依頼方法を確認しておきましょう。
その後どんな影響がある?デジタルタトゥーの危険性
デジタルタトゥーの影響として考えられるのは以下の7つです。
特に「就職」に関する影響を心配される方が多いですね。
下記の記事ではデジタルタトゥーの危険性と就職への影響をさらに掘り下げて解説していますので気になる方はご覧くださいませ。
本当にある?デジタルタトゥーの実例

Stack of documents placed on a business desk in a business office.
概要だけでは中々デジタルタトゥーの想像がつかない方も多いでしょう。
デジタルタトゥーは実際に存在しています。

ここからは事例を3つ紹介していきます。
事例1:いたずらで「炎上」就職困難に
炎上の結果、デジタルタトゥーが残り、就職が困難になった事例があります。
それが「Youtubeつまようじ事件」です。
食品売り場の菓子につまようじを入れる様子を撮影した動画が動画投稿サイト「ユーチューブ」に公開された事件で、警視庁少年事件課は18日、動画を投稿して店の業務を妨害したとして、偽計業務妨害容疑で東京都三鷹市の少年(19)を再逮捕した。少年は万引を装ったり菓子パンの袋を破ったりする動画を投稿し、建造物侵入容疑などで2回逮捕されていた。
同課によると容疑を認め、「有名になりたかった。万引を装った動画は視聴回数が伸びなかったのでやった」と話している。
引用産経ニュース「菓子につまようじ混入し動画投稿、偽計業務妨害容疑で少年を再逮捕 警視庁」2015/2/18
コンビニの商品に「つまようじ」を入れる動画が炎上、Youtubeに投稿していた少年が逮捕されています。
参考J-CASTニュース スッキリ!「バカッター自業自得か?損害賠償払い刑事処罰受けても・・・もう就職もできず」
このように自らが引き起こした炎上やメディアでの報道が原因でデジタルタトゥーとなっている事例も存在しています。
事例2:Googleに「逮捕歴」で裁判へ
Googleに「逮捕歴」が表示されることがプライバシーの侵害であるとして、Googleに削除を命じさせた事例も存在します。
逮捕歴が表示され続けるのはプライバシーの侵害だとして、北海道の男性がGoogleに検索結果の削除を求めた裁判で、札幌地裁は12日、原告の主張を認め、一部の削除を命じた。
原告の男性は2012年に強姦の容疑で逮捕されたものの、嫌疑不十分として不起訴処分になっていた。
Google側は「時効は10年であることから、起訴の可能性がある」「検索するものは限定される」「情報には不起訴の事実も表示されているため、原告に不利益ではない」「逮捕事実は公共の利害である」などと主張していたが、裁判所は、不起訴処分になって以降も同僚に逮捕について尋ねられるなど、生活上の不利益を被ってきたという男性側の不利益の方が大きいと判断したのだ。
引用AbemaTIMES「検索結果に表示される逮捕歴、グーグルに削除命令 日本でも「忘れられる権利」の議論は進むか」2019/12/16
逮捕歴がネット上に公開されている状態はまさしく「デジタルタトゥー」であり、男性も「生活上の不利益を被ってきた」とされています。
このように、デジタルタトゥーの「削除」で係争となった事例でした。
事例3:「リベンジポルノ削除」民間の通報窓口が実績上げる
2013年には民間各社が協力して運営するリベンジポルノの通報窓口SafeLine(セーフライン)が登場しました。
インターネット上の違法・有害情報の通報窓口というと、わいせつ表現や規制薬物、児童ポルノなどに対応するものという印象が強いかもしれないが、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)が運営する通報窓口「SafeLine(セーフライン)」では、リベンジポルノやいじめ動画像の削除にも実績を上げている。
(中略)
しかし、このうち9割以上を占める3876件(違法情報3844件、有害情報32件)の海外案件についてもセーフラインでは削除依頼を出しており、その結果、海外サイトに掲載された違法・有害情報でも削除可能だったことを報告している。セーフラインがプロバイダーやサイト管理者へ送付した削除依頼は、国内が336件、海外が3918件の計4254件。
これにより実際に削除された割合は、国内が84%、海外が68%で、平均69%だった。
引用INTERNET Watch「リベンジポルノの削除に実績、ヤフーら民間主導の通報窓口、海外サイトにも連絡をとって削除実現」2015/12/28
こうした通報窓口が実績を上げる背景には、やはりリベンジポルノの被害拡大が存在しています。
参考THE SANKEI NEWS「リベンジポルノ千件超 4年連続、20代最多」 2019/3/28
リベンジポルノはデジタルタトゥーの中でも有名な発生原因であり、今後もリベンジポルノへの対応が求められています。
デジタルタトゥーの消し方!着実に削除できる方法
デジタルタトゥーを消すためには、デジタルタトゥーが拡散する原因となっているサイト・ページを削除するしかありません。

デジタルタトゥーを消すには、サイト・ページを1つずつマークしておき、サイトの運営会社に削除依頼を出していきます。
その削除依頼の方法は以下の4つです。
- 方法その1:情報掲載サイトに直接削除依頼(投稿削除機能・お問い合わせフォームから)
- 方法その2:送信防止措置依頼書
- 方法その3:弁護士に依頼する削除依頼【任意】
- 方法その4:弁護士に依頼する削除依頼【要請・仮処分】
いずれかの方法で削除依頼できますが、最も穏便に済む方法その1から順番に試していきましょう。
具体的な削除方法は下記の記事で詳しく解説していますので、必ず確認してデジタルタトゥーを消していきましょう。
まとめ
デジタルタトゥーとは、一度ネット上に書き込まれた誹謗中傷や個人情報などの情報が一度「拡散」すると、完全に削除できなくなる状況のことでしたね。
このデジタルタトゥーの原因は、主に以下の4種類に分類されます。
上記のような原因で実際にデジタルタトゥーが発生している事例がありましたね。
このようなデジタルタトゥーは以下の方法で削除していきましょう。
- 方法その1:情報掲載サイトに直接削除依頼(投稿削除機能・お問い合わせフォームから)
- 方法その2:送信防止措置依頼書
- 方法その3:弁護士に依頼する削除依頼【任意】
- 方法その4:弁護士に依頼する削除依頼【要請・仮処分】

上記の方法ならば着実にデジタルタトゥーの範囲を狭くしていくことが可能です。
焦る気持ちもあると思いますがここは冷静かつ慎重に対応していきましょう。
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